升田幸三 振り飛車の神髄
「実績とは過去です」「AIは正確であっても正解ではありません」 少し前の朝日新聞に掲載されていた特集で語られていた棋士・藤井聡太の印象的な言葉です。藤井聡太というと、私が思い出すのは升田幸三なのです。
最初にお断りしておきますが、この拙文では敬称を略させていただきます。というのは、升田幸三については「…
本が好き! 1級
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「本職」は、本というより映画です。
本を読んでいても、映画好きの視点から、内容を見ていることが多いようです。
「実績とは過去です」「AIは正確であっても正解ではありません」 少し前の朝日新聞に掲載されていた特集で語られていた棋士・藤井聡太の印象的な言葉です。藤井聡太というと、私が思い出すのは升田幸三なのです。
最初にお断りしておきますが、この拙文では敬称を略させていただきます。というのは、升田幸三については「…
ティム・オブライエンの『本当の戦争の話をしよう』では、ヴェトナム戦争に参加した米兵の一部が殺した敵の耳を集めていた描写があります。では、それが片手だったら、何が違うのでしょうか。
本多勝一のヴェトナム戦争のルポ『戦場の村』(1968年)には、次のような描写があります。 「上…
終戦直後の日本推理小説界は、幾多の傑作を世に出しましたが、『本陣殺人事件』もその一つだと思います。他に『蝶々殺人事件』と『獄門島』という、作者が自選ベスト5に挙げているうちの3長篇が収録されています。
横溝正史(1902-1981)は、戦前から活躍していましたが、その名を残すことになったのは、やはり金…
「わたしは昔から、何かをしろといわれるのがきらいだった。こいつは、この商売では気質上の欠陥ということになる」 主人公の私立探偵アルバート・サムソンの述懐ですが、その通りですね。
アメリカ生まれで、インディアナポリスで育ち、その最も有名な私立探偵アルバート・サムソン・シリーズもイ…
「僕は世界を小さな目から見ているんだ。その目はあまりにも小さいので、世界の方は見られていることに気づかないのさ」(本書収録作『ウーリー』の登場人物の台詞)
「僕の詩を読んでくれるのは、だいたい僕の友だちぐらいだろうと思っている。でも僕の本は僕の友だちの数よ…
原題はボストンの地名が使われている"The Black Bay Murders"です。この邦題と表紙の絵からお分かりかりかもしれませんが、白いペルシャ猫が重要な役割を演じるミステリーです。
日本では江戸川乱歩が絶賛した『エンジェル家の殺人』(1932年)が、おそらく最も有名なロジャー・スカ…
先に読んだレイラ・スリマニの『アデル 人食い鬼の庭で』の内容は、本書の影響大と思われたので、数十年ぶりに読んでみました。
本書の作者ジョゼフ・ケッセル(1898-1979)は、共にスラヴ系ユダヤ人の両親の元で、アルゼンチン…
「しかし女優というのは、自分を解き放つことを知らなくてはならないのですよ、マドモアゼル」(本書登場人物の台詞) しかし「自分を解き放つこと」ができる人間はどれくらいいるのでしょうか。
主人公は、パリで成功した医師である夫との間に子供を一人もうけ、ジャーナリストとしても働いている30代…
本書は1959年刊ですが、実は、シャガールが同題のリトグラフを1952年に発表しています。
モンテネグロの作家ミオドラグ・ブラトーヴィッチ(1930-1991)は、少し前に読んだ『ろばに乗った…
「世論の専制は、変わった人間を非難するものだ。だから、まさしく、この専制を打ち破るために、われわれはなるべく変わった人になるのが望ましい」(本書より)
ロンドン生まれのJ.S.ミル(1806-1873)は、カール・マルクス(1818-1883)や、フリ…
素晴らしい詩と素晴らしい訳文と素晴らしい絵、素晴らしい絵本です。ですが、あえて出版社に注文するならば、大型本で出してもらいたかったと思います。
まず、題名となっている詩を紹介します。 「あのね ふしぎなことが あるんだ だれか ものし…
無政府主義者の主人公が、同じ組織の人間が無差別爆弾テロに走るのを阻止しようとするという話です。シムノンはメグレ警視シリーズも含め、けっこう読んでいるのですが、こういう小説は初めてでした。
本本書は1938年に出版されました。この年は、シムノンが長篇第十九作『メグレ再出馬』(1933年)を…
「人間というものは、この地上で不幸にして人間と同じ食物をとって生存するように運命づけられている動物たちに、食料の獲得権を認めてやろうという考えにはなれぬもののようである」(『アザラシのサミー』より)
1978年に世界動物文学全集の一冊として出版された本書には、アザラシ、猫、犬をそれぞれを題材にした、…
「19世紀ヴィクトリア朝(1837-1901)の英国で書かれた(あるいは同国を舞台とする)幽霊譚のなかから、<幽霊屋敷>というモチーフを拠りどころとして選んだ傑作集成」(編者あとがきより)
夏来健次編訳のアンソロジーを読むのは『英国クリスマス幽霊譚傑作集』『ロンドン幽霊譚傑作集』に続き、三…
「最近は読書量が減って、歴史書ばかりひもといているが、なにがあろうと変化しない唯一のものは人間性だということがよくわかる」(本書収録『孔雀屋敷』の登場人物の台詞)
インド生まれで、3歳の時に父を亡くし、母とイギリスに戻るという育ちのイーデン・フィルポッツ(1862…
いわゆる「過激な暴力描写」というものが、1950年代前半には確立されていたことを認識できる一冊です。
フランスのブルターニュ地方の出身作家オーギュスト・ル・ブルトン(1913-1999)は、生涯約80冊…
「誰が駒鳥 殺したの それは私 とスズメが言った 私の弓で 私の矢羽で 私が殺した 駒鳥を 誰が見たの 駒鳥が死ぬのを それは私 とハエが言った 私の眼で 小さな眼で 私が見たの 駒鳥が死ぬのを」(『誰が駒鳥を殺したの?』より)
本書の原題 "I, Said the Fly"は、マザー・グースの中でも有名な "Who Kille…
19世紀ヴィクトリア朝時代の「ロンドン幽霊譚」というだけでは珍しくありませんが、収録13篇のうち12篇が本邦初訳、13人の作家のうち9人が女性、本邦初紹介作家もいるという大変意欲的なアンソロジーです。
19世紀のイギリスのヴィクトリア朝時代を中心とする英語圏の幽霊譚と言われると、もうけっこう読んだので…
「"God bless... God damn"(神のご加護を……こんちくしょう)」 Wikipediaによると、これがジェイムズ・サーバーの今際の際の言葉だったそうです。
ジェイムズ・サーバー(1894-1961)は、アメリカの作家・イラストレータ・漫画家で、雑誌『ニュー…
「この まちの どこかに」いるのは、誰のことなのでしょう。これも、シドニー・スミスの私絵本です。
2019年刊の本書は、カナダのイラウトレータ、シドニー・スミスが初めて自分でお話も書いた絵本です。そ…