作家の佐藤愛子さんが4月29日、102歳で亡くなった。
父は少年小説で名を馳せた佐藤紅緑、異母兄は詩人のサトウハチロー、といった文学的な環境にあって、
それでも彼女は独自の道を歩んできたが、「憤怒の作家」と呼ばれたのはやはり父の血だったろうか。
1969年、自身の離婚に至る借金返済を描いた『戦いすんで日が暮れて』で第61回直木賞を受賞、この時愛子さんは45歳。
その後も大作、話題作を発表、旺盛な作家活動は続くが、
2017年『九十歳。何がめでたい』が年間ベストセラー総合第1位となり、
その後もエッセイ本が続々と刊行される、流行作家になったのは愛子さん自身驚きだったろう。
そんな佐藤愛子さんが日本経済新聞の朝刊人気コラム「私の履歴書」に登場したのは、
1990年5月のこと。
単行本化に際して、子供時代から成人していく13枚の写真が追加され『淑女失格』というタイトルでその年の夏刊行。
新聞掲載時、愛子さんは66歳。
それで「私の履歴書」に登場したのだから、この時すでに人気作家だったといえる。
この「履歴書」では直木賞を受賞したあたりまでが綴られているが、その後の面白い話も「履歴書」として読みたかった。
愛子さんが生きた時間を思えば、この「履歴書」に綴られたのはほんのわずかだが、
それでもその最後の回に記された文章には強く魅かれる。
「人生は美しいことだけ覚えていればいいー。私はそう考えている。(中略)
「―ああ面白かった」死ぬ時、そういって死ねれば更にいい。私はそう思っている。」
きっと、佐藤愛子さんは「ああ面白かった」と逝ったにちがいない。
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