・本書は、「出版から日本のコンテンツ業界を再構築する」を
ミッションに次世代出版社(BookBase)を経営する著者が、
今のエンタメビジネスの「残酷なリアル」について伝えた1冊。
・「エンタメ産業」は、ざっくり分類すると、
◇映像(実写映画、テレビ、ビデオ、配信)
◇アニメ
◇ゲーム(家庭用、オンライン、パソコン、スマホ
◇出版
◇音楽
という5つのカテゴリに分けられる。
・これらのうち、今後の将来性を含め、
エンタメ産業を牽引することになるのは「アニメ」の領域だ。
・アニメは収益モデルとして、
映像自体で稼ぐのではなく、グッズなどを中心とする
マーチャンダイジング(小売業や流通業で
顧客が求める商品を『適正な数量、価格、
タイミング、場所』で提供するための商品政策や
販売計画のこと)による収益を上げる構造となっている。
・さらにアニメ主題歌などの音楽も広がり、
アニメIPをもとにしたゲームなどにも広がる。
・こういった形で、エンタメ産業はセグメントに
分かれつつも相互補完の関係にたり、
そのなかで、中核に位置するのがアニメなのだ。
※Netflixなど、アニメの視聴インフラが
世界で整いつつあるなかで、
まだまだ成長余地があるものの、
同時に課題も存在するが、
その詳細は本書をお読みください。
・ヒットコンテンツをどれだけ作ったとしても、
多くの人に届けることができなければ、
もちろんヒットしたとはいえない。
・作品がいかに優れていても、
届ける動線の設計を誤ればユーザーに熱は拡散しない。
・逆に、粗削りでも、
うまい通り道を持った作品は、
そのクオリティ以上に広がっていくことがある。
・現代においてその通り道の設計を決定づけているのが、
TikTok、Netflix、Steamといったプラットフォームだ。
・これらにいずれも共通するのは
「個と物語を直接つなぐ仕組みを持つ」ことだ。
著者が注目しているのは、
この個のなかに、企業も含まれているという点だ。
・もはやプラットフォームを
どう使うかは個人の問題ではなく、
組織そのものの課題になりつつある。
・どんなに力強いIPであっても、
届ける場を誤れば埋もれてしまう。
・逆に、無名の個人でも
動線の設計が的確なら、世界に届くのだ。
・しかし、その道へ飛び込むだけではいけない。
飛び込んだ先でファンとの信頼を築けるかも重要なのだ。
※いかにして熱を拡散させていけばよいかについて、
いくつか事例が紹介されているが、詳細は本書をお読みください。
・本書は、「エンタメビジネス歪みの正体 なぜ『作る人』と
『おカネを出す人』はすれ違うのか」
「ヒットは『効率の外側』で生まれる
魂の宿る『無駄』と体験密度の正体」
という2部構成となっており、
エンタメビジネスに存在する問題や、
リスクとその向き合い方について、
「コンテンツをヒットさせるにはどうすればいいのか」
について、著者の考えが述べられた内容となっている。
筆者(高橋)は特に2部
(「ヒットは『効率の外側』で生まれる
魂の宿る『無駄』と体験密度の正体」)に心が動いた。
書評家という仕事をしている関係か、
「コンテンツが世に広まることの重要性」を痛感しているからだ。
最近、「羊毛とおはな」というユニットの楽曲
「ミグラトリー」を聴く機会が多くなった。
楽曲自体は2011年にリリースされたアルバムに収録されたものだが、
筆者が好きなアーティストのひとりの
Salyuがカバーしていたことで、聴くようになった。
しかし、「羊毛とおはな」のボーカルの
千葉はなさんは2015年に乳がんでこの世を去っている。
生きているうちに、彼女の歌声を聴くことが
できなかったことを悔やむ経験をすると、
やはり何かを届けることの重要性を改めて認識した。
今のエンタメビジネスの
不都合な事実を知りたい方はご一読ください。
世間は世間の、あなたはあなたの
「好き」を見極める良い機会になる本です。
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