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シャーロック・ホームズ物語を読むにあたって63の問いを立てて理解を深めるという趣向の本。シャーロッキアン入門に最適。

  • シャ-ロッキアンは眠れない: ホ-ムズ物語に隠された63の謎
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  • 出版社:飛鳥新社
シャ-ロッキアンは眠れない: ホ-ムズ物語に隠された63の謎
日本シャーロック・ホームズ・クラブ主宰の小林司・東山あかね氏が63の問いを立てて、ホームズ物語への理解を深めようとしたらしい書籍。「らしい」と言うのは刊行の意図が詳細に書かれていないからだ。ただ、末尾の「著者のあいさつ」では、
日本において1992年にマンガ「サザエさん」をネタに「磯野家の謎」と言う本が出版され、作品を深読みする楽しみが広まった、その「磯野家の謎」で「『シャーロック・ホームズ協会』にならって作品から読み取れる限りを読む目的がある」と断り書きがある。

と書かれている。ホームズ物語に触発されて「磯野家の謎」が書かれ、その「磯野家の謎」の影響で本書が書かれたようだが、僕は「磯野家の謎」を読んでいないので、この本が、本書のような形式なのかどうかはわからない。

ホームズの人物像、ワトソンとの関係、ホームズの一風変わった日常生活、ホームズの趣味と教養、物語自身から読み取れる謎、ヴィクトリア朝のこと、ホームズ・ファンクラブの歴史など、問いを7つの範疇に分けている。問いの由来はよくわからないが、ホームズ物に詳しい著者らが、物語を読み、また研究が盛んなことから浮かんできそうな疑問を設定している感じである。例えば人物像については「生年月日や出生地はわかっているのか?」とか「推理力は遺伝性のものか、本人の努力によるものなのか?」など。ワトソンについては「医者としての能力はどの程度か?」とか「ホームズとワトソンの友情はどの程度続いたのか?」など。小林司・東山あかね両氏の本はかなり読んでいるので、どこかで聞いたような問いも混じっているが、感心したのは以下の話である。
問21でのホームズのワイン好きの習慣についての考察。イギリスではフランスの葡萄の不作の影響で19世紀後半には食後にワインを飲む習慣がほぼ廃れてしまったのだが、1880~90年代を描いているホームズ物語でホームズがワインを好んでいるということは相当なワイン好きだったのだろうと言う話。物語と社会の変化を上手く組み合わせた鋭い考察だと思った。
問29でのホームズの読書内容についての考察。「ボスコム谷の惨劇」と言う短編でホームズはペトラルカ詩集を読んでいる、と書かれている。ここから、ロマンティックな詩集を読んでいたということは、やはりホームズの女性嫌いは単なるポーズで、本当は理想の恋人の出現を待ち望んでいたのではないかと思えて来る、と言った考察。ホームズの女性への態度は常にシャーロッキアンの議論の的だが、読書から推理すると言うのは面白い。
問34でのホームズの護身術についての考察。ホームズが拳闘の心得があったことはよく知られているが、このほかに「バリツ」と言う日本の護身術を身につけていたことが知られている。仇敵のモリアーティ教授との死闘で「バリツ」により九死に一生を得たのは良く知られるところ。よく「バリツ」は日本語の柔術がなまったものと言われているが、ここではもっと説得力のある新説が披露されている。
この他、精神分析医である小林司氏の分析では、完璧主義者のホームズが隠そうとしている性格上の弱点を「子供っぽさ」「依存性」「攻撃性」としている点も面白い。

読んでいて最も楽しいのは第Ⅴ章の物語の分析である。「まだらの紐」の凶器・沼毒蛇は実在の動物か?という考察や「犯人は二人(恐喝王ミルヴァートン)」における女中アガサの正体など読んでいて楽しい作品分析である。著者夫妻は、関連本を多数出版しているが、本書は小難しい論文ではなく、立てている問いも簡潔で、問いの背景もわかるようになっている。シャーロッキアン入門編としてはお勧めの本と言える。
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  • 掲載日:2026/04/18
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