休蔵さん
レビュアー:
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地形学において長らく学説として君臨している侵食輪廻説を切り崩すチャレンジをまとめた1冊と言えよう。地形図と想定地形図を駆使しつつ、フィールドにも身を置いて理論固めをしていきます。
準平原という地形は、本書のタイトルを見て初めて触れた。副題は「盆地は海から生まれた」という。盆地のような地形かと思いつつページを捲ってみた。確かにそんな感じのようだが、その形成のあり方の学説に対して著者は疑念を抱いているという。その反論の詳細が本書である。
侵食小起伏面という地形の記載用語があるそうだ。これは河川の侵食によって陸上でつくられた平坦な地形で、隆起準平原と同じ意味で使用されるという。隆起準平原は隆起以前には準平原と考えられてきたというが、実際の準平原が確認されているわけではないという。それはアメリカの地形学者ウィリアム・モリス・デービスが提唱した侵食輪廻説のなかに登場する架空の地形という。
それでは侵食輪廻説とはどのようなものか。それは原地形→幼年期地形→壮年期地形→老年期地形→準平原で1サイクルとなる地形形成の概念のこと。地殻変動で平坦な大地が隆起すると、その後には河川による侵食が始まる。幼年期は河川の下刻で、壮年期には急峻な山岳となる。そして、老年期に再び平坦化し、準平原が形成される。つまり準平原は平坦な陸上で形成されるという考えのこと。この確認することのできない学説が準平原という地形用語を生み出したそうだ。
中国地方の吉備高原は隆起準平原と信じられてきたという。そこより一段低く隣接する世羅台地、さらに低い瀬戸内面の侵食小起伏地形。これらの地形について、著者はデービスの説によらず、独自の見解を示す。著者は侵食小起伏地形を海によって削られた地形とみる。平坦面は地殻変動で海底が隆起し、海面を通過するときに波浪によって削平される海食台と評価する。そして、全国各地の地形を示して、自身の説を強烈に説く。読後、もはやデービスの説なんて思い浮かばないくらい、本書には説得力があり、興味深かった。やや冗長ではあったが。瀬戸内海は多島海として有名であるが、著者は平坦な盆地のぐるりに確認できる侵食小起伏地形をかつての島嶼部とするのだが、本書に掲載されている海面を上昇させた想定地形図を見ると、まさしくその通りの情景が広がっていた。
現地で注目したのは“谷中分水界”と“片峠”。これらの形成は河川による侵食ではなく、海の水による影響のほうが理解できるという。そして、これらの地形は盆地周辺で数多く認められるそうで、数多くの写真で解説する。現地を歩いて入手してきた数多くの写真は、地形図だけより説得力がある。
再現実証ができるか否かが科学であるかどうかを分けるラインとすると、地形学は科学とは言えなくなる。それは歴史系の学問全般に言えること。さまざまな証拠を重ねていき、一番もっともらしい立論が評価を受けて、いつの間にやら学説として落ち着く。だからこそ、大御所が唱えて大勢の支持を得て学説となった考えであっても、まったく異なるアプローチから崩されることはある、はず。学説を崩す試みを大勢で繰り返すことこそが、歴史系学問の重要な特徴なのかもしれない。本書の試みが地形学の世界でセンセーショナルな話題を巻き起こすこと願ってやまない。
侵食小起伏面という地形の記載用語があるそうだ。これは河川の侵食によって陸上でつくられた平坦な地形で、隆起準平原と同じ意味で使用されるという。隆起準平原は隆起以前には準平原と考えられてきたというが、実際の準平原が確認されているわけではないという。それはアメリカの地形学者ウィリアム・モリス・デービスが提唱した侵食輪廻説のなかに登場する架空の地形という。
それでは侵食輪廻説とはどのようなものか。それは原地形→幼年期地形→壮年期地形→老年期地形→準平原で1サイクルとなる地形形成の概念のこと。地殻変動で平坦な大地が隆起すると、その後には河川による侵食が始まる。幼年期は河川の下刻で、壮年期には急峻な山岳となる。そして、老年期に再び平坦化し、準平原が形成される。つまり準平原は平坦な陸上で形成されるという考えのこと。この確認することのできない学説が準平原という地形用語を生み出したそうだ。
中国地方の吉備高原は隆起準平原と信じられてきたという。そこより一段低く隣接する世羅台地、さらに低い瀬戸内面の侵食小起伏地形。これらの地形について、著者はデービスの説によらず、独自の見解を示す。著者は侵食小起伏地形を海によって削られた地形とみる。平坦面は地殻変動で海底が隆起し、海面を通過するときに波浪によって削平される海食台と評価する。そして、全国各地の地形を示して、自身の説を強烈に説く。読後、もはやデービスの説なんて思い浮かばないくらい、本書には説得力があり、興味深かった。やや冗長ではあったが。瀬戸内海は多島海として有名であるが、著者は平坦な盆地のぐるりに確認できる侵食小起伏地形をかつての島嶼部とするのだが、本書に掲載されている海面を上昇させた想定地形図を見ると、まさしくその通りの情景が広がっていた。
現地で注目したのは“谷中分水界”と“片峠”。これらの形成は河川による侵食ではなく、海の水による影響のほうが理解できるという。そして、これらの地形は盆地周辺で数多く認められるそうで、数多くの写真で解説する。現地を歩いて入手してきた数多くの写真は、地形図だけより説得力がある。
再現実証ができるか否かが科学であるかどうかを分けるラインとすると、地形学は科学とは言えなくなる。それは歴史系の学問全般に言えること。さまざまな証拠を重ねていき、一番もっともらしい立論が評価を受けて、いつの間にやら学説として落ち着く。だからこそ、大御所が唱えて大勢の支持を得て学説となった考えであっても、まったく異なるアプローチから崩されることはある、はず。学説を崩す試みを大勢で繰り返すことこそが、歴史系学問の重要な特徴なのかもしれない。本書の試みが地形学の世界でセンセーショナルな話題を巻き起こすこと願ってやまない。
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ここに参加するようになって、読書の幅が広がったように思います。
それでも、まだ偏り気味。
いろんな人の書評を参考に、もっと幅広い読書を楽しみたい!
この書評へのコメント

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- ページ数:0
- ISBN:B0DJ2DPJ87
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