『ビブリア古書堂の事件手帖』シリーズは最初の7巻が北鎌倉の古本屋「ビブリア古書堂」の店主である篠川栞子の物語だった(栞子編)。
そして本書は8冊めに当たるが、栞子の娘の扉子のシリーズの第1巻だ(扉子編)。
この扉子編の事件手帖番号は第2巻以降はII、III、IV、Vとローマ数字の番号が振られるので、本書は表記はないが事実上Iということになる。
『ビブリア古書堂の事件手帖』シリーズは、古書をめぐるミステリを古書店主たちが解決してゆく物語。本書では扉子がタイトルにありながらもまだ六歳である。
読んでみると、扉子は栞子から本にまつわる物語を語って聞かせられる存在でしかない(第四話を除く)。本の謎解きは、やはり栞子らが担当する。
とはいえ、六歳のこの少女は驚くべき本への関心を既に有している。本気で本に関るから、大人がうまいこと言って誤魔化すことは難しい。末恐ろしい六歳である。
本書は四話を収める。
第一話は北原白秋『からたちの花 北原白秋童謡集』をめぐる話。これは白秋の童謡そのものに関り、読みごたえがある。
第二話は『俺と母さんの思い出の本』の題がつくが、何の本かを探ることそのものがミステリというおもしろいスタイル。
第三話は佐々木丸美『雪の断章』をめぐる話。本そのものよりも、その本がなぜ志田(ビブリア古書堂の常連客で、自称せどり屋)から小菅奈緒(栞子の妹の文香の同級生)に二冊も贈られたのかや、志田のところに紺野祐太という未知の人物が現れたことが謎。後味はあまりよくない。
第四話は内田百閒『王様の背中』をめぐる話。ここでは扉子が少し話の展開に関る。しかし、古書を扱う舞砂道具店の吉原孝二のエゴまるだしの行動が読んでいて気持ちのよいものではない。本の中身も殆ど話に関係ない。ミステリ要素は最小。
というわけで、四話のうち、後半二話が本以外の、人物のエゴに焦点が当たるため後味がよくない。扉子を題に冠するだけの必然性もよくわからない。
『ビブリア古書堂の事件手帖』シリーズのいわば外伝として始まった扉子編かと思うが、今後が期待できるとは本書の時点では言えない。
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