先日、オランダで見つかったダルタニャンのものと思われる骨が、子どもの頃、講談社の「少年少女世界文学全集」で読んだ「三銃士」の物語へと僕を誘った。/
物語の冒頭、自分が乗っているくたびれた田舎馬を笑われたダルタニャンは、ぶち切れて笑った男に斬りかかる。/
【言いも終わらぬうちに、ダルタニャンの猛烈な一撃が飛んで来た。ひらりとうしろに身をかわさなかったら、冗談口の言い納めになりかねないところだった。見知らぬ男も、もう無駄口をたたいてはいられないと見て取ってか、刀を抜き、会釈を交わして、真剣に身構えした。が、それと同時に、二人の話し相手と、それに亭主までが加勢して、ダルタニャンに襲いかかり、棒やら、シャベルやら、火ばさみなどで、めったやたらになぐりつけた。
─中略─
で、なぐりあいは、なおしばらく続けられた。ついに、ダルタニャンも疲れはて、刀を取り落とした。棍棒の一撃で刀は、まっぷたつに折れ、間髪を入れずに次の一撃が額に命中した。ガスコーニュの若者は血まみれになり、息も絶え絶えにぶっ倒れた。】/
えっ、嘘っ!よっ、弱っ!
これでは、イケメンプリンス、ダルタニャンの前途は多難である。(昔日の憧れも何処やら、おのれ、ダルタニャン、貴様がイケメン一味と知ったからには、もはや容赦はしない。この恨み晴らさでおくべきかあ〜っ!)
◯「四 アトスの肩、ポルトスの釣り革、アラミスのハンカチ」:
これぞ必見の名シーンだ!
これは誰ぞ名人の講談で聴いてみたい。
【やっきとなったダルタニャンは、控えの間をひとっ跳びに横切って、階段をいちもくさんに駆け降りた。(略)勢いあまって、裏の戸口から退出する一人の銃士に真っ正面からぶつかってしまった。額で肩のあたりをドンとやられたその男は、悲鳴に近い叫び声を上げた。
「これは失礼」ダルタニャンはそのまま駆け続けようとして声をかけた。「これは失礼、つい、いそいでおりましたので」
最初の一段に足をかけたとたん、鉄のような手首が肩掛けをつかみ、逃げ出そうとするダルタニャンを引き止めた。
「いそいでいると言われるのか!」銃士は経帷子みたいに青ざめた顔で叫んだ。】/
【「では、諸君」ダルタニャンは自分の態度をポルトスに説明しようともせず、いきなりこう言い出した。「四人はつねに一体となって協力する─これをわれわれの標語にしようではないか」】
“One for all, All for one”(一人はみんなのために、みんなは一人のために)/
現在では特にラグビーの精神を表す言葉として定着している耳に快いこの言葉から、文弱な僕は、いつのまにかずいぶん遠くへ来てしまったようだ。/
ダルタニャンがバッキンガム公爵からいただいた四頭の名馬を、四人は酒やギャンブルでことごとく失ってしまう。
いやしくも、護衛士や銃士と言えば、名馬は名を上げるのに不可欠な商売道具のはず、それをギャンブルなどでいとも簡単になくしてしまうというのは、この四人、ひょっとしたら「横乗り系の人」たちではないだろうか?/
《「横乗り系の男」はやめておけ》(4月7日放送、日本テレビ系「踊る!さんま御殿!!3時間SP」より。)
先日、「踊る!さんま御殿!!」で、 「横乗り系の人」という言葉をはじめて聞いた。
どうやら、サーフィン、スノーボード、スケートボードのように、進行方向に対して体を真横に向けてボードに乗るスポーツをやっている(スカした)あんちゃんのことをいうらしい。
自分は何系の人か考えてみた。
保育園の頃、学芸会で浦島太郎の亀の役をやっていたので、ひょっとしたら「背中に誰か乗せてる系の人」かもしれない。
できれば、その誰かが背後霊でなければいいのだが。/
自らを省みず言わせて頂くならば、この四人、案外頼りにならないのではないか?
言うほど強くもないし、第一、フーコー先生ご推奨の「自己の陶冶」がまるでできていない。
人を斬ることにかけては自信をもっているらしいが、生活はそこらのアル中やギャンブル依存症の男となんら選ぶところがない。
言うならば、斬った人数だけが自慢の 「横乗り系の人」たちと何も変わらないのではないだろうか?
(と、 「横乗り系」のあんちゃんが斬った女に振られた僕は、どうしても思ってしまうのだ。)/
この男たち、自分たちが湯水の如く散財しておいて、出陣準備の金は老女をロマンス詐欺で騙して手に入れるつもりらしい。
けっ、何が銃士だ、護衛士だ。
てやんでえ、たかが老人を騙す詐欺野郎じゃねえか!/
やはり、切った張ったの物語はどうも僕には合わないようだ。
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