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白鳥の歌なんか歌わない、おそらく薫クンは

  • レビュアー: さん
  • 本が好き!1級
  • 白鳥の歌なんか聞えない
  • by
  • 出版社:中央公論新社
白鳥の歌なんか聞えない
庄司薫の薫クンシリーズの2作目。

『さよなら怪傑黒頭巾』というのが刊行のタイミングとしては先だった、ということらしいが、時系列としては、薫クンが東大紛争のため浪人した直後の話であり、こちらを先に読む方がいいとされる。

幼馴染の由美の先輩であるところの「小沢さん」のおじいさんが亡くなりそう、ということで心の弱った由美さんが、薫クンに告白して、それに対する微妙な気持ちが主旋律であり、駆け落ちするといって出ていったもののノコノコと帰ってきた友人・小林のことが対旋律になっている。

明確に、それらが対比されているわけではないけれども、死について考えすぎて、弱っている小沢さんと由美に対して、小林の無鉄砲は空虚な生命力を感じさせる。どちらを肯定するわけでもなく、それでも薫クンは死それ自体を見つめすぎることに対する警戒をはっきりと口にする。そこが一番面白い。

正直な話、これほど長くする必要があるのか、という部分と、薫クンのスタイルに慣れてきたのもあって、たるさも覚えながらの読書だったが、ここぞというときの長尺な薫クンの大見得はやっぱり、なんとなくいいナと思わせる。

誰だって、どんな人間だって、結局は死んでしまうのだし、誰かが死んでいくからといって、いちいちこっちがやせ細っていては、それこそ身がもたないじゃないか。それにそうだろう?ぼくたちだっていずれ死ななければならないけれど、そのぼくたちが死ぬ時だって、ちょうどきょうと同じように花は咲き開き、バスは満員となり、教習所もいっぱいで、若い恋人たちはみんな腕を組んで楽しそうに笑いながら歩き、このぼくたちが死ぬことなんて知りもせず、いや知ったとしてもなんとも思わない人々でこの地球上はいっぱいにちがいないのだ。そしてそれは、おそらくはどうしようもないこと、きっとぼくたち人間にとってむしろ当り前のことにちがいないんだ。


ここの章から、本当に珠玉の薫クン節が、始まる。
そこまで、頑張って読んでほしいな。
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  • 掲載日:2026/05/19
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