(引用続き)・・・長年にわたって使い込まれた物には、独特の味があります。]
秋田在住のライター・イラストレーター夫妻による、地元に残る「道具」を紹介した1冊です。見開きで右頁に文章、左にイラストがレイアウトされ、読みやすくかつ見やすく仕上げられています。
表紙画像をみるだけ、また、ことばだけでもうまく実感しづらいと思われますが、B6サイズを「横」にした造本で、小ぶりながらも見開きでは横に大きく広がる仕掛けになっており、見る者の目を楽しませてくれます。さらにハードカバーで「箱入り」と凝ったつくりです。
1997年とかなり前の刊行になりますが、そのぶん、出版社側にも余裕があったのでしょう、こうした細かな点でさりげない贅沢ができたのかもしれません。『読売新聞』の「秋田版」に1995~1996年に連載されたものとのことですが、刊行は全国版です。こうした地域性が強い本が全国版で読めるというのは文字通り二重の意味で有難いです。
「地元に残る道具」という表現を使うと、地域固有の民具の紹介と思われるかもしれませんが、ここで紹介されているのはそれだけに限りません。「やな:遡上するサケ待ち受ける」(126~127頁)や「とうみ:風を起こしてゴミを飛ばす」(156~157頁)といったものは全国的にみられたものですし、もっと新しい「ドン菓子機:大音響が作る懐かしの味」(72~73頁)もあります(ポン菓子機としてよばれていることが多いのではないでしょうか)。
「地元に残る道具」というのは全国的な広がりをももつことを示唆しています。表現や使われ方、道具としての工夫のされ方の地域差が面白くなってくるのではないでしょうか。本書全体では「村のデザイナーたち」「雪が好き」「飲むかつ食う」「捕る採る取る」「田んぼにて」という章立てで構成されています。「雪」というのが秋田らしいですが、下駄スケートやカマクラなんて出てきます。猟師が使うと言う「ユキベラ」なんていうものもあります。
道具の中には、「台車:漁港の鉄工所が独自の工夫」(130~131頁)というものもあります。都会のオフィス内でもふつうに使われており、「なんで?」と思われるかもしれませんが、ここで紹介されているのは、埼玉県の会社から買ったものを、地元の鉄工所が車止め部分を工夫して漁港でより広く使われるようにしたものだそうです。こうした地元での一手間が道具を広く使いやすいものにし、そして古今東西を問わず、全国に広がっていったのでしょう。未来の民俗博物館には、多種多様な台車が展示されているかもしれません。
なお、ここで紹介されているのは、ほとんどが「現在でも使われているもの」です。先に紹介した「とうみ」は、取材当時は現役で大豆の脱穀に使われており、20年ほど前に「買った」とのことです。
江戸時代以来の日本史の教科書にものる道具の「とうみ」ですが、どこで買えたのでしょう?
イラストでは、モノ本体だけではなく、人が実際に使う姿や、紹介者なども合わせて描かれているのが楽しいです。作者夫妻が、モノを使っている姿も出てきます。妻=ハンコタンナ、夫=ガンヅメですが、名前だけではまったく何かわからない代表格ですので、ぜひ、本書中でお確かめください。
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