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※ネタバレ注意!

素材そのものに対する興味から読んでみました。  できればもっと「素の素材」を他人のバイアスなしで読みたかった。  でも、PHPから出ている本は高い。  歴史を知るってホント、難しいなぁとつくづく感じた読書でした。

日本海軍400時間の証言―軍令部・参謀たちが語った敗戦
編者名でもわかるとおり、こちらの本は「NHK スペシャル」で放映された番組のいわば編集後記のような本でした。  東京・原宿にある旧海軍将校のOB団体「水交会」で130回近く開催された日本海軍の中枢にいたエリートたちによる「反省会」のテープが出てきたところから話は始まります。  元大尉から中将まで、参加者はのべ40人。  「戦争の真実を語り残す」という目的のもと、「門外不出」を条件に、その会の様子のすべてが録音されていたとのこと。  

日本では東京裁判の結果等から、「海軍善玉説」がまことしやかに語られてきたけれど、陸軍だけが糾弾された歴史にはどこか納得のいかないものを常々感じていた(但し、自分で色々調べてみて何らかの根拠があったからというわけではありません。  感覚的に『胡散臭い結論だよな』と思っていたにすぎません。)KiKi にとって、その海軍のお偉方(といっても本当の意味でのトップではなく、その直下にいた将校レベルですが)が仮にも「反省会」と名付けた会合で語られた内容に興味を持ち、図書館から借り出してきました。  

読了して感じることは、タイトルから期待される日本海軍400時間の証言を題材にはしているし、その中から拾った証言そのものもかなり抜粋されて記載はされているものの、それを聞いた取材班面々の想いのような記述が多すぎるうえに、ある1つのトピックに対する反省会上での応酬といった部分の緊迫感のようなものは全く感じられず、正直なところ肩透かしを食らったような気分を持ったことをまずは記載しておきたいと思います。

もちろん、録音テープだけでは証言内容を正確に把握することはできないので、証言を実証するためという意味もあって、NHK取材陣が公文書館や士官の遺族を回るという気が遠くなるような検証過程が描かれるのは、ある意味ではフェアなことなわけですが、どうしてもその苦労の中で生まれてきた「戦争を知らず、現代感覚で事象に向かった際に感じる取材班面々のある種の想い」が出てくるのはやむをえないこと・・・・とはいえ、それがこの大事な証言に向かった際に必ずしも是とすべきものなのかどうか、疑問を感じずにはいられませんでした。  そしてそんな彼らのバイアスを通した著述からだけ何かを感じるのは間違っているだろうという自制心を常に要求されたことによる疲労感が残る読書体験だったように思います。

TV番組の編集という目的がある以上、やはりそこにある種のテーマが必要になってくるわけで、それを単なる受容者である KiKi がとやかく言える立場にはないことはわかっていても、どこかそのテーマ設定に薄っぺらい物を感じてしまいます。  末尾に記載されたプロフィールを拝見した限りでは番組の制作者たちはその大半が KiKi よりも年少の方々でした。  つまり、その親世代さえも「戦争を知らない」人たちで、彼ら自身は「戦争を知らない子供達」という言葉にさえも当てはまらないような人たちだったようです。  

そうであるだけに最初に「自分たちは戦争を全然知らない」と本音を言い、その戦争における被害者にも加害者にもなりうるという視点でこの資料に向かい、いたずらに思想を論じるわけでもなく、個人を糾弾するものでも、賛嘆するものでもないという立ち位置をとったことには、ある種の称賛を送りたいと思います。  そして、かつての海軍士官たちの生の声から過去の事実を可能な限り抽出し、そこから現在に通じるものを見出し、未来へ生かすべき教訓は何なのか?を考えたというアプローチにも頷けるものが多々あります。  でも、その結果出てきた答えが「組織と個」というありがちなまとめ方に陥っている点はちょっとなぁ・・・・と感じずにはいられません。

ただ、「あの戦争」から目を背けてきた1人である KiKi にとって、これまでまったく知らなかった(知ろうとさえしなかったというべきか?)出来事を知る(もしくは「ちゃんと知ろう」と思う)きっかけだけは間違いなく作ってくれました。

1、「勝てない戦」であると知りながら何故、開戦に踏み切ったのか?
2、「作戦に非ず」と言いながら何故「特攻」作戦は行われたのか?
3、「極東軍事裁判(いわゆる東京裁判)」対応に見る海軍の裁判戦略。

という大きな3つのポイントに関する中でのいくつかの証言は、物知らずの KiKi には「え~!!  そんな馬鹿な!!(もしくは、なるほどさもありなん。  でも、何とまあ酷い話!!)」と思わせるに十分な内容の話がいくつも出てきていました。  でも、その1つ1つであってさえも、どこか取材班のある種の思い込み、聞き違いがあるのではないかと疑いたい気分がぬぐえない読書でした。  だいたいにおいて、あるテーマを設定した場合、そのテーマに合致した内容の証言のみがピックアップされるのはこれはやむをえないことでもあるわけで・・・・・。

そんなどこか消化不良気味な想いを解消するためにどうすべきか考えて調べてみるとどうやらこの本とは別にPHPからいわゆるテープ書き起しの本が出ているようです。  誰かのバイアスを避けたいなら本来そういう本を読むべきなんだろうから(いわゆる一次資料ということで)、では早速・・・・と思ったものの、Amazon で見るととにかく高い・・・・。  この番組の「オンデマンド放送」も観てみようかとも思ったけれど、何気にこの話にナレーションやらBGMがつくと、悪意なき感情操作にさらされそうで、二の足を踏みます。  歴史を知るってホント、難しいなぁとこの本を読んでつくづく感じました。
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  • 掲載日:2014/08/25
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