ゆうちゃんさん
レビュアー:
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ジェリコ公爵を名乗る海賊の正体を巡る話。第一次世界大戦後の地中海に海賊のようなおとぎ話は残念ながら似合わない。
本書もルパンものではないルブランの長編である。
ヒロインは最近、父に死なれその遺産を相続した大金持ちのナタリー・マノルセン。海岸の断崖上のミラドール荘を借りて春を過ごしている。冒頭は友人のマクシーム、婚約者気取りで父の共同経営者だったフォルヴィル、フォルヴィルの連れて来た父の友人シャブロー医師、マクシームの女友達ゴドアン姉妹と美しい夕日を眺めている場面である。マクシームはこの目立つミラドール荘が最近、噂になっている海賊・ジェリコ公爵の襲撃を受けると言って防備を固めていた。ナタリーはロマンチックな英雄を結婚相手として求めていると話すと、シャブロー医師は最近、海で拾われた記憶喪失の頑健な体つきの男エレン・ロックの話をした。彼は不思議な、人を支配する能力があると言う。シャブロー医師がエレン・ロックの話をするとご当人が登場し、彼も海賊に備えろ、という。フォルヴィルは逃げ腰、マクシームは召使と客人を車で避難させミラドール荘はナタリーとエレン・ロックだけになった。海賊は実際に襲撃を始め、エレン・ロックの活躍で撃退される。ナタリーは元々勝気な女性で、自分に支配的な力を及ぼすこの男が気に食わない。彼から逃れようと自己所有のヨットでスペインに行こうとするが途中で彼女の後を追いかけて来たエレン・ロックの船に横づけされる。彼はたちまち船を支配し、ナタリーの父の最期の地、シチリア島のカステルセラノ村に連れて行く。エレン・ロックの調査で、ナタリーの父のマノルセン氏がジェリコ公爵の部下に殺されたことがわかる。ジェリコ公爵はこの村でドルチ姉妹の姉に惚れて誘拐し、彼女を気違いにして放り出したこともわかった。ドルチ姉妹の母はその衝撃で病気になり、妹のパスクアレルラは復讐を誓っていた。この島でナタリーが父の死ぬ少し前に贈られたメダルには不思議な仕掛けがあり、中に木片が中に入っていることもわかった。
次の舞台は6月14日のパリとヴェルサイユ。エレン・ロックとマクシーム、パスクアレルラ・ドルチの調査で、ナタリーの周囲に巡らされる陰謀が明らかになる。その第一幕はフォルヴィルの正体で、彼がナタリーの父の会社で不正を働いていたことが明らかになる。エレン・ロックの糾弾で彼は逐電する。次にジェリコ公爵の正体がパスクアレルラの口から語られた。彼女はジェリコ公爵の第一の手下ボニファスの宿に出入りし、彼から情報を仕入れていたのだった。そこで彼女が語ったジェリコ公爵の正体とは・・。
更に舞台はブルターニュに移る。パスクアレルラの話からジェリコの出自はブルターニュの貴族で、マクシームはその地の城館を片っ端からリストアップし、これはと思う場所をナタリーと訪ねていた。最も疑わしいのがプルヴァネック公爵家の城館で、今は荒れ果てジェオフロワ老人という番人が居るだけだった。ジェオフロワ老人の話では最後の当主の女主人は亡くなり、その息子ジャンも第一次世界大戦で亡くなっているとのことだった。だがジャンの婚約者であるアルメル・ダニリスは、彼が生きていることを信じて毎日花を捧げて彼の帰りを待っている。ミサに行くアルメルにもっと話を聞きたいというマクシームはついて行き、ナタリーは城館の櫓の広間で彼の帰りを待っていた。そこに、ボニファスとフォルヴィルがやって来た。
意外な仕掛け、場面転換の早さが持ち味で、突っ込みどころが多くても楽しく読めてしまうのがルブランの持ち味だが、本書はちょっといただけない。ジェリコ公爵の正体が焦点だが読んでいて簡単に推測がついてしまうし、第一次世界大戦から何年か経った年代(執筆が1929年なのでその頃を想定しているのだろう)に、インド洋辺りならまだしも地中海の沿岸で海賊に怯える人物像と言うのもいただけないテーマである。ナタリーの父の死がもうひとつの焦点だが、冒頭にナタリーは父と疎遠に育ったと書かれており、父娘の愛情も描かれておらず、それがテーマになるのかと思った。結末ではジェリコ公爵の悪事は、それほど悪事ではなかったと書かれているが、パスクアレルラ・ドルチの姉を気違いにして放り出した話の責任には何のフォローもされていない。最後の最後まで読むと長年ジャンを想っていた婚約者への態度も頂けない。このように自分にはこの小説の主人公にもヒロインにも共感が出来なかった。ルブランの小説は突っ込みどころが多くても、それなりに面白いものが多いのだが、残念ながら本書はこうした理由で完全な駄作となってしまっている。因みに前年の1928年にはルパンもので「バーネット探偵社」「謎の家」、翌年には「バール・イ・ヴァ荘」が書かれている。「バーネット探偵社」は優れた短編集でありこの作品の出来具合が年齢による筆の衰えと言うのは考えにくい。
ヒロインは最近、父に死なれその遺産を相続した大金持ちのナタリー・マノルセン。海岸の断崖上のミラドール荘を借りて春を過ごしている。冒頭は友人のマクシーム、婚約者気取りで父の共同経営者だったフォルヴィル、フォルヴィルの連れて来た父の友人シャブロー医師、マクシームの女友達ゴドアン姉妹と美しい夕日を眺めている場面である。マクシームはこの目立つミラドール荘が最近、噂になっている海賊・ジェリコ公爵の襲撃を受けると言って防備を固めていた。ナタリーはロマンチックな英雄を結婚相手として求めていると話すと、シャブロー医師は最近、海で拾われた記憶喪失の頑健な体つきの男エレン・ロックの話をした。彼は不思議な、人を支配する能力があると言う。シャブロー医師がエレン・ロックの話をするとご当人が登場し、彼も海賊に備えろ、という。フォルヴィルは逃げ腰、マクシームは召使と客人を車で避難させミラドール荘はナタリーとエレン・ロックだけになった。海賊は実際に襲撃を始め、エレン・ロックの活躍で撃退される。ナタリーは元々勝気な女性で、自分に支配的な力を及ぼすこの男が気に食わない。彼から逃れようと自己所有のヨットでスペインに行こうとするが途中で彼女の後を追いかけて来たエレン・ロックの船に横づけされる。彼はたちまち船を支配し、ナタリーの父の最期の地、シチリア島のカステルセラノ村に連れて行く。エレン・ロックの調査で、ナタリーの父のマノルセン氏がジェリコ公爵の部下に殺されたことがわかる。ジェリコ公爵はこの村でドルチ姉妹の姉に惚れて誘拐し、彼女を気違いにして放り出したこともわかった。ドルチ姉妹の母はその衝撃で病気になり、妹のパスクアレルラは復讐を誓っていた。この島でナタリーが父の死ぬ少し前に贈られたメダルには不思議な仕掛けがあり、中に木片が中に入っていることもわかった。
次の舞台は6月14日のパリとヴェルサイユ。エレン・ロックとマクシーム、パスクアレルラ・ドルチの調査で、ナタリーの周囲に巡らされる陰謀が明らかになる。その第一幕はフォルヴィルの正体で、彼がナタリーの父の会社で不正を働いていたことが明らかになる。エレン・ロックの糾弾で彼は逐電する。次にジェリコ公爵の正体がパスクアレルラの口から語られた。彼女はジェリコ公爵の第一の手下ボニファスの宿に出入りし、彼から情報を仕入れていたのだった。そこで彼女が語ったジェリコ公爵の正体とは・・。
更に舞台はブルターニュに移る。パスクアレルラの話からジェリコの出自はブルターニュの貴族で、マクシームはその地の城館を片っ端からリストアップし、これはと思う場所をナタリーと訪ねていた。最も疑わしいのがプルヴァネック公爵家の城館で、今は荒れ果てジェオフロワ老人という番人が居るだけだった。ジェオフロワ老人の話では最後の当主の女主人は亡くなり、その息子ジャンも第一次世界大戦で亡くなっているとのことだった。だがジャンの婚約者であるアルメル・ダニリスは、彼が生きていることを信じて毎日花を捧げて彼の帰りを待っている。ミサに行くアルメルにもっと話を聞きたいというマクシームはついて行き、ナタリーは城館の櫓の広間で彼の帰りを待っていた。そこに、ボニファスとフォルヴィルがやって来た。
意外な仕掛け、場面転換の早さが持ち味で、突っ込みどころが多くても楽しく読めてしまうのがルブランの持ち味だが、本書はちょっといただけない。ジェリコ公爵の正体が焦点だが読んでいて簡単に推測がついてしまうし、第一次世界大戦から何年か経った年代(執筆が1929年なのでその頃を想定しているのだろう)に、インド洋辺りならまだしも地中海の沿岸で海賊に怯える人物像と言うのもいただけないテーマである。ナタリーの父の死がもうひとつの焦点だが、冒頭にナタリーは父と疎遠に育ったと書かれており、父娘の愛情も描かれておらず、それがテーマになるのかと思った。結末ではジェリコ公爵の悪事は、それほど悪事ではなかったと書かれているが、パスクアレルラ・ドルチの姉を気違いにして放り出した話の責任には何のフォローもされていない。最後の最後まで読むと長年ジャンを想っていた婚約者への態度も頂けない。このように自分にはこの小説の主人公にもヒロインにも共感が出来なかった。ルブランの小説は突っ込みどころが多くても、それなりに面白いものが多いのだが、残念ながら本書はこうした理由で完全な駄作となってしまっている。因みに前年の1928年にはルパンもので「バーネット探偵社」「謎の家」、翌年には「バール・イ・ヴァ荘」が書かれている。「バーネット探偵社」は優れた短編集でありこの作品の出来具合が年齢による筆の衰えと言うのは考えにくい。
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神奈川県に住むサラリーマン(技術者)でしたが24年2月に会社を退職して今は無職です。
読書歴は大学の頃に遡ります。粗筋や感想をメモするようになりましたのはここ10年程ですので、若い頃に読んだ作品を再読した投稿が多いです。元々海外純文学と推理小説、そして海外の歴史小説が自分の好きな分野でした。しかし、最近は、文明論、科学ノンフィクション、音楽などにも興味が広がってきました。投稿するからには評価出来ない作品もきっちりと読もうと心掛けています。どうかよろしくお願い致します。
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- 出版社:東京創元社
- ページ数:288
- ISBN:9784488107178
- 発売日:1974年04月19日
- 価格:609円
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