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いけぴん
レビュアー:
<じぶん>というものは《他者の他者》としてはじめて自覚するものだ。他者にとって意味のある他者たりえているか・・・ということ。
「じぶん探し」がもてはやされた時代があった。若者が一人旅に出て、そこで出会った人々や風景から「じぶんとは何者か」という答えを出そうとする行為なのだろう。

「じぶんとは何者か」という問いは上述の若者たちに限らず、遙か彼方の大昔から皆が答えを出そうと藻掻いてきたものである。本書は、この人類究極の問いに解を見出そうと挑んだ一冊である。

『<じぶん>とは徹底して社会的な存在だと言わざるをえない』

じぶんの内部に<じぶん>があるのではない。じぶんと他者すなわち社会との間に生じるものである。社会のなかで自分自身が特定の人格として認められることである。世界に自分一人しかいないとしたら<じぶん>とは何かを問う意味がどこにあるのか。「わたし」と「あなた」がいるからこそ、<じぶん>という存在が生まれるのだ。

何者にでもなれる可能性を秘めた赤ん坊の多くが、平凡な子どもになっていくのも社会との関係性の中で<じぶん>が作り上げられている。心の中になにが潜んでいようとも、作り上げられた人格が<じぶん>なのだ。

『おとなたちが子どもはこういうものだと考えているところのものであって、子どもはそういうおとなの観念に合わせて「ただの坊や」であるふりをしているうちに、ふりをしていることそのことを忘れて「ただの坊や」になる。(中略)以後この子どもは「ただの坊や」でしかありえなくなる。』

本書で印象的だったフレーズがこれ。

『自己のアイデンティティとは、自分が何者であるかを、自己に語って聞かせる説話(ストーリー)である』

社会との関わりの中で<じぶん>という存在が形作られていくそのプロセスそのものが<じぶん>の正体なのだと著者。一人ひとり固有の個人的な歴史こそが<じぶん>であり、それをどのように語るのかも大事な要素で、おなじ人生でも<じぶん>というものに様々な彩りを見ることが出来る。

もう「じぶんとは何者か」などと思い悩む年齢ではなくなってしまったが、たまにはこういう本を手に取るのもよいものだ。
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いけぴん
いけぴん さん本が好き!1級(書評数:1250 件)

山口での単身赴任を終え大阪に戻りました。これからは通勤時間を使っての読書が中心になります。

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