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爽風上々
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なぜ日本は危機管理で失敗ばかりしているのか。
著者は1966年に連続して起きた航空機事故以来地震や津波、台風災害などの被災者の取材を重ね、それが起きる前の防災対策というものがなぜこの国では改善されていかないのかを考えてきました。

そして最近また非常に大きな災害が起きています。
それが東日本大震災、福島原発事故、そして新型コロナウイルスのパンデミックなどです。

この本では第1部でまず最初に危機管理失敗の典型例として太平洋戦争中のミッドウェー海戦を示し、その後コロナ禍、大津波、原発事故を詳細に眺めていきます。
さらに第2部として色々な新聞などに投稿された文章をまとめて、災害や対応、政府関係者の発言のひどさなどを見ていきます。


コロナ禍に対する政府の対応のひどさは言われていますが、その最初はPCR検査の実施数のあまりにも少ないことで示されました。
実はそれ以前に発生したSARS(サーズ)MERS(マーズ)といったウイルス感染症の際に諸外国はそれ以上の大量発生を想定し、検査体制、治療体制の整備を始めていたのでした。
日本も当時の民主党政権は新型インフルエンザ等対策特別措置法を定め、体制整備に入る予定でした。
しかしその後13年に自民党の安倍政権となるとその特措法について何の行動も起こさず、放置したままとしました。
それがコロナ禍発生当初の対策出遅れにつながったということです。


東日本大震災での大津波発生は「想定外」と言われましたが、それ以前に危険性を主張した研究者がいたということは知られています。
それが当時の東北大箕浦教授でした。
箕浦教授は1983年に日本海中部地震によって大津波が発生し多くの犠牲者が出たことに衝撃を感じ平安時代に仙台平野を襲った貞観津波の研究に取り組みました。
その地質調査の結果、西暦915年の十和田噴火の下数センチのところに20センチ以上も積もった貞観噴火の海砂堆積層が見つかりました。
それを1986年の学会で発表したのですが、学会の反応は冷淡で、不動産業者などから脅迫されることもありました。
徐々に同調する研究者も増えて調査対象を増やし結果を出していったのですが、それを原発設備改良はつなげられなかったのは、電力会社と結託したかのような学会関係者ばかりでなく、政府の圧力、官僚のゴリ押しもあったそうです。
箕浦教授などのグループのデータは信頼性が低いから無視してよいと言わんばかりの態度でした。


災害、公害、事故等々が起き多くの被害者が出る事態となっても、この国では正確な実態調査をすることがありません。
そもそも太平洋戦争で大規模な空襲がありましたが、その被害実態調査というものを国は一切やっていません。
東京をはじめ全国の空襲被害調査を行ったのは民間団体でした。
原爆被災も調査を行ったのは学術団体で国ではありません。
この国は戦争と言って全国民を動員しておきながら、負けると国民の被害を調べようともせず逃げてしまいました。
公害の原点水俣病でも国はチッソを擁護するために原因の特定を意図的に9年間遅らせチッソの水銀化合物垂れ流しを禁止せずに患者を激増させました。
福島原発事故でも被害者の調査プロジェクトを実施すべきところ、まったく無視しています。


後半の記事の中で2016年、安倍内閣が安保法案成立に狂奔していた当時のものがあります。
安倍首相は「国民の生命を守る責任がある」としばしば発言し、そのために安保法案が必要とし、さらに巨額の防衛予算を投入しようとしています。
しかし、公害や災害大事故などで多くの国民の命が奪われてもその安全対策をするための金は財源がないと言って出しません。

「国民の命のことを本気で考えていない」のは明らかでした。
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爽風上々
爽風上々 さん本が好き!1級(書評数:2794 件)

小説など心理描写は苦手という、年寄りで、科学や歴史、政治経済などの本に特化したような読書傾向です。
熊本県の片田舎でブラブラしています。
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