(上下巻とも感想内容は同じ)
本書は<鑓水、修司、相馬>が活躍する3部作の最後のシリーズ。前2作品は既読。このシリーズのこの3人組(!?)が大好きで、シリーズ最後のこれを読んでしまったらあとがなくなる、それは寂しすぎる!! との思いから、読むのを先延ばしにしまくってきた本。最近作者の本を調べたら、この後に数冊新作が出ていて、そちらの方も評判は上々だったので、だったらこの本を安心して読める…と、読むことにした。
いや~、相変わらずすばらしかった。
本書では3人組のうち鑓水に焦点が当たっているのも、鑓水をいちばんのお気に入りにしている私にはうれしい内容になっていた。が、先の戦争=太平洋戦争を絡めているだけに、あの軽薄っぽい鑓水が実は…とシリアス度全快。
そうなんだ、鑓水はクオーターだったんだ。と、これまでの内容と合わせて鑓水のキャラクターに妙に説得力があった。
抜群のストーリーテリングは流石としかいいようがない。謎の提示の仕方も丁寧。そして上巻から下巻への超ロングパスも奇麗にきっちりと回収されている。
巻末の参考文献の量を見て、まあ、絶句しました。半端ない覚悟でこの作品に望まれた太田愛さんの心意気をそこに見た思いです。
いつかぜったいに再読間違いなしの本書と言い切れます。
鑓水たちにはまたいつかお目にかかりたいものですが、いかがでしょうか、太田さん。
ネットで調べてみたら、戦後の渋谷にたしかに存在していたんですね、ひばり号。写真が上がっていました。
◆私の覚書◆
下巻
p42
死んだ仲間の時間は若いままで止まってる。生き残った人間は歳を取って、仕事や家庭を持って、白髪ができて、お祖父ちゃんと呼ばれるようになって。あの老人たちが死んだ仲間と一緒に歌える歌は軍歌だけなんだと思うと、あれもひとつの鎮魂の形なんだと思えるようになった。
p44
海軍将校だった鑓水の祖父は、時枝や正光、白虎、松林たちと戦ったのだと思った。正光秀雄が生きた時代は、鑓水にとって教科書の中の歴史ではなく、祖母を通して直接鑓水の現在に繋がっているのだ。
p451
そもそも言論の自由ってのは、為政者の側が国民に保障するものであって、あちら様が振り回すもんじゃないでしょうが。
===データベース===
生放送に映った不審死と公安警察官失踪の真相とは?感動のサスペンス巨編!
白昼、老人が渋谷のスクランブル交差点で何もない空を指さして絶命した。正光秀雄96歳。死の間際、正光はあの空に何を見ていたのか。それを突き止めれば一千万円の報酬を支払う。興信所を営む鑓水と修司のもとに不可解な依頼が舞い込む。そして老人が死んだ同じ日、ひとりの公安警察官が忽然と姿を消した。その捜索を極秘裏に命じられる停職中の刑事・相馬。廃屋に残された夥しい血痕、老人のポケットから見つかった大手テレビ局社長の名刺、遠い過去から届いた一枚の葉書、そして闇の中の孔雀……。二つの事件がひとつに結ばれた先には、社会を一変させる犯罪が仕組まれていた!? 鑓水、修司、相馬の三人が最大の謎に挑む。感動のクライムサスペンス巨編!
この書評へのコメント