魔法の世界オーリエラントの新作です。
シリーズの最初の作品である「夜の写本師」から千年以上さかのぼった時代の話だが、国が興亡するくらいで技術が発達していくわけでもない。
いろんな形の魔法が出てくる世界なんだというのだけわかっていれば、単品でも楽しめるのではないかと思う。
ただその中で記憶に残るのとそんな話もあったと思う作品があるのは登場人物の個性の違いだろうか。
今回の主人公は、夜の写本師である父母と叔父を持つヴァニパスだ。
ヴァニパス自身は夜の写本師となれるには「闇が足りない」と言われていたが、護符を作ることができた。
ヴァニパスが住む村は馬の名産地で、馬に足が速くなるようにとか頑健であるように、物おじしない精神力を持つようにといった護符をつけるのがヴァニパスの仕事だ。
この護符の効力は絶大で、護符のために馬の値段は三割増しにできるという。
仕事は順調だったが、妻を病で失い残されたひとり息子が旅の途中で死んだという知らせを聞いてから、ヴァニパスの心は悲嘆を抱えつつ淡々と日々の仕事をこなしていく状態だ。
そんなある日、父母から送られた「夜色表紙」という薄い冊子に人生訓のような一文がページごとに書かれた本がなくなっていることに気づく。
旅に出た息子が持っていったのかもしれないと思いながら、強盗に襲われて死んだとされる息子の行方が気になるようになり。
帰ってこないということは死んだのだろうと思っていた息子が生きているかもしれないという小さな希望を胸に、ヴァニパスは夜色表紙の本に導かれるかのように旅に出る。
アナザーストーリーとして森林監督官という仕事の人たちのことが語られます。
その森林監督官の娘だったコルネリアは、仲の良い幼馴染はいたが恋人という一歩を踏み出す前に町の貴族に買われるように嫁に行った。
だが正妻がいて自分は子供を産むための妾だったということに気づき、しかも産まれた子供も取り上げられた上に死んでしまい、魔女だった正妻に馬に変えられてしまうというアラビアンナイトのような話が繰り広げられる。
夜の間だけ人間に戻れるコルネリアの話と、ヴァニパスの旅路が交互に語られます。
そしてヴァニパスは旅のなかで闇を宿し、新たに魔術師としての一歩を踏み出す。
シンプルに楽しめるお話でした。
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