風竜胆さん
レビュアー:
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表題作はとてもロマンチックなのですが、他の収録作品で、作者および訳者に電気の知識がないことにイラつきましたw
「ビブリア古書堂の事件手帳」(三上延)で取り上げられて人気が出た、「たんぽぽぽ娘」表題作とした短編集「たんぽぽ娘 (奇想コレクション) 」(ロバート・F・ヤング/伊藤典夫編:河出書房新社)。収録されているのは、全部で13の短編。
表題作の「たんぽぽ娘」は、収められている作品群の中でもとりわけロマンチックな作品だ。中年男と未来からやってきた少女とのロマンスを描いたものだ。中年男のマークは、妻アンの留守中に、丘の上でたんぽぽ色の髪の毛をした若い娘を目撃する。ジュリーと名乗ったその少女は、父親が作ったタイムマシンに乗って、未来からやってきたという。年齢差にも関わらずその少女に魅かれたマークは、毎日少女に会いに丘を登った。
ある日、少女の父親が亡くなり、タイムマシンもあと1回稼働できるかどうかとだいう。少女は、来られなかったときのために「あなたを愛しています」と言い残して未来に帰り2度と戻ってはこなかった。
「おとといは兎を見たわ、きのうは鹿、今日はあなた」
ジュリーがマークに逢ったときに言った言葉だ。若くて可愛らしい娘に、こんなことを言われたら、世のおじさんたちは、胸キュンになってしまうに違いない。しかし、マークがジュリーに魅かれたのは、ジュリーが若くて可愛らしいからでも、胸キュンになる科白を聞かされたからでもないだろう。
実は、このロマンス、タイムマシンというガジェットをうまく使うことによって、とっくに成就していたのである。マークは、偶然にも妻のスーツケースの中から、ジュリーと初めて会ったときに、彼女が着ていた白いドレスを見つけた。はっきりとは書かないが、そういうことだったのである。
もちろん妻は、自分の留守中に夫がジュリーに逢って恋に落ちることを知っていた。それでは、なぜ彼女は、自分のことを打ち明けなかったのだろうか。何を恐れていたのか。彼女が恐れていたのは、決して、夫が若いジュリーと恋に落ちることではなかったのだろう。彼女が恐れていたのは、自分が歳をとってしまったということを、夫に認識されることだったのではないのか。
マークの妻に対する気持ちは、初めて会った時からずっと変わってはいない。もちろん、人の容姿は歳月と共に変わっていく。しかし、彼にとっての妻は、常にその時々の妻だったのである。だからこそ、マークは、今現在の妻と異なる容姿を持ったジュリーの正体に気が付かなかったのだし、彼女に惹かれたのも、もちろん妻の若い頃の姿だったからだろう。この物語は、決して中年男が、可愛らしい娘によろめくだけの話ではないのだ。ヤングの書く物語は、オチが結構分かりにくいし、実際よく分からないようなオチもある。しかし、それにも拘わらず、この物語のロマンチックさは、この短編集の中でも群を抜いている。
この他、あの世とこの世を跨いだロマンスを描いた「河を下る旅」や、博物館の補助学芸員が示した赤字展示スペースの驚くような解決策を描いた「エミリーと不滅の詩人たち」など12編を収録。
ひとつ気になったのは、「特急列車が遅れた日」という作品の中に、列車の制動手が「16ボルトの電流に感電」(p21)して命を落としたという場面があったこと。16ボルトで人は死なないと思うが、こちらの方は、最後まで読んでオチが分かった。しかし16ボルトの「電流」というのはいただけない。「電圧」と「電流」の区別は、中学校レベルの理科の守備範囲である。最近、こういった電気に関する無知が小説の中にあまりにも多く見つかるので、つい苛立ってしまう。
○その他のヤング作品
・時が新しかったころ
○その他、関係者に電気の知識がないことにイラッとした作品
・ドS刑事 三つ子の魂百まで殺人事件
・悪女は自殺しない
・ミレニアム2 火と戯れる女 (上下巻)
・死を歌う孤島
表題作の「たんぽぽ娘」は、収められている作品群の中でもとりわけロマンチックな作品だ。中年男と未来からやってきた少女とのロマンスを描いたものだ。中年男のマークは、妻アンの留守中に、丘の上でたんぽぽ色の髪の毛をした若い娘を目撃する。ジュリーと名乗ったその少女は、父親が作ったタイムマシンに乗って、未来からやってきたという。年齢差にも関わらずその少女に魅かれたマークは、毎日少女に会いに丘を登った。
ある日、少女の父親が亡くなり、タイムマシンもあと1回稼働できるかどうかとだいう。少女は、来られなかったときのために「あなたを愛しています」と言い残して未来に帰り2度と戻ってはこなかった。
「おとといは兎を見たわ、きのうは鹿、今日はあなた」
ジュリーがマークに逢ったときに言った言葉だ。若くて可愛らしい娘に、こんなことを言われたら、世のおじさんたちは、胸キュンになってしまうに違いない。しかし、マークがジュリーに魅かれたのは、ジュリーが若くて可愛らしいからでも、胸キュンになる科白を聞かされたからでもないだろう。
実は、このロマンス、タイムマシンというガジェットをうまく使うことによって、とっくに成就していたのである。マークは、偶然にも妻のスーツケースの中から、ジュリーと初めて会ったときに、彼女が着ていた白いドレスを見つけた。はっきりとは書かないが、そういうことだったのである。
もちろん妻は、自分の留守中に夫がジュリーに逢って恋に落ちることを知っていた。それでは、なぜ彼女は、自分のことを打ち明けなかったのだろうか。何を恐れていたのか。彼女が恐れていたのは、決して、夫が若いジュリーと恋に落ちることではなかったのだろう。彼女が恐れていたのは、自分が歳をとってしまったということを、夫に認識されることだったのではないのか。
マークの妻に対する気持ちは、初めて会った時からずっと変わってはいない。もちろん、人の容姿は歳月と共に変わっていく。しかし、彼にとっての妻は、常にその時々の妻だったのである。だからこそ、マークは、今現在の妻と異なる容姿を持ったジュリーの正体に気が付かなかったのだし、彼女に惹かれたのも、もちろん妻の若い頃の姿だったからだろう。この物語は、決して中年男が、可愛らしい娘によろめくだけの話ではないのだ。ヤングの書く物語は、オチが結構分かりにくいし、実際よく分からないようなオチもある。しかし、それにも拘わらず、この物語のロマンチックさは、この短編集の中でも群を抜いている。
この他、あの世とこの世を跨いだロマンスを描いた「河を下る旅」や、博物館の補助学芸員が示した赤字展示スペースの驚くような解決策を描いた「エミリーと不滅の詩人たち」など12編を収録。
ひとつ気になったのは、「特急列車が遅れた日」という作品の中に、列車の制動手が「16ボルトの電流に感電」(p21)して命を落としたという場面があったこと。16ボルトで人は死なないと思うが、こちらの方は、最後まで読んでオチが分かった。しかし16ボルトの「電流」というのはいただけない。「電圧」と「電流」の区別は、中学校レベルの理科の守備範囲である。最近、こういった電気に関する無知が小説の中にあまりにも多く見つかるので、つい苛立ってしまう。
○その他のヤング作品
・時が新しかったころ
○その他、関係者に電気の知識がないことにイラッとした作品
・ドS刑事 三つ子の魂百まで殺人事件
・悪女は自殺しない
・ミレニアム2 火と戯れる女 (上下巻)
・死を歌う孤島
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京大卒、京大大学院修士です、
一昨年は2月に腎盂炎、6月に全身発疹と散々な1年でした。幸いどちらも、現在は完治しておりますが、皆様も健康にはお気をつけください。goo関係はサービス終了につき順次閉鎖します。
この書評へのコメント
- 風竜胆2015-08-06 10:57
ひとつ前の書評は、「Newtonの 2015年07月号」になります。
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- 出版社:
- ページ数:376
- ISBN:9784309622071
- 発売日:2013年05月25日
- 価格:1995円
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