来年には映画化が決定している、柳広司さんの「ジョーカー・ゲーム」シリーズの第一作目。
昭和十二年秋、結城中佐発案のスパイ養成学校「D機関」が陸軍内に極秘裏に設立された。「D機関」に所属する若者達には精神と肉体の能力の極限を要求される訓練と、「死ぬな、殺すな、とらわれるな」の戒律が叩き込まれる。士官学校ではなく一般大学の卒業生から構成され、スパイという「日本古来の武士道」に反する「D機関」に反発の声が上がるものの、彼らは結城中佐の下で諜報戦の成果を上げてゆく…という話。
柳広司さんの作品は「吾輩はシャーロック・ホームズである」以来二作目となるが、推理物以外も書くのか、と興味を持ち、本作を手に取った。本作品では「D機関」の暗躍が全部で5本の短編から描かれており、一編ずつのボリュームが少なく、さらっと読むことができる作品となっている。
「スパイ」という言葉から「007」シリーズや「Mission Impossible」シリーズなどの派手なアクションものを想像しがちだが、この作品の「スパイ」はその対極の存在である。本質を「目立たないこと」とし、「存在を知られるのは任務に失敗したとき」と考える彼らは静かに、的確に任務を果たしていく。「自分ならこの程度のことは出来なければならない」という自負心を持ち、頭脳と身体能力を極限まで駆使して任務に当たる彼らの姿は、とてもかっこいい。そして彼らを指導する結城中佐の存在についても、多くは語られていないが、まだまだ続きが気になるところである。
いい意味で「スパイ」の描かれ方を裏切られた、そんな作品。
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