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「翠雨の人」ヒロインの科学者・猿橋勝子の心に響いたという名著。雪の結晶の話。
1938年の著作で、世界で初めて雪の結晶を人工的に作った科学者がしたためた、随筆のように研究や実験を解説した本。一般向けという意図で書いたとのことで、読みやすい。ロングセラーだそうで、手にしたのは1994年の新装版。
伊与原新「翠雨の人」の主人公、第五福竜丸の死の灰を分析した科学者・猿橋勝子は雨が降ると飽かず空を見上げる少女で、長じて気象研究の道に進んでからもこの本を愛読していたという。何らかの科学の本は定期的に読みたくなるのもあり、さっそく借りてきた。
第一話で北国の雪の実害、いかにそれが理解されにくいかについて述べ、第二話では雪の世界的な研究の現状を解説する。そして第三話、厳寒の季節に、札幌と十勝岳でのいわばフィールドワーク。降る雪の結晶をひたすら顕微鏡で観察し、分類する。
よく知られる六花型は正六角形のそれぞれの角に向かって枝が放射状に伸びる羊歯状のタイプ。真ん中に六角形や星型の角板が入るものもある。これは湿度がやや高い時に見られるようで、日本の雪には多い結晶だとか。それでも全体からしたら少数で、枝や角板が立体型になったり、半分だけ、もしくはX型などに発達したり、角錐や砲弾型、針状の組み合わせ、不定形など多数ある。
理系の本というのはしばしば、というか頻繁に専門的な記述が入るので、理解できない時はサラッと読み流す。でもおもしろさ、分かりやすさに、文と図と白黒の当時の顕微鏡写真を見比べつつ理解しようと読んでしまって時間がかかった。もう少しどれがどの写真か明快に示してほしかった。まあもう90年くらい前の研究、写真、著作なので仕方ないといえばそうかと。
いよいよ第四話では人工雪の実験に入っていく。
雪は氷でなく、氷の結晶で、中央にはなんらかの核がある。人工雪を作るにはその核を細い繊維のようなものに付着させる必要がある。試行錯誤の結果、身の回りの品では兎の腹の毛が最適ということを発見した。繊維に瘤があることがその理由のようだ。兎の毛皮のコートからの発見は、世界初を実現した。
気温と用いる水の温度を変えて、どのような結晶ができるかを調べていった記録には惹きつけられる。身の回りの知識であるし、天空高く、地上からでは窺い知れない気象条件から生み出される雪の謎がそこから解けるような興奮を覚える。なにか、もちろん比較するのもスミマセンだけども、少し、ほんのわずか、雨の降る天を見上げる少女だった猿橋勝子がこの本を読んでる時の気持ちにシンクロできているような気分になった。
「雪の結晶は、天から送られた手紙であるということが出来る。そしてその中の文句は、結晶の形及び模様という暗号で描かれているのである」カッコよすぎる。
調べていて、出身である石川県加賀市に中谷宇吉郎雪の記念館があると知った。行ってみたい!南極には中谷諸島があり、小惑星にもウキチロウと名付けられているものがあるとか。偉人の1人を覚えた。
楽しい読書でした。
伊与原新「翠雨の人」の主人公、第五福竜丸の死の灰を分析した科学者・猿橋勝子は雨が降ると飽かず空を見上げる少女で、長じて気象研究の道に進んでからもこの本を愛読していたという。何らかの科学の本は定期的に読みたくなるのもあり、さっそく借りてきた。
第一話で北国の雪の実害、いかにそれが理解されにくいかについて述べ、第二話では雪の世界的な研究の現状を解説する。そして第三話、厳寒の季節に、札幌と十勝岳でのいわばフィールドワーク。降る雪の結晶をひたすら顕微鏡で観察し、分類する。
よく知られる六花型は正六角形のそれぞれの角に向かって枝が放射状に伸びる羊歯状のタイプ。真ん中に六角形や星型の角板が入るものもある。これは湿度がやや高い時に見られるようで、日本の雪には多い結晶だとか。それでも全体からしたら少数で、枝や角板が立体型になったり、半分だけ、もしくはX型などに発達したり、角錐や砲弾型、針状の組み合わせ、不定形など多数ある。
理系の本というのはしばしば、というか頻繁に専門的な記述が入るので、理解できない時はサラッと読み流す。でもおもしろさ、分かりやすさに、文と図と白黒の当時の顕微鏡写真を見比べつつ理解しようと読んでしまって時間がかかった。もう少しどれがどの写真か明快に示してほしかった。まあもう90年くらい前の研究、写真、著作なので仕方ないといえばそうかと。
いよいよ第四話では人工雪の実験に入っていく。
雪は氷でなく、氷の結晶で、中央にはなんらかの核がある。人工雪を作るにはその核を細い繊維のようなものに付着させる必要がある。試行錯誤の結果、身の回りの品では兎の腹の毛が最適ということを発見した。繊維に瘤があることがその理由のようだ。兎の毛皮のコートからの発見は、世界初を実現した。
気温と用いる水の温度を変えて、どのような結晶ができるかを調べていった記録には惹きつけられる。身の回りの知識であるし、天空高く、地上からでは窺い知れない気象条件から生み出される雪の謎がそこから解けるような興奮を覚える。なにか、もちろん比較するのもスミマセンだけども、少し、ほんのわずか、雨の降る天を見上げる少女だった猿橋勝子がこの本を読んでる時の気持ちにシンクロできているような気分になった。
「雪の結晶は、天から送られた手紙であるということが出来る。そしてその中の文句は、結晶の形及び模様という暗号で描かれているのである」カッコよすぎる。
調べていて、出身である石川県加賀市に中谷宇吉郎雪の記念館があると知った。行ってみたい!南極には中谷諸島があり、小惑星にもウキチロウと名付けられているものがあるとか。偉人の1人を覚えた。
楽しい読書でした。
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読む本の傾向は、女子系だと言われたことがあります。シャーロッキアン、アヤツジスト、北村カオリスタ。シェイクスピア、川端康成、宮沢賢治に最近ちょっと泉鏡花。アート、クラシック、ミステリ、宇宙もの、神代・飛鳥奈良万葉・平安ときて源氏物語、スポーツもの、ちょいホラーを読みます。海外の名作をもう少し読むこと。いまの密かな目標です。
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- 出版社:岩波書店
- ページ数:181
- ISBN:9784003112427
- 発売日:1994年10月01日
- 価格:525円
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