わらの女 【新版】




こういうことは書いてはいけないのだが、本作はサプライズエンディングが待っている。それは、ある意味、ミステリ作家がただ一度だけ使うことのできる捨て身のサプライズエンディングとも言えるものだ。
このところミステリでは「昔読んで印象深かった作品を改めて読み直す」ことをしていて、昔旧訳で読んだこの…

本が好き! 1級
書評数:594 件
得票数:10324 票
「ブクレコ」からの漂流者。「ブクレコ」ではMasahiroTakazawaという名でレビューを書いていた。今後は新しい本を次々に読む、というより、過去に読んだ本の再読、精読にシフトしていきたいと思っている。
職業はキネシオロジー、クラニオ、鍼灸などを行う治療家で、そちらのHPは→https://sokyudo.sakura.ne.jp




こういうことは書いてはいけないのだが、本作はサプライズエンディングが待っている。それは、ある意味、ミステリ作家がただ一度だけ使うことのできる捨て身のサプライズエンディングとも言えるものだ。
このところミステリでは「昔読んで印象深かった作品を改めて読み直す」ことをしていて、昔旧訳で読んだこの…




中国人作家、残雪による『暗夜』ほかの中短篇と、ヴェトナム人作家、バオ・ニンによる長篇『戦争の悲しみ』の合本。この2人の作品を合本にしたのは、両者の作品がある種の「不条理」を描いたものだったからか。
池澤夏樹の個人編集による「世界文学全集」の1冊で、中国人作家、残雪による『暗夜』ほかの中短篇と、ヴェ…




多様体論の入門的な内容を扱った、定評ある教科書/参考書。本書は微分位相幾何学的な立場から書かれた多様体入門で、ベクトルバンドル(ベクトル束)の概念が前面に押し出されている。
多様体論は多様体という一種の図形を扱うことから、大学数学では一般に幾何学の中で教えられるが、多様体論…




『鉄の門』のような強烈なサスペンスとは無縁だが、読み終えた後、冒頭に掲げられたハウスマンの詩とともに得体の知れない感情が胸の中に残るという意味で、やはり傑作と呼べる作品だろう。
わたしの心に、殺す風が 遠くの国から吹いてくる。 なんだろう、あの思い出の青い丘は、 あ…



周木律の書く数学者たちによる神がかった会話は、勘違い野郎たちによるスベりまくった不条理劇のようでしかないが、そういう芸風だと思えば、それはそれで味があると言えなくもない。
前作 『教会堂の殺人』 で大事な人を失い、悲嘆に暮れる宮司百合子のもとに姉、善知鳥神(うとう かみ)…




本作はその最後で、チリの黒歴史とも言うべき9・11軍事クーデターをもやさしく包み込んでみせる。それは単純なリアリズムでもマジックでもない、マジック・リアリズムだからこそできたことなのかもしれない。
池澤夏樹の個人編集による「世界文学全集」の1冊、イザベル・アジェンデの『精霊たちの家』は、一族3代に…




可能なら、同じ「分身」をテーマとするヘレン・マクロイの『暗い鏡のなかで』と読み比べてみてほしい。多分、英米の古典的なパズラーに対してフランス・ミステリがどのような構造を持っているかが分かるだろう。
パリの広告代理店に勤めるOL、ダニー・ロンゴは、社長一家を空港まで送り届けた後、突然思い立って、本来…



タイトルからは、家にまつわる怖い話を集めた短篇集のように見えるかもしれないが、実は古今東西の神話、民話、伝承から現代の小説、映画まで「家」という切り口で論じた、マジメな学術研究書。
今、家系が「来てる」のか?──といってもラーメン屋の話ではない。『黄色い家』だとか『変な家』だとか、…




トマス・H・クックのいわゆる〈記憶〉シリーズの1冊。果たして「チャタム校事件」とは何だったのか? そしてその事件でヘンリーは何をしたのか? 秘められたグロテスクな真相とそれがもたらしたものとは?
トマス・H・クックといえば、かついては文春文庫が力を入れて出していたが、 『ローラ・フェイとの最後の…




怪談、怪異譚を集めた連作ホラー短篇集。三津田信三の作品というのは多かれ少なかれそうだが、これも収録された短篇の内容も含めて、虚実のあわいを楽しむ本である。
三津田信三といえばミステリっぽいホラーとホラーっぽいミステリを書く作家だが、この『怪談のテープ起こし…




筆者が読者たちと分かち合いたいのは、刊行後百年近くも経った外国の哲学書を読むことが、現代の私たちの生きる世界の見え方を少しばかり変える力を持つという、そうした経験である。(「はじめに」より)
哲学書というのは大抵、簡単に読めるものではないが、中でもハイデガーの『存在と時間』は最難関の1つと言…



孤島で起こる連続殺人事件。だが、事件の舞台となる世界では連続殺人が起こることなど不可能なはずだった…。
『楽園とは探偵の不在なり』は斜線堂有紀による特殊設定ミステリである(一言追記しておくと、特殊設定ミス…





戸川昌子の1960年代後半から70年にかけての粒ぞろいの14篇を収めた短篇集。いずれもミステリから「トリック」や「意外な結末」を削ぎ落とした、「人間の性と生(と聖)」が横溢する異様な物語。
『くらげ色の蜜月』は戸川昌子の短篇集だが、収められているのはいずれ劣らぬ超ヘン小説である。とはいえ、…



横溝正史が作品中に示した謎解きに異議を唱えた本。どこを疑問視し、どういう結論を導いたか、気になる人は本書を読んでもらいたいが、古い本なので図書館によってはもう置いてないかもしれない。読むなら急げ!
先頃、NHK BSで放送された『犬神家の一族』が、犯人像について新たな解釈を提示した小林靖子の脚本で…





全編是(これ)トリックの怪物級ミステリ。言えることは1つだけ、ただ「読め」と。
これは全編是トリックの怪物級ミステリだ。だから粗筋の紹介もできない。言えることは1つだけ、ただ「読め…





倒叙形式のミステリだが、物語が非常によく練り上げられていて、予想を超える展開に読者は最後の1行まで作者に翻弄され続けるだろう。
第一章:張東昇は寧市の景勝地、三名山で、綿密な計画に基づいて義理の父母を転落死させる。大恋愛の末、婿…



小説仕立てのビジネス書。面白いのは、企業の戦略を取り上げる時、それを手放しで絶賛していないところだ。
小説仕立てのビジネス書、『戦略は「1杯のコーヒー」から学べ!』は、ロイヤル金融に入社して3年目の新町…



クリスマスを挟んで「ぼく」に起こった、悪夢を思わせる奇妙な出来事が語られる、かつてのフランス・ミステリの肌合いを強く感じさせる作品。
フレデリック・ダールの『夜のエレベーター』は、かつてのフランス・ミステリの肌合いを強く感じさせる作品…




思慮が足らず、ちょっとしたことでムカつき暴走する若者を描いた、ボアロー、ナルスジャックによるサスペンスの佳作。
新米の女性数学教師、エリアンヌ・シャトリエの授業を妨害したことで校長室に呼び出された高校生の悪ガキ2…




ローレンス・ブロックが名だたる作家たちに作品の推薦を依頼して編んだアンソロジー。ブロックが出した条件は、自分が書いた最も誇れる1篇と、自分が読んで最も羨望した1篇の計2篇を挙げてもらうことだった。
世にアンソロジーは数あれど、コンセプトの面白さという点では、この『巨匠の選択(Master's Ch…