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19世紀後半、男の妻に対する考え方はこのヘルメルが一般的なのだろうか?

人形の家 近代古典劇翻訳〈注釈付〉シリーズ【Kindle】
こういう演劇が19世紀の終わり近く(1879年)に作られ、上演されて、社会に衝撃を与えないわけはないだろう、とは思う。
実際、夫はもとより三人の子どもまでもおいて出ていくノーラ(またはノラ)が当時高まりつつあった女性の権利獲得運動を推進している方面からは大いに歓迎された一方で、その行為そのものは非難の対象ともなった(解説より p.179)。

演劇の歴史には全く疎いので、主要な登場人物が三人で、プラス二人ほどが舞台によく出るという人物構成や、全3幕の舞台が同じ場所で展開されるということが、当時としては奇異というか画期的だったのかは分からない。
が、それによってイプセンが描きたかったことがギュっと凝縮されて表されているようにも感じた。

弁護士(ヘルメル)の妻(ノーラ)が過去に法を犯すような行為をしていれば、そりゃいかんやろう、と普通はなる。
その事実を知ったヘルメルはノーラを罵倒するが、当事者たるクログスタからそれ(お金の借用)を取り消す手紙が来ると手のひら返しをヘルメルはする。
ヘルメルが病気の時に仕方なくやってしまったことなのに、とノーラは非を認めながらも夫であればなおさら情状酌量の姿勢をみせてくれてもいいはず。
けど、ヘルメルは自分の地位・名誉の方が大切。今まで蝶よ花よと可愛がってきたのも優れたダンナの奥さんは人形のように可愛くいればいい、くらいにしか思われてなかったのか? ノーラの怒りポイントはそこだ。

実際の舞台を観たことはない。脚本と詳細な注でこの演劇世界を初めて味わった。
多分、実際の舞台を観ると、さらに驚きとある種の衝撃を感じられるのだろうなぁ、と思いながら読んでいた。TVでもいいからやってくれないかなぁ。

なお、いつものことで恐縮だが、手塚治虫は『七色いんこ』でタイトルも「人形の家」という作品を描いている。しかしその内容はイプセンのそれとはどちらかと言えば逆。大女優を気取るノーラから離れて行くのは、夫のジミーばかりではない。それが読んだ時の衝撃だった。
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  • 掲載日:2026/05/02
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