街の小さな古本屋を舞台にしたコミック『本なら売るほど』(児島青)の2巻めに収められている
第9話「本の海の漂流者」は古本屋にとって「売れない本」として警戒すべき辞書を扱った話。
話の冒頭、全13巻にもなる大修館書店発行の『大漢和辞典』がどのようにして誕生したかが、手際よく描かれている。
この挿話の参考資料になっているのが、
『ことばの海へ雲にのって - 大漢和辞典をつくった諸橋轍次と鈴木一平』(作 岡本文良)。
大修館書店発行の『大漢和辞典』は通称「諸橋大漢和」と呼ばれている。
というのも、この辞典を編纂したのが著名な漢字学者、諸橋轍次という人物だから。
書名にでてくるもう一人の人物鈴木一平は、「良い漢和辞典を作りたい」と諸橋と共に
出版界での偉業をなすことになる大修館書店の創業者である。
この作品は小学生上級以上向けのノンフィクションシリーズの一冊になっていて、
なんといっても読みやすいのがいい。
だからといって、書かれている内容が子供向けの幼いものではなく、
大人の読者にも十分に満足させてくれるものになっている。
辞書作りの困難さは三浦しをんさんの『舟を編む』などいくつかの作品で知ることができるが、
「諸橋大漢和」の場合もそうで、諸橋さんの知識と根気、鈴木さんの熱意がなければきっと出来上がらなかっただろう。
コミック『本なら売るほど』で登場した「諸橋大漢和」はラスト、漢字大好きな青年に買い取られていく。
諸橋さんも鈴木さんも、天国で微笑んでいることだろう。
この書評へのコメント