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老人が年齢に抗いながら、ちょっと無理をして頑張る。そんなお話かと思っていたが少し違っていた。予想外に面白く。そして不覚にも毎話ちょっとだけ波ぐんでしまった。

  • 三匹のおっさん
  • by
  • 出版社:文藝春秋
三匹のおっさん
 水戸黄門的パターン。

 そう言えば国民の多くが、ある一定のパターンが思い浮かぶほど、あのテレビドラマの浸透率はすさまじい。きっと実際には見たことのない若い世代であっても、ある程度のイメージを抱くことが可能だろう。

 愛すべきワンパターン。そんな風にも言われがちだが、長年愛されるには、そのパターンの中にも視聴者の心をつかむポイントがあるように思える。悪者はあくまでも憎たらしいぐらいに悪く、そいつらに虐げられる弱者はどこまでも手を差し伸べるに相応しい。そこに現れる救い主は、一見それほどの力を持たぬようでありながら、最後の最後には悪者たちをひれ伏せる力を発揮する。ぐうの音も出ぬ程に。弱い者が強い者に反逆し、逆転勝利を得る爽快感。痛快さ。


 60歳となり定年退職を迎えたキヨさんは、ちゃんちゃんこなど着るのも御免だし、もちろん爺さん呼ばわりされるのももってのほか。呼ぶならせめて「おっさん」と呼べ。

 まだまだ隠居するには早いと、昔の悪ガキ三人で集まり、町内の困りごとを解決しようと立ち上がったおっさんたち。家族には内緒にするあたり、子供の頃のイタズラの延長のノリ。

 老人とまではいかなくても、60を超えれば危ないこともあるんじゃないか、そんな心配は無用。キヨさんは剣道、シゲさんは柔道の達人だし、一番身体が小さくて弱そうに見えるノリさんは、持ち前の技術で作った強力な電撃武器を所持。実は一番「アブナイ」。

 「俺達は地域限定の正義の味方」

 と、謙遜とも自慢とも取れる自称をする彼ら。しかし彼らの扱う困りごとは、実は結構深刻な気がする。ゆすり・たかり。詐欺。婦女暴行。動物虐待。警察沙汰になったりならなかったりなのは、決して彼ら自身が「裁く」立場にはなく、一線を引いた態度を取っているためだが、軽い調子で書かれているけれどその根底にある社会現象は軽くはない。

 周囲と疎遠になり、孤独となるのは老人ばかりではない。人とのつながり方を間違えた結果が起す事件は誰にもあり得るものだ。おっさん三人組の活躍は、そんな捻じれた社会不安の元凶を軽やかにそして痛快に解決する。

 初読みの作家さんであったが、予想を超える楽しさだった。おっさんたちの活躍の痛快さもそうだが、孫世代の二人の関係の進展も微笑ましく見ていたくなる。不覚にも毎話涙ぐんでしまう場面が用意されているのも憎い。さっそく続編を注文。

【読了日2026年4月19日】
  • 掲載日:2026/04/19
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