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献本書評
活字中毒
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宗教学者で民藝運動の柳宗悦についてと言えばお硬い話かと構えてしまうが、若い女性が主人公の朝ドラのような爽やかな小説

※ネタバレ注意! 以下の文には結末や犯人など重要な内容が含まれている場合があります。

関東大震災で父を失い京都の柳邸で住み込みの女中働きを始めた松川サチ。
まさかその家があの柳宗悦の屋敷だとは!
女学校で学び、兄の影響で白樺を読んでいたサチにとっては雲上人のような相手だった。
だがその実態は…

植民地支配に苦言を呈するような自由な言論人であると同時に、有望な若手陶芸家の河井寛次郎や濱田庄司らとともに、芸術品ではない生活用品である下手物の中にしっかりとした美しさを見出し民藝と名付ける活動家でもあった。
稼ぐことはせずに出費するばかりで生活力のない宗悦。
そんな夫を支えるのは本場ドイツでも認められた当時の日本を代表するアルト歌手である夫人の兼子だった。
学校で音楽講師をしたり個人教師やリサイタルと金を稼ぐがとても宗悦の浪費には追いつかない。
高価なものではない民藝品とは言え、引っ越しの時に貨車ニ十台にも及ぶほどの荷物を個人で贖うのは莫大なものであったはずだ。

だが大正の時代に妻の芸術活動に理解を示す夫も珍しかったであろう。
この夫婦はとてもお似合いの理想のカップルなのであった。

兼子が37歳にして初めてドイツに留学したいと言ったときの宗悦の申し様は我儘な子供の癇性のようで読んでいて腹が立つが、自身が相続した結構な財産を兼子の実家の借金の返済にあててほとんど失ったときにも、自分が稼いだ金ではないとまるで頓着しなかったのを知ると、一概に無邪気な宗悦を責める気にもならなくなる。

民藝運動として若手の作家を集めた村(武者小路の新しき村のような)を作ったり、美術館の設立を目指したりやりたいことはいくらでもあった。

家庭をなくしたサチにとって柳家は自分で掴み取った新しい家だった。
家政を守るために献立に工夫を凝らすさまが読んでいてとても美味しそう。
一方この時代の洗濯はいかにも大変そう。
このご家庭に一生お仕えしたいと思う。
ちょっと捻くれた奥様付きのばあやに扱かれたりもするが、可愛い坊っちゃんたちに懐かれもする。
縁のある八百屋の息子の帝大生との淡いロマンスもある。

だが、行方不明だった兄が危篤状態で有ることを知らされ、柳家を出て東京に看病に向かい、そのまま柳家との縁が切れる…

しかし最終章での奇遇な再会で、サチの出生が知らされる。
時代を強かに健やかに歩むサチの姿に温かい感動を覚えずにいられない。

なお、ぐろりあそさえてとは栄光ある仲間たちと言う意味で柳や河井、濱田らを現すのと同時に、柳宗悦が『工藝の道』を出した出版社の名前でもある
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活字中毒
活字中毒 さん本が好き!1級(書評数:67 件)

主に新刊国内ミステリー。ベストセラーよりも新人賞

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