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篠田くらげ
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まず……日本共産党とは……何か
日本共産党とは何か。

「平和」「福祉」を唱えつつ、暴力革命を企んでいるとして依然として国に警戒されているのではないか。
大衆の味方であるはずが、実態はインテリ層が大衆を指導・動員しているのではないか。
民主主義を守ると言うが、党内は全然民主的ではなく、長期にわたり代表が変わらないのはなぜか。
そもそも革命を目指しているはずの政党が護憲派なのは何なのか。

本書は日本共産党の歴史をまとめたものである。共産主義の理論を解説するものではない。序章として各国共産党との比較、終章として現在の問題と今後の展望が入っている。

まず、日本共産党はかなり時代によって政策や姿勢をかなり変えている。党としては「一貫して平和を求めてきた」と言いたいかもしれないが、実際の姿は社会の変化に合わせてかなり変化しているのだ。そもそも100年の歴史がある政党が一貫し続けることはほぼ不可能であろうし、変わらないことが望ましいとも言えない。

もともと日本共産党は日本の社会主義とロシア革命の影響を受けて作られたコミンテルンの支部であった。注目すべきは、このころから既に「大衆に基盤を置くか、理論(理論家)に基盤を置くか」の論争があることだ。この論争ずっとやってるんだな。

また天皇制打倒を目指してきた印象があったが、党幹部でさえ全員が天皇制打倒に賛同してきたわけではないらしい。コミンテルンが天皇制打倒を求めるのはソ連成立の経緯から見て当然であろうが、戦前の日本で天皇制打倒を訴えると確実に政府に弾圧される上、大衆からの支持も得られない。

平等を実現するために君主制廃止を目指しているはずなのに他ならぬ民衆からそれが支持されないのは皮肉であるが、そういうものなんだろうな。ちなみに現在の日本共産党は天皇制廃止を唱えていない。

戦前の政府は特高警察や思想検事を使い、日本共産党を激しく弾圧した。拷問やスパイが日常的に用いられ、党内で疑心暗鬼が広がり日本共産党は壊滅していく。

こう見ていると国家がその気になればひとつの政党を壊滅させることはさほど難しくないように思われる。「あいつは逮捕されて転向したかもしれない」「あいつが逮捕されないのはスパイだからじゃないか?」とお互いに考えていたら政治活動どころではない。うっかりスパイに情報を渡したら自分も仲間も拷問されるならなおさらである。

日本国憲法が作られるとき、日本共産党はこれに反対した。理由はいくつかあるが「天皇制を温存している」「三権分立ではなく、一院制の議会に権力を集中させるべきだ」「自衛戦争は認めるべきだ」などである。現在の日本共産党は護憲を掲げるが、これは1990年代半ばからだという。

1949年、中華人民共和国が成立する。中国が共産化したわけだが、こうなると「ソ連の考えを重視するか中国の考えを重視するか、それともどちらでもない第三の道を選ぶか」を考えざるを得ない。かなり厳しい時代であったが、結果的にはこの迷いが日本共産党の自主独立路線を準備したように見えた。

平和路線に移行したことで国民の支持を得て選挙でかなり躍進した時代もあるものの、近年の議席数はあまりふるわないように思える。とはいえ政府の腐敗を追及したり、野党共闘をリードする点で大きな役割を果たしている。

本書を踏まえて日本共産党について思うことを書いておく。ここからは書評というより私見なので興味のない方はここまでで大丈夫です。

まず武力革命を起こす可能性はほぼないように思われる。なにしろ社会主義革命自体、遠い未来に先送りしており、社会主義革命のために武力行使を選ぶことはないであろう。仮に実行したとしても成功する可能性はほぼない。「共産党は危険だ。あいつらは日本を独裁国家にしようとしている」と心配するあまり国民が「共産党政権よりはいいんだから生活が苦しくなっても我慢しよう」と考えるなら本末転倒に思える。

しかし日本共産党が維持する民主集中制は到底支持できない。本書によると民主集中制の根拠は「共産主義は正しいのだから、分派が存在するなら、分派は端的に間違っている」から「政党は普通、執行部の方針に従うものだから」に変わっているようだが、私としては理解しがたい。まず政治とはどちらが正しいかを決める手続ではなく、落としどころを決める手続である。他の政党は党内民主主義が日本共産党より進んでいるが、それにより他党が政党として機能しなくなっているとは考えられない。党員ですら委員長選挙の直接的な投票権を持たない政党がいったいどうやって日本の民主主義を守ることができるのだろう。

そして根本的に、共産主義によりつつ独裁を防ぎ人権を守り国民を豊かにした国家は果たしてあるのか。ないのではないか。「あいつらは共産主義とは似ても似つかない失敗例です。われわれは違います」と日本共産党は言うかもしれないが、じゃあどう違うのか。

私は権力分立を大事に思っているので、権力分立を守れない権力者が暴走せずにいられるとは信じられない。そして権力分立を厭い民主集中制を守っている限り、日本共産党は政権を担うべきではないと思う。「正しい権力は集中しているほど効率的だ」との思い上がりが効率的に基本的人権を侵害してきたのだ。

しかし。だとすれば暴走する資本主義にはどのように歯止めをかければよいのか。「弱肉強食ではない社会像はありえないのか」という声に政治はどう答えるのか。それを問い続け訴え続ける限り、日本共産党には存在意義があることになろう。

本書を読んで自分が日本共産党の歴史についてほとんど何も知らなかったことがわかった。日本共産党の歴史は別角度から見た近代史であり、本書は日本共産党に好意的な方にも批判的な方にもおすすめできる一冊だ。
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篠田くらげ
篠田くらげ さん本が好き!1級(書評数:498 件)

小説、歴史、哲学、短歌。

それらを読んだり居眠りしたりしながらふらふら生きています。最近はノンフィクションが多め。

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