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〈大崩壊〉後のロンドンは、ことばが信用を失い、音がその位置を占めるようになっていた。ことばが信用を失ったことと関係するのだろうか、人々は記憶することが困難な状況に陥っていた。そんな世界の物語。
〈大崩壊〉が発生し、生活システムも環境も大きく転換してしまったロンドンが舞台。
人々はオーダーの鳴鐘に従い日々を生活していた。
鳴鐘の一体化ストーリー、それはある種の洗脳と言える。
この現実世界とは大きく転換してしまった世界での物語だ。
主人公のサイモンはエセックスの農場からロンドンに移り住んできたが、たまたま川でレディ(銀)を拾い上げたことでリューシャンとブレナン、エーベルと知り合うことに。
彼らはファイヴ・ローヴァーのパクトで、日々レディを拾い集めてさばくことで生き抜いていた。
やがて、クレアが加わり、5人での生活が当たり前になっていた。
この世界、人々は記憶することができなくなっていた。
文字もその機能を果たさなくなり、今や人々は文字を文字として認識することすらなくなっていた。
ことばも信用を失っていた。
その代わり音が信用されるようになっていた。
一部の人々は物品を介して記憶を取り戻すことができた。
記憶袋に大切な物品を入れて持ち歩き、“記録物品を手放すな”が合言葉のようになっていた。
そして、サイモンはさらなる能力を持っていた。
本人も知らぬ間に・・・
レディを探すためにサイモンたちは地下トンネルに潜入する。
リューシャンの旋律に呼応するレディの声を探索し、旋律を紐解きながら地上へと帰っていく。
そう、リューシャンにも特殊な能力が備わっていたのだ。
それは彼の出自・経歴とも関係する。
そして、リューシャンはサイモンの本当の能力に興味を示していた。
世界の秩序を大きく覆すために・・・
舞台は〈大崩壊〉後のロンドンという設定。
もちろん、現在のロンドンとはまったくの別世界だ。
しかし、現実世界も盤石なものとは言い難い。
日々の生活を送っていると、目の前に広がる光景が当たり前のものとして受け止めてしまう。
それはちょっとしたきっかけで崩れ去る可能性を秘めている。
たとえば、自然災害は毎年のようなどこかを襲うし、さらにテロや戦争も考えられる。
日本の場合、太平洋戦争により大きな転換を余儀なくされた。
生活環境だけではなく、政治システムも景観すらも大きく転換させられてしまい、もはや同じ国とは言い難いほどの変化を遂げてしまった。
それでもその環境下での生活を続ける必要がある。
〈大崩壊〉という設定は、ロンドンであってをロンドンでない世界を作り出すための必要不可欠なものだったと思う。
それほど舞台をロンドンにすることに強い拘りがあったのだろう。
本書では、記憶がテーマの一つになっている。
人々は記憶の維持が難しくなっており、その維持のために物品に頼らざるを得ない。
まるで認知症がロンドンを覆っているような状況だ。
物品を介して記憶を取り戻すことが大きく能力となり、それが危険視されるような世界観。
記憶することがなんということもないという認識で暮らしている身からすると恐ろしい世界だが、現実世界でもそんな環境下で生きている人がいるということを改めて思い、身震いする思いだった。
それは、いつかの自分の姿かもしれない。
当たり前を当たり前として受け止めることができることの大事さ、そして当たり前に甘んじない姿勢の大切さを教えられた1冊だった。
人々はオーダーの鳴鐘に従い日々を生活していた。
鳴鐘の一体化ストーリー、それはある種の洗脳と言える。
この現実世界とは大きく転換してしまった世界での物語だ。
主人公のサイモンはエセックスの農場からロンドンに移り住んできたが、たまたま川でレディ(銀)を拾い上げたことでリューシャンとブレナン、エーベルと知り合うことに。
彼らはファイヴ・ローヴァーのパクトで、日々レディを拾い集めてさばくことで生き抜いていた。
やがて、クレアが加わり、5人での生活が当たり前になっていた。
この世界、人々は記憶することができなくなっていた。
文字もその機能を果たさなくなり、今や人々は文字を文字として認識することすらなくなっていた。
ことばも信用を失っていた。
その代わり音が信用されるようになっていた。
一部の人々は物品を介して記憶を取り戻すことができた。
記憶袋に大切な物品を入れて持ち歩き、“記録物品を手放すな”が合言葉のようになっていた。
そして、サイモンはさらなる能力を持っていた。
本人も知らぬ間に・・・
レディを探すためにサイモンたちは地下トンネルに潜入する。
リューシャンの旋律に呼応するレディの声を探索し、旋律を紐解きながら地上へと帰っていく。
そう、リューシャンにも特殊な能力が備わっていたのだ。
それは彼の出自・経歴とも関係する。
そして、リューシャンはサイモンの本当の能力に興味を示していた。
世界の秩序を大きく覆すために・・・
舞台は〈大崩壊〉後のロンドンという設定。
もちろん、現在のロンドンとはまったくの別世界だ。
しかし、現実世界も盤石なものとは言い難い。
日々の生活を送っていると、目の前に広がる光景が当たり前のものとして受け止めてしまう。
それはちょっとしたきっかけで崩れ去る可能性を秘めている。
たとえば、自然災害は毎年のようなどこかを襲うし、さらにテロや戦争も考えられる。
日本の場合、太平洋戦争により大きな転換を余儀なくされた。
生活環境だけではなく、政治システムも景観すらも大きく転換させられてしまい、もはや同じ国とは言い難いほどの変化を遂げてしまった。
それでもその環境下での生活を続ける必要がある。
〈大崩壊〉という設定は、ロンドンであってをロンドンでない世界を作り出すための必要不可欠なものだったと思う。
それほど舞台をロンドンにすることに強い拘りがあったのだろう。
本書では、記憶がテーマの一つになっている。
人々は記憶の維持が難しくなっており、その維持のために物品に頼らざるを得ない。
まるで認知症がロンドンを覆っているような状況だ。
物品を介して記憶を取り戻すことが大きく能力となり、それが危険視されるような世界観。
記憶することがなんということもないという認識で暮らしている身からすると恐ろしい世界だが、現実世界でもそんな環境下で生きている人がいるということを改めて思い、身震いする思いだった。
それは、いつかの自分の姿かもしれない。
当たり前を当たり前として受け止めることができることの大事さ、そして当たり前に甘んじない姿勢の大切さを教えられた1冊だった。
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ここに参加するようになって、読書の幅が広がったように思います。
それでも、まだ偏り気味。
いろんな人の書評を参考に、もっと幅広い読書を楽しみたい!
この書評へのコメント

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- 出版社:東京創元社
- ページ数:416
- ISBN:9784488010843
- 発売日:2018年11月21日
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