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テーマ:「フランケンシュタイン」をみんなでゆっくり読んでいく会 前篇

フランケンシュタイン

テーマ主催者:

哀愁亭味楽

哀愁亭味楽 さん

登録日:2016年11月27日 12時18分

テーマの説明

メアリー・シェリーの名作「フランケンシュタイン」をみんなで読もうという企画です。

毎週日曜日に青空文庫の「フランケンシュタイン」のテキストをコピペして投稿します。皆様はそれを読んで、コメントの下のぶら下がりコメントに「ここ怖い!」とか「ここどういう意味なの?」とか、まあ好きなことを書きこんでください。

来年の12月頃、全50回程度で読了する予定です。4000字ずつくらいのペースで読んでいきます。

「読んだ人集まれ―」ではなく、みんなでわいわいがやがや言いながら一つの作品を読んでいったらどうなるんだろう? という実験です。

なので「まだ読んだことがない」というそこの貴方、是非この機会に一緒に読んでいきましょう。

後篇
https://www.honzuki.jp/bookclub/theme/no287/index.html?latest=20

皆様のご参加、お待ちしています!!

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最新20件を表示中[すべてのコメントを表示
  1. 323
    哀愁亭味楽
    主催者
    哀愁亭味楽 さん
    「じき、夜になったが、この百姓家の人たちが細長い蝋燭を使って光を延長する手段をこころえているのを知って、わたしはひどく驚嘆した。そして、陽が沈んでも、わが隣人たちを見守ることで味わった歓びが終りにならないことがわかって、嬉しかった。その晩、若い娘と男は、私にはなんのことかわからないさまざまな仕事に精を出し、老人は楽器をまた取りあげて、今朝わたしをひきつけたあのたまらなくよい音を出した。老人がそれを終るとすぐ、今度は若者が、老人の楽器の和音にも小鳥の歌にも似ない単調な音を、弾かずに出しはじめた。あとになってからそれは、大きな声で本を読んだのだということがわかったが、そのときにはまだ、ことばや文字の学問のことを何も知らなかったのだ。
    「三人はしばらくこういうことをやったあとで、燈を消して引っ込んだが、わたしの推察では、それは休むためであった。
    投稿日:2017年05月07日 12時46分
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    • はるほん 05/07 22:14
      読めば読むほど、この作品はホラーでは無いような気がしてくるなあ。
      映画としては確かに、現代ホラーの原動力にはなったのでしょうが、
      人間について考えさせられる深い話だなあと改めて。

      お休み中もありがとうございます!
    • ぱせり 05/08 20:57
      今週もありがとうございました。(私はゴールデンウィークぼけで、昨日が日曜日だったことに、やっと気がついたのでした)

      生まれたての怪物(ずっと名前もなくてかわいそうです~)がひとりぼっちで外へ出ていく姿が不憫です。
      しかし、静かでなんと美しい世界。

      最後に出会った三人の人たちは何ものなのでしょう。続き楽しみにしています。
  2. 324
    哀愁亭味楽
    主催者
    哀愁亭味楽 さん
         12 フェリクスの家族


    「藁の上に寝たが眠れなかったので、その日に起ったことを考えてみた。わたしを主として打ったのはこの人たちのやさしい態度であって、そのなかに加わりたいとおもったが、それもできかねた。前の晩に野蛮な村人から受けた仕打ちをあまりによくおぼえているので、これからさきどういう行為を正しいと考えてするにしても、とにかく今のところ努力しようと決心した。
    「家の人たちは、翌朝、日の出前に起きた。娘が家のなかを取りかたずけてから食事のしたくをし、最初の食事が終ってから若い男が出ていった。
    投稿日:2017年05月14日 08時24分
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  3. 325
    哀愁亭味楽
    主催者
    哀愁亭味楽 さん
    「この日は前の日と同じような日課で過ぎ去った。若い男はたえず外で仕事をし、娘は中でさまざまなほねのおれる仕事をした。老人は、まもなく盲だということがわかったが、楽器を手にしたり考えことをしたりしてひまをつぶした。若い人たちの老人に対して示した愛情と尊敬にまさるものはなかった。二人がやさしく愛情と義務からのあらゆるこまごました世話をすると、老人はそれに慈悲ぶかい笑顔で答えるのであった。
    投稿日:2017年05月14日 08時24分
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  4. 326
    哀愁亭味楽
    主催者
    哀愁亭味楽 さん
    「みんながまったく幸福なのではなかった。若い男と娘は、たびたび、出て行っては泣いた。わたしにはその不幸の原因はわからなかったものの、それには深く心を動かされた。こんな愛らしい人たちがみじめであるとすれば、できそこないでひとりぼっちの存在である私が不幸なのは、ちっともふしぎでなかった。それにしても、このやさしい人たちがなぜ不しあわせなのだろう。楽しい家(わたしの眼から見れば)やあらゆるぜいたくなものをもち、冷える時にあたたまる火や、空腹な時に口にするおいしい食物をもっていて、りっぱな着物を着、そのうえにおたがい仲間があって話しあい、毎日愛情と親切のまなざしをかわしているのだ。この人たちの涙は、いったい何を意味するのか。ほんとうに苦しみを表わしているのだろうか。はじめのうちは、こういう疑問を解くことができなかったが、たえず注意し、時か経つにつれて、最初は謎であったいろいろのことがわかってきた。
    投稿日:2017年05月14日 08時25分
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    • ぴょんはま 05/20 20:54
      創元版では「不完全で」と訳されていました。一人前ではない意識があるのですね。創り主に愛されていないから?
    • ぽんきち 05/20 21:38
      ぴょんはまさん

      それもあるかもしれないですが、ここは多分、見た目のことが大きいように思います。造形がperfectではない、異形であることを指している印象を受けます。
      プラスして、成長過程も普通の道筋をたどっていない=教育も受けず、精神発達上も不完全であることも入っているのかな・・・? 
      それもこれも創造主=フランケンシュタインがちゃんと面倒をみなかったせいですけど。
  5. 327
    哀愁亭味楽
    主催者
    哀愁亭味楽 さん
    「しばらく経ってから、この愛すべき家族の不安の原因が一つわかった。それは貧乏であって、そのためにひどく難儀しているのだった。この人たちの栄養は、菜園の野菜と一頭の牝牛の乳がその全部で、その牛だって、主人たちが満足に餌料をやれない冬には、乳はごく僅かしか出なかった。わたしの見るところでは、この人たちはしばしば、甚しく空腹に悩み、わけても若い二人がひどくて、自分たちは何も食べずに老人の前に食べものを置くことも一度や二度ではなかった。
    投稿日:2017年05月14日 08時26分
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  6. 328
    哀愁亭味楽
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    哀愁亭味楽 さん
    「この思いやりの深さには、わたしは強く感動した。はじめは夜のあいだに、自分が食べべるために、この人たちの貯えの一部を盗むことにしていたが、そうすることがこの家の人たちを苦しめることがわかると、それをやめて、近くの森で集めてきた苺、胡桃、根菜の類で満足した。
    「わたしはまた、この人たちのほねおりを助ける別の手段を見つけた。若者が毎日燃料にする薪を集めるのに長い時間をついやしているのを知って、夜のあいだにときどき、使い方をすぐおぼえたその道具を取り出して、数日間も燃やせるぐらいの薪を取ってきて置いてやった。
    「はじめてそれをしてやった時には、娘は、朝、戸をあけてみると、外に薪の山があるのを見つけて、ひどく驚いた様子であった。そこで大声で何か言うと、若者か出てきたが、これもびっくりしたもようだった。若者がこの日、森に行かずに、家の修理や菜園の耕作で一日を過ごしたのを見て、わたしは嬉しかった。
    投稿日:2017年05月14日 08時27分
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  7. 329
    哀愁亭味楽
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    哀愁亭味楽 さん
    「わたしは、そのうちにだんだんと、もっと重要な発見をした。この人たちが、自分の経験や感情をそれぞれ区別のある声音で、おたがいに伝えあう方法をもっていることがわかったのだ。この人たちの話すことばが、ときには聞く者の心や顔いろに歓びや苦しみ、笑顔や愁いを起させるのに、わたしは気がついた。これはじっさい神さまのような術であって、わたしは熱烈にそれをおぼえたいとおもった。しかし、そのためにいろいろとやってみたが、失敗してしまった。この人たちの発音が速くて、話されることばが眼に見える対象となんら明白な結びつきもないので、何のことを言っているのか、その秘密を解く手がかりを見つけることができなかった。
    投稿日:2017年05月14日 08時28分
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  8. 330
    哀愁亭味楽
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    哀愁亭味楽 さん
    けれども、さんざん苦労したあげく、小屋のなかで数箇月暮らすあいだに、いちばんよく話に出てくるものについている名まえがわかってきた。たとえは火、牛乳、パン、薪などということばをおぼえ、使ってみた。それから、この家の人たちの名もおぼえた。若い連中の名まえはいくつもあったが、老人はお父さんというたった一つの名まえで呼ばれた。娘は妹とかアガータ、若い男はフェリクス、兄さん、せがれなどと呼ばれた。こういった声音に当てはまる観念を知り、それを発音できるようになったときに感じた歓びは、とても言い表わせない。まだ、理解したり使用したりするところまではいかなかつたが、良い、かわいい、不しあわせというような、そのほかのいろいろのことばも区別できるようになった。
    投稿日:2017年05月14日 08時29分
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  9. 331
    哀愁亭味楽
    主催者
    哀愁亭味楽 さん
    「冬はこんなふうにして過ごした。家の人たちのやさしい態度と美しさは、わたしに、この人たちを大いに慕う気もちを起させ、この人たちが不幸のときにはがっかりし、この人たちの喜ぶときにはその喜びに同感した。この人たちのほかには、人はあまり見かけず、誰かほかの者がたまたま家に入って来ることがあっても、その連中の粗野な態度や荒々しい歩きぶりは、この家の人たちのりっぱな態度をきわだたせるだけのことであった。老人がしばしば子どもたちを励まし、ときどき老人が呼ぶときにわかったことだが、憂欝を振り払わせようと努力していることは、わたしにも読み取れた。老人は、わたしさえ嬉しくなるような善良さを現わして、快活な口調で話をした。
    投稿日:2017年05月14日 08時30分
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  10. 332
    哀愁亭味楽
    主催者
    哀愁亭味楽 さん
    アガータは尊敬の念をこめてそれを聞き、その眼には涙が溢れることもあったが、そんなときはそれをそっと拭き取るようにしていた。しかし、だいたいにおいて、父親に言って聞かされたあとでは、その顔いろや声の調子がずっと快活になるのがわかった。フェリクスのばあいは、そうではなかった。いつでも家族のなかでいちばん悲しそうにしており、わたしの未熟な感じから言ってさえも、ほかの者より深く悩んでいるように見えた。しかし、顔いろのほうはもっと悲しげであったとしても、声は、老人に話しかける時には、妹の声より快活であった。
    投稿日:2017年05月14日 08時31分
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  11. 333
    哀愁亭味楽
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    哀愁亭味楽 さん
    「ちょっとしたことではあるが、この愛すべき人たちの気性を示す実例を、いくらでも挙げることができる。貧窮と欠乏のさなかにありながら、フェリクスは、雪のつもった地面から首を出した最初の白い花を、喜んで妹に持ってきてやった。朝早く、妹の起きる前に、牛小屋へ行く道をふさいだ雪を掻きのけたり、井戸から水を汲んできたり、納屋から薪を運んできたりしたが、その納屋のなかには、眼に見えない手でいつも補充される薪の貯えがあるのを見て、しじゅう驚くのだった。日中はときどき、近所の百姓家の仕事をすると見え、よく出かけて夕食まで帰らず、薪を持って来なかった。また、ときには、菜園で働いたが、霜のおく季節にはすることとてもあまりなかったので、老人とアガータに本を読んでやった。
    投稿日:2017年05月14日 08時32分
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  12. 334
    哀愁亭味楽
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    「この、本を読むということが、最初は、わたしにはどうしてもわけがわからなかったが、そのうちに、だんだん、読んでいるさいに、話をする時と同じことをいろいろと喋ることがわかった。だから、わたしは、フェリクスのわかることばのしるしが紙の上にあるのだろうと推測し、しきりにそれを理解したいと考えたが、ことばのしるしどころか、かんじんのことばの音さえわからないのに、どうしてそんなことができよう。けれども、この知識は眼に見えて進歩したとはいえ、全心を捧げて努力しても、会話だってろくすっぽわかりっこはなかった。
    投稿日:2017年05月14日 08時33分
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  13. 335
    哀愁亭味楽
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    哀愁亭味楽 さん
    わたしは、家の人たちの前に姿をあらわしたくてしかたがなかったけれども、ことばをまずおぼえこまないうちは、そんなことをしてはいけない、それさえわかれば、この人たちも、わたしの畸形を、見のがしてくれるだろう、ということが、すぐわかった。というのは、わたしの眼にひっきりなしに見せつけられる対照も、わたしにこのことを教えてくれたからだ。
    投稿日:2017年05月14日 08時34分
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    • ぴょんはま 05/20 21:06
      19歳の誕生日の少し前に取りかかっているようです。その時、彼女には半年前に生まれた息子がいるはず。(預けてきたのか、スイスに連れてきているのか?)その前17歳の時に生んだ娘は1カ月も立たずに亡くなっていますが。私は年齢よりも、乳飲み子を抱えた母親が考えているところに驚きました。生命の神秘を感じるのはわかるのですが。
    • ぴょんはま 05/20 21:50
      創元推理文庫版
      「いくら一家の前に姿を見せたいと望んでも、その試みより先にまず彼らの言語を修得せねばならないのは、たやすくわかることだった。言葉の知識さえあれば、自分の姿の醜さを大目に見てもらうことができるだろう――というのは、このことも、たえず目にする対比のおかげで自分は知るようになっていたのだ。」
  14. 336
    哀愁亭味楽
    主催者
    哀愁亭味楽 さん
    「わたしは、この人たちの申し分のない姿――その愛嬌と美しさと品のよい顔色を讃歎したが、自分を澄んだ池の水に映してみたとき、どんなに慄いあがったことだろう! はじめのうちはその水鏡に映ったものがほんとうにわたしであるとは信じかねてたじたじとなり、自分が実際にそういう怪物であることをよくよく確めると、激しい落胆と無念の感にみたされた。ああ! けれども、わたしにはまだ、こういうみじめな畸形の致命的な効果がとことんまでわかったわけではなかった。
    投稿日:2017年05月14日 08時35分
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  15. 337
    哀愁亭味楽
    主催者
    哀愁亭味楽 さん
    「陽の光が暖かくなり、日が長くなると、雪が消え、裸の木と黒土が見えた。このころからフェリクスは、仕事で忙しくなり、同情の念をそそらずにいられないようなさし迫った飢餓の徴候はなくなった。あとでわかったことだが、食べものは粗末ではあったが、健康にはよかったし、足りなくなるようなことはなかった。いくつか新しい種類の植物が菜園に芽ばえると、それを調理した。こういう安楽のしるしは、季節が深まるにつれて日ごとにふえていった。
    投稿日:2017年05月14日 08時35分
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  16. 338
    哀愁亭味楽
    主催者
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    「老人は、雨が降らないときは、毎日、正午に、息子によりかかって散歩した。天から水が降りそそぐとき、それが雨と呼ばれることは、わたしにもわかった。雨はたびたび降ったが、強い風がたちまち地面を乾かし、季節はますます快適になってきた。
    投稿日:2017年05月14日 08時36分
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  17. 339
    哀愁亭味楽
    主催者
    哀愁亭味楽 さん
    「小屋のなかでのわたしの暮らしぶりは、変りがなかった。朝のうちは家の人たちの動静に注目し、みんながそれぞれにいろいろな仕事に就くと、わたしは眠り、それから後はまた、家の人たちを観察して過ごした。みんなが寝床に引っこんでしまうと、月が出ているか、星明りがあるかすれば、森へ入りこんで、自分の食べものと家へ持って帰る燃料を集めた。戻ってくると、その必要があるたびに、道路の雪を払ったり、フェリクスがやるのを見ておぼえた仕事をしたりした。眼に見えない手がやってくれたそういうほねおり仕事を見て、この人たちがたいへん驚いたことは、あとになってわかった、このばあい、天使、すばらしい、といようなことばが出るのを、一、二度耳にしたが、当時はまだ、そういったことばの意味がわからなかった。
    投稿日:2017年05月14日 08時37分
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    • ぽんきち 05/14 13:27
      怪物がごんぎつねみたいでけなげすぎるっ(><)
    • ぴょんはま 05/20 21:15
      ぼんきちさん
      ごん、おまえだったのか、いつも栗をくれたのは。
      やっぱり、そうなってしまうのよね?
      理解されず、報われない怪物、かわいそう過ぎ。
  18. 340
    哀愁亭味楽
    主催者
    哀愁亭味楽 さん
    「わたしの考えは、今や、いよいよ活溌になり、この愛すべき人たちの動機や感情を見つけたくてたまらず、なぜにフェリクスがあんなふうにみじめに見え、アガータがあれほど哀しげに見えるのかを、なんとかして知りたかった。わたしの力で、この人たちに、当然の幸福を取りかえしてやれるかもしれない、と、わたしは考えた(ばかなやつだ!)。眠っているか、そこに居あわさない時でも、尊敬すべき盲の父親や、気だてのやさしいアガータや、りっぱなフェリクスの姿が、わたしの眼の前にちらつくのだった。わたしはこの人たちを、自分の未来の運命を定めてくれる人たちだと見なし、この人たちの前に出て、迎えてもらう姿を、あれこれといろいろに想像した。嫌われるかもしれないが、自分のおとなしい態度と穏かなことばで、おしまいにはまずこの人たちに好意をもたれ、それからさらに愛されるだろうと想像したのだ。
    投稿日:2017年05月14日 08時38分
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  19. 341
    哀愁亭味楽
    主催者
    哀愁亭味楽 さん
    「そう考えると励みが出て、ふたたび新しい熱心さをもって、ものを喋る術を身につける勉強をした。わたしの発音器官はなるほど粗っぽかったが、しなやかだったので、家の人たちの語調のやわらかな音楽とは似てもつかないものではあったにしろ、自分のわかるようなことばを、それほどぎこちなくもなく発音した。それは驢馬や狆(ちん)に似てはいたが、それにしても、べつに他意のないおとなしい驢馬ならばたしかに、その態度がぶざまだったところで、殴られたり憎まれたりするよりはまだましな待遇を受けるはずだ。
    投稿日:2017年05月14日 08時39分
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  20. 342
    哀愁亭味楽
    主催者
    哀愁亭味楽 さん
    「春の気もちのよい驟雨と温和な暖かさで、大地の相貌は大いに変った。この変化が起るまでは洞穴に隠れていたように見える人々は、それぞれに散らばって、耕作のいろいろな仕事に従事した。鳥たちがいっそう快活なしらべで歌い、木の葉が芽を出しはじめた。幸福な、幸福な大地よ! つい先ごろまで荒涼として湿っぽく、健康に悪かったのに、今では神々の住まいにもふさわしい。自然の魅惑的な姿に接して、わたしも元気になった。過去はわたしの記憶から消え去り、現在は平穏無事になって、未来は希望の輝かしい光線と歓びの期待とで、黄金の色に輝いた。
    投稿日:2017年05月14日 08時40分
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    • ぴょんはま 05/20 21:36
      いよいよ前篇終了なのですね。いつもありがとうございます。
      この物語の主人公は科学者のフランケンシュタインの方なのでしょうが、彼が創り出した、フランケンシュタインとして世に知られている怪物の方が、創造者よりずっと人間らしいように思いました。
      責任も取らずずるいところも、人間の弱さなのでしょうが。
      後篇もよろしくお願いいたします。
    • 哀愁亭味楽 05/20 21:42
      ぴょんはまさん、ありがとうございます〜!前篇お付き合いいただき、ありがとうございました!

      そうですね。確かにフランケンシュタインのずるさや弱さ、ある意味で人間らしさなのかな。

      また後篇もよろしくお願いいたします!
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