映画の世界では、やはり監督の名前がなんといっても大きい。
黒澤明、木下恵介、小津安二郎、市川崑、等々巨匠たちの名前が出てくる。
その一方で、脚本家といえば橋本忍だったり笠原和夫であったり有名な人たちもいるが、
どうしても監督の名前に負けてしまう。
脚本家橋本忍を描いた『鬼の筆』で第55回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した
映画史研究家の春日太一さんが受賞後初めて書き下ろしたのが、
『なめたらいかんぜよ―脚本家・高田宏治が生きた東映五十年の狂熱』だ。
『鬼の筆』に続く、脚本家を描いた聞き書きノンフィクション作品。
高田宏治。1934年生まれの脚本家は現在90歳を超えて、今でも執筆をしているという。
東映作品で多くの脚本を書いてきた高田のもっとも有名な作品は、
この本のタイトルにも使われている「なめたらいかんぜよ!」が流行語にもなった
映画「鬼龍院花子の生涯」(1982年・五社英雄監督)だろう。
あるいは、のちにシリーズされていく「極道の妻たち」(1986年・五社英雄監督)だろうか。
この本の巻末に載っているフィルモグラフィーを見ると、
この二つの作品は高田の長い脚本家履歴の中でも後期のもので、
それ以前、東映の任侠映画やそのあとの実録映画など多くの作品に携わってきたのがわかる。
春日さんがそんな高田と50時間に及ぶインタビューを通して、
高田の半生と生み出されていった作品、そしてそれに関わった監督やプロデューサーたちの姿を
克明に綴っていく。
面白い映画を作った脚本家高田宏治の話もまたなんと面白いのだろう。
この書評へのコメント