前ブログで、聽濤弘さんの『ソ連共産党とは何だったのか』(かもがわ出版)を論難しました。そのブログの末尾でこう書きました。
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日本共産党の知的限界というか、バカの皮は、1950年6月25日に北朝鮮の南侵によって始まった「朝鮮戦争」に対する認識・評価の変遷を見れば明々白々です。よく言って「狡智」「狡猾」「腹黒」でしょう。聽濤さんの本から離れて、日共の公式見解を見ていくことにします。
使用するテキストは以下の通りです。
『日本共産党の五十年(増補版)』(1972)
『日本共産党の六十年』(1982)
『日本共産党の七十年(上)』(1994)
『日本共産党の八十年』(2003)
『日本共産党の百年』(2023)
ということで、さっそく本題に入ります。
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1972年刊行の『日本共産党の五十年(増補版)』(日本共産党中央委員会出版局)は「朝鮮戦争」に関して、こう書いています。
「この間、アメリカ帝国主義は、六月二十五日、朝鮮で侵略戦争を開始した。朝鮮では、一九四八年九月、北半部に朝鮮民主主義人民共和国が成立していたが、これを米・「韓」の連合兵力で撃破し、朝鮮半島全体をその支配下において、社会主義陣営の東方の一角に打撃をあたえようというのが、アメリカ帝国主義の野望であった」
「戦争開始とともに、日本は全土がその前進基地とされ、労働者階級と人民は軍事的な抑圧とひどい搾取にさらされた」
「ひどい搾取にさらされた」とは?
「朝鮮特需」という言葉も知らないようですね? コミュニストはこういうお考えを1972年の段階でもお持ちだったわけです。こんな過去に目を閉ざさないようにいたしましょう。
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これが、10年後の1982年に刊行された『日本共産党の六十年』(日本共産党中央委員会出版局)になると、こうなります。
「この間五〇年六月、朝鮮戦争がはじまった。アメリカ帝国主義がこれに介入して『国連軍』の名で参戦した。アメリカ帝国主義の介入とともに、日本は全土がその前進基地とされ、労働者階級と人民は軍事的な抑圧とひどい搾取にさらされた」
おやおや、「アメリカ帝国主義」や「軍事的な抑圧とひどい搾取」は同じですが、米韓による「侵略」というお言葉は出てきませんね。「朝鮮戦争がはじまった」との主語のない一見中立的な表記。
でも、主語は? 正しくは、「北朝鮮の南侵によって」「朝鮮戦争がはじまった」と書くべきではないでしょうか?
その主語が書けないというのが、1982年当時の情けない日共だったのです。まだまだ北朝鮮を愛していたのですね? この過去には目を背けないようにしましょう。
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それが1994年に刊行された『日本共産党の七十年(上)』(新日本出版社)ではこうなるのです。
「一九五〇年六月二十五日、朝鮮を南北に分断する三十八度線で大規模な軍事衝突がおき、全面的な内戦がはじまった」
「この内戦は、実際には、スターリンの承認のもとに北朝鮮の計画的な軍事行動によってはじめられたものであった。北朝鮮の軍隊は、南朝鮮軍の不意をついて急速に進撃し、三日後の六月二十八日にはソウルを、七月二十日には太田を占領」
おやおや、1994年になると、不意打ちをしたのは北朝鮮の側であったとお認めのようですね。でも「急速に侵攻し」とか「急速に侵略し」とかは書かない。「急速に進撃し」としか書かない。死んでも「南侵」とは書かない、「南進」レベルで筆を抑えるという情けない北朝鮮への愛を貫き通しているようです。
そして、そんな侵略軍と戦うために「国連決議」に基づき出動した米軍主体の国連軍を批判しています。この過去には目を閉ざさないようにいたしましょう。
そして1994年の段階でも「朝鮮特需」の事実は黙殺し、「アメリカ帝国主義の朝鮮内戦への介入とともに、日本は全土がその前進基地とされ、労働者階級と人民は軍事的な抑圧とひどい搾取にさらされた」と書くのです。被害妄想?
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さらには2003年に刊行された『日本共産党の八十年』(日本共産党中央委員会出版局)になるとこうなります。
「一九五〇年六月、朝鮮半島では、朝鮮を南北に分断する三十八度線で大規模な軍事衝突がおこり、全面的な内戦がはじまりました。この内戦は、スターリンの承認のもとに、北朝鮮の計画的な軍事行動によってはじめられたもので、北朝鮮の軍隊は、開戦三日後にはソウルを占領し、八月はじめまでに、朝鮮半島の東南端の一角をのぞき、半島全域を占領するにいたりました」
相変わらず、北朝鮮の南侵によって朝鮮戦争が始まったとは書けません。情けない限りですね。でも「搾取」という言葉は消えました?
「アメリカの朝鮮内戦への介入とともに、日本はアメリカ軍の前進基地とされ、国民は軍事的な抑圧と規制にさらされることになりました」とさ?
「軍事的な抑圧とひどい搾取にさらされた」歴史が、いつのまにか「軍事的な抑圧と規制にさらされることになりました」とのこと。
「ひどい搾取」が「規制」程度にトーンダウンしたみたいですね。この言葉の言い換えで、コミュニストの知性の限界をうかがえますね?
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さらに日共の「言い換え」(誤魔化し)は続きます。
2023年に刊行された『日本共産党の百年』(新日本出版社)によると、こう変化(進化?退化?)してきます。
「一九五〇年六月二十五日、北朝鮮軍が三十八度線の全線にわたって、韓国への攻撃を開始し、朝鮮戦争が火をふきました。この戦争は、アジアで軍事衝突をおこし、アメリカの軍事力をヨーロッパから極東にそらせたいという、スターリンの構想に後押しをうけたもので、スターリンの承認を受けた北朝鮮の軍事行動は、八月はじめまでに、朝鮮半島の東南端の一角をのぞく全域を占領しました。
国連安全保障理事会は、六月二十七日、『国連軍』の派遣を決定します。ソ連は安保理常任理事国でありながら、アメリカを戦争に参加させるために、この会議を欠席していました。 日本は朝鮮半島に出撃する米軍の基地になり、国民は軍事的な抑圧にさらされました」
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「一九五〇年六月二十五日、北朝鮮軍が三十八度線の全線にわたって、韓国への攻撃を開始し、朝鮮戦争が火をふきました」との表現には爆笑ました。袴田さんのような人が中央委員会にいて、「侵略」はダメだ、「進入」もダメだ、「火をふいた」にしろと言ったのでしょうか? 聽濤さんは取材をして、そのあたりの言葉の言い換えの歴史の謎と闇を明かしてほしいですね。
いつものお得意の「侵略」「侵攻」という言葉をなぜ、ここに使えないのでしょう?
「火をふきました」ですって? 大道芸人が口から「火をふきました」とか、辛いラーメンやカレーを食べて口から「火をふきました」とはよく言いますが? ゴジラも火をふきましたっけ?
言葉の微妙な言い換え術とはいえ、北朝鮮が大好きだから、しぶしぶと攻撃した側が北朝鮮だったことを徐々に認めても、その行為をことさら糾弾するわけにもいかず、「攻撃を開始」「火をふきました」と悪玉北朝鮮を事実上庇う筆致。
卑怯・卑劣というか、姑息というか、狡智というか、狡猾というか、事実を事実として直視できない反知性主義ならではのコミュニストの偽善ぶりがうかがえます。
ちなみに、朝鮮戦争は北からの南侵だったと指摘した神谷不二さんの『朝鮮戦争』(中公新書)が出たのは、1966年。それから何十年も経過して、やっと神谷さんのレベルに到達(いや、まだかな?『日本共産党の百二十年』とかが出るころになると追いつくかな?)。
日共系コミュニストというのは、本当に口だけは達者?というしかありません。
「過去に目を閉ざすものは現在にも盲目となる」……。これはあなた方のためのお言葉ですよ。天に唾するのもほどほどに。
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さすがに「搾取」「アメリカ帝国主義」という言葉は『日本共産党の八十年』以降、朝鮮戦争に関してはなくなっていったようですが、「米軍の基地」「国民は軍事的な抑圧」という言葉は残りました。コミュニストとしての最後の一線でしょうか? それにしても「朝鮮特需」を「搾取」呼ばわりするようでは、経済政策のイロハもお分かりでなかったようですね。
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『日本共産党の百年』では、北朝鮮が1968年1月にソウルの大統領官邸を襲撃したことに関して、同年8月に日共代表団が北朝鮮を訪問し「南進」問題の誤りをただしたと自慢もしていますが、どうしてここも「南侵」問題と書かないのか?
これまた知的弱者ならではの言葉の言い換えでしょうね。失笑、爆笑、憫笑するしかありません。日共系コミュニストというのは、本当にどうしようもない方々というしかありません。二枚舌? 三枚舌をお持ちのようですね。
そのくせ、1968年のチェコに関しては「ソ連の侵略」とは一応明記はしています。侵攻当時には存命だった(?)袴田さんがんがいなくなっていたからでしょうか?
でも、1956年のハンガリー侵攻・侵略に関しては、ちょこっと触れて、当時の誤った判断は再検討して訂正しているぞと釈明していますが、「ソ連はハンガリーの政権をすげかえ、軍事介入によって多数の市民に大きな被害を与えました」と遠慮的な筆致。
ここでは「ハンガリー侵攻」とも書けないのです。「軍事介入」が精一杯の苦言的表現のようですね。
「多数の市民に大きな被害を与えました」「すげかえ」ですって? 「火をふきました」と同じく笑っちゃいますね。「ふきだしちゃいます」?
そんなに「侵攻」「侵略」という言葉をソ連や北朝鮮に対して使うのがお嫌い?
「すげかえ」とか「火をふきました」とか。相手がアメリカや日本軍ならすぐに「侵略」とか使うのに? ゴジラが「火をふきました」ともいいますが?
「多数の市民に大きな被害を与えました」? ならば、日本も南京でやったのは、「多数の市民に大きな被害を与えました」という表現でよろしいのでしょうか?
そちらに関しては「天皇の軍隊は、占領地で、現地住民にたいして略奪、凌辱、虐殺」などの「残虐行為をおこないました」と書いていますが、ソ連軍も占領地(ハンガリーや満洲など)で、「略奪、凌辱、虐殺」などの「残虐行為をおこないました」とは書かない? 書けない? 書きたくない?
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コミュニスト(&ファシスト)に典型的に見られる、こういう「二重基準」「二枚舌」が私は大嫌いなのです。中学校や高校時代、学内に民青の輩がいましたが、だいたい、こういう二枚舌の持ち主だったなと記憶しています。アメリカの軍拡は批判しながら、ソ連の軍拡は見て見ぬフリをしていましたから。
兵本達吉氏は『日本共産党の戦後秘史』(新潮文庫)で、こう結語していました。
「いずれにせよ、イタリア共産党のように、一旦解散して出直すのが、いさぎよい、誠実な態度であると思う。そうではなく、歴史の真実を誤魔化して、なんとかこじつけて新しい社会主義革命像を描き出そうというのであれば、日本国民は、この党を歴史のゴミ箱に叩き込むであろう」
同感です。この文庫の解説を花田紀凱氏が書いています。結語は次の通り。
「若い人たちに、この本を読んで、日本共産党がいかにデタラメな党か、恐ろしい党であるかをわかってほしい」
これまた同感です。
こんな花田さんが編集をしている雑誌をネトウヨ雑誌と決め付けて、親が読んでいたりするとショックを受けたり、本屋にあると懸念を表明したりする「検閲官」のような書店関係者や容共リベラルな方々がいますが、論理的批判をちゃんと行なっている相手にそういう風にレッテル貼りをして蔑んで己の無知蒙昧を誤魔化そうとするのは、見苦しい限りというしかありません。
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佐藤優氏の『日本共産党の100年』(朝日新聞出版)や近刊の松崎いたる氏の『日本共産党 悪魔の事件簿』(Hanada新書)や、河西英通氏の『「六全協」の世界 日本共産党と一九五〇年代』(有志舎)は未読ですが、これらを熟読すればそこそこの知的刺激を受けることでしょう。鈴木大介氏の『ネット右翼になった父』(講談社現代新書)も違った意味で、知的刺激を受ける一冊かも?
では、ごきげんよう。


- 掲載日:2026/05/07
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