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efさん
ef
レビュアー:
これはジャック・フィニイだねぇ
 ある古い屋敷で見つけた机。この引き出しに昔の手紙が入っていたことをきっかけとして、百年前に生きた女性と文通が始まるという物語です。
 こ、これは……。ジャック・フィニイの『愛の手紙』(『ゲイルズバーグの春を愛す』所収の短編です)だねぇ。

 本書のエピグラフにも『愛の手紙』の一部が引用されていますし、これはオマージュ作品と読んでも良いのかもしれません。
 ただ、フィニイのシンプルで美しい物語のまんまというわけではなく、伴名連なりのヒネりを入れてきます。

 まず、フィニイの作品では過去に宛てた手紙は、その当時の古切手を貼り、その頃から存在していた郵便局のポストに投函しなければなりませんでしたが、本作では、古い机の引き出しに入れればすぐに過去に送達されることにしています。
 返事も同様にその引き出しに出現するのですが、非常に速い。
 なので、時にはまるでチャットのように手紙のやり取りが行われたりもします。

 また、本作では、手紙だけではなく、引き出しに入るものなら物でも送れる(受け取れる)ということにしています。

 また、何故このような過去とのやり取りができるのか? についても伴名連なりの解決を用意しています。

 このような文通をしている現代の少女と、100年前、大正時代の少女のお話なのですが、現代の少女は気付いてしまうんですね。大正時代の少女が生きている頃、もうすぐスペイン風邪が大流行するということに。
 驚いて、この古い屋敷の歴史を調べてみたら、まさに文通相手はスペイン風邪で亡くなったことが分かります。
 そんな……。

 ということで、すぐにスペイン風邪についての注意喚起をし、不織布のマスクや入手可能な薬を過去に送ったりするのですが、それはそれで問題があるのではないか(過去にまだ作られていない薬など送って、ウィルスが変異してしまったら大変なことになる、あるいは、過去の時代のすべての人に薬をいき渡らせることはできないので、命の選別みたいなことになるのではないか等々)。

 それだけではなく、机を介して現代のウィルスを過去に送り込んでしまうことにならないか? とも危惧するのです(ちょうど現代ではコロナ禍が猛威をふるっている時期でした)。
 
 こういう形で、『愛の手紙』を再話したのが本作ということになります。
 『愛の手紙』は多くの人に好まれている作品なので、こういうオマージュにするなよというご意見もあろうかと思いますが、私はこれはこれで良いのではないかと読みました。
 本作以前にも同じようなアイディアの作品はいくつも書かれていますしね。

 なお、本書巻末には、このような時間ものの作品についての概論、紹介が付されており、ここはアンソロジストでもある伴名連ならではのサービスだなぁと感じました。巻末に紹介されている作品の中から、面白そうと思ったものを読んでみるというのもよろしいのではないでしょうか。


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□□      楽勝(1日はかからない、概ね数時間でOK)/165ページ:2026/04/21
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ef
ef さん本が好き!1級(書評数:5127 件)

幻想文学、SF、ミステリ、アート系などの怪しいモノ大好きです。ご紹介レビューが基本ですが、私のレビューで読んでみようかなと思って頂けたらうれしいです。世界中にはまだ読んでいない沢山の良い本がある!

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