ホセさん
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探偵工藤ちゃん、の原案となる本著は、ガチだった。
ここではとても「ちゃん」などとは呼べそうに無いが、これはこれで良い。
688 小鷹信光 「探偵物語」
探偵工藤ちゃん、の原案となる本著は、ガチだった。
ここではとても「ちゃん」などとは呼べそうに無いが、これはこれで良い。
原作の存在は知っていたが、どこで引っかのか急に「読まなきゃ」となった。
1979年著、翌年には第二作の「赤き馬の使者」が記され、シリーズは終わっている。
私立探偵の工藤俊作のもとに電話がかかってくる。
失踪した十七歳の少女の捜索依頼。
依頼主は父親の戸部産業の社長。
調査を始めて間もなく、少女を誘拐したという脅迫電話がかかってきて、お話はスピードを上げていく。
錯綜する歪んだ家族関係、人間関係が少しづつ明らかになっていく。
そして、、、
本著の工藤俊作は、ゆで卵なら12分か、というくらい固い。
警官あがりで、北米に派遣された時の出来事(明かされていない)で警察を止めて探偵稼業になった。
ゆずらない所は、ゆずらない。
金にも当然なびかない。
それでも女好きなところ、貧乏なのにコーヒーにはつぎ込むところ、シェリー酒好き、などはドラマと一緒。
「シュンサク!」と呼ぶ、同じビルの同居人のナンシーとかほりはチャラチャラ能天気に出現するし、
腐れ縁の弁護士柏木政子、警視庁の服部・松本の両刑事も登場する。
柏木はドラマ以上に工藤と親しいし、服部たちはドラマよりもっともっと強面で、工藤を痛めつけている。
ポケットに拳銃を忍ばせているふりをして、相手に手を挙げさせるあのやり方も健在だ。
驚いたのは工藤が住む雑居ビルが、私が近くで育ち、バイト先でもあった下北沢だという設定だ。
ドラマ冒頭で、部屋のドアにかかった「CLOSED」を松田優作がひっくり返すと
「探偵物語」となる、あの倉庫のようなビル。
(私は東横線で渋谷の近く、目黒川?と予想していた)
大学に入ったらバイトで稼いで、こんなところを借りるんだ、
でもかほりよりナンシーの方がいいかなぁ、、、などとアホな野望で頭を満たしていた。
松田優作のTVドラマは凄かった。
白いスーツにベスパ(本著ではスカイライン)、不必要にデカいライターの火、
ピンクのパジャマにアイマスク、、、
放送の翌日には、多くの工藤ちゃんのマネが教室で披露されていたものだ。
なけなしのバイトの金で、白いロングダウンを買ってしまった。
直ぐに汚れて、外飼いの白犬みたいになってしまったが。
私は覚えていないのだが、大森望の解説でも、Wikiでも触れられているのは、
第12話「誘拐」の中で松田優作がアドリブで、カメラを見つめてこう尋ねたそうだ
『日本のハードボイルドの夜明けは、いつくるんでしょうかね、コダカノブミツさん?』
そうだ、小鷹信光の名前にどこか聞き覚えがあったが、小説家ではなく翻訳家、評論家だった。
探偵物語2作で小説をいったん止めた小鷹は、1980年代には翻訳と評論で私たちを賑わしてくれていた。
調べてみたらクライムリー「酔いどれの誇り」や、ロス・マクドナルド、ギャビン・ライアル、
ニール・サイモンも刑事コロンボ、刑事コジャックも手掛けていた。
評論もハードボイルド小説が多く、当時(大学生)思い切り冒険小説に振れていた私は、
内藤陳「読まずに死ねるか」シリーズを読んでいたが、小鷹の評論も1つ2つ手に取っていたかもしれない。
ということで、本著を読みながら、頭の何割かはTVドラマへ、
更にあの頃の時代へ、とふわふわ行き来しながら読み終えるという、珍しい読書経験になった。
少し肩に力が入った本著に比べて、2作目の「赤き馬の使者」ではノビノビ、と大森望が書いていて、
それなら目を通したいな、と思った。
(2026/4/30)
PS 大森望は「その後多くの者が(工藤探偵を)模倣しようとして失敗してきた、と書いているが、
模倣したかどうかはさておき、私はコミカルなハードボイルの成功例を2つ知っている。
一つはウォーレン・マーフィーの「保険調査員トレース」シリーズ。
元警官で離婚した子の養育費にヒーヒー言い、可愛い助手のチコと組み、服部さん的な警官「(通称)グルーチョ」に絡まれながら、
工藤ちゃんばりの辛口のジョークを散らしながら、事件を解決していく。
「二日酔いのバラード」「豚は太るか死ぬしかない」といった洒落た題名も斬新だった。
もう一つは東直己「ススキノ探偵シリーズ」、映画は「探偵はBARにいる」。
松田龍平が準主役であるところも、制作陣の「探偵物語」への思いれかな。
PPS 私がバイトしていた下北沢のカフェ(当時はまだカフェバーブームの前)から南へ、
二本目を左、茶沢通りにぶつかったら右折すると、すぐ右側には松田優作が時折訪れていた、
ジャズバー「LADY JANE」があった。たまに夜遅くに寄って、来ないかな~、と粘っていた。
探偵工藤ちゃん、の原案となる本著は、ガチだった。
ここではとても「ちゃん」などとは呼べそうに無いが、これはこれで良い。
原作の存在は知っていたが、どこで引っかのか急に「読まなきゃ」となった。
1979年著、翌年には第二作の「赤き馬の使者」が記され、シリーズは終わっている。
私立探偵の工藤俊作のもとに電話がかかってくる。
失踪した十七歳の少女の捜索依頼。
依頼主は父親の戸部産業の社長。
調査を始めて間もなく、少女を誘拐したという脅迫電話がかかってきて、お話はスピードを上げていく。
錯綜する歪んだ家族関係、人間関係が少しづつ明らかになっていく。
そして、、、
本著の工藤俊作は、ゆで卵なら12分か、というくらい固い。
警官あがりで、北米に派遣された時の出来事(明かされていない)で警察を止めて探偵稼業になった。
ゆずらない所は、ゆずらない。
金にも当然なびかない。
それでも女好きなところ、貧乏なのにコーヒーにはつぎ込むところ、シェリー酒好き、などはドラマと一緒。
「シュンサク!」と呼ぶ、同じビルの同居人のナンシーとかほりはチャラチャラ能天気に出現するし、
腐れ縁の弁護士柏木政子、警視庁の服部・松本の両刑事も登場する。
柏木はドラマ以上に工藤と親しいし、服部たちはドラマよりもっともっと強面で、工藤を痛めつけている。
ポケットに拳銃を忍ばせているふりをして、相手に手を挙げさせるあのやり方も健在だ。
驚いたのは工藤が住む雑居ビルが、私が近くで育ち、バイト先でもあった下北沢だという設定だ。
ドラマ冒頭で、部屋のドアにかかった「CLOSED」を松田優作がひっくり返すと
「探偵物語」となる、あの倉庫のようなビル。
(私は東横線で渋谷の近く、目黒川?と予想していた)
大学に入ったらバイトで稼いで、こんなところを借りるんだ、
でもかほりよりナンシーの方がいいかなぁ、、、などとアホな野望で頭を満たしていた。
松田優作のTVドラマは凄かった。
白いスーツにベスパ(本著ではスカイライン)、不必要にデカいライターの火、
ピンクのパジャマにアイマスク、、、
放送の翌日には、多くの工藤ちゃんのマネが教室で披露されていたものだ。
なけなしのバイトの金で、白いロングダウンを買ってしまった。
直ぐに汚れて、外飼いの白犬みたいになってしまったが。
私は覚えていないのだが、大森望の解説でも、Wikiでも触れられているのは、
第12話「誘拐」の中で松田優作がアドリブで、カメラを見つめてこう尋ねたそうだ
『日本のハードボイルドの夜明けは、いつくるんでしょうかね、コダカノブミツさん?』
そうだ、小鷹信光の名前にどこか聞き覚えがあったが、小説家ではなく翻訳家、評論家だった。
探偵物語2作で小説をいったん止めた小鷹は、1980年代には翻訳と評論で私たちを賑わしてくれていた。
調べてみたらクライムリー「酔いどれの誇り」や、ロス・マクドナルド、ギャビン・ライアル、
ニール・サイモンも刑事コロンボ、刑事コジャックも手掛けていた。
評論もハードボイルド小説が多く、当時(大学生)思い切り冒険小説に振れていた私は、
内藤陳「読まずに死ねるか」シリーズを読んでいたが、小鷹の評論も1つ2つ手に取っていたかもしれない。
ということで、本著を読みながら、頭の何割かはTVドラマへ、
更にあの頃の時代へ、とふわふわ行き来しながら読み終えるという、珍しい読書経験になった。
少し肩に力が入った本著に比べて、2作目の「赤き馬の使者」ではノビノビ、と大森望が書いていて、
それなら目を通したいな、と思った。
(2026/4/30)
PS 大森望は「その後多くの者が(工藤探偵を)模倣しようとして失敗してきた、と書いているが、
模倣したかどうかはさておき、私はコミカルなハードボイルの成功例を2つ知っている。
一つはウォーレン・マーフィーの「保険調査員トレース」シリーズ。
元警官で離婚した子の養育費にヒーヒー言い、可愛い助手のチコと組み、服部さん的な警官「(通称)グルーチョ」に絡まれながら、
工藤ちゃんばりの辛口のジョークを散らしながら、事件を解決していく。
「二日酔いのバラード」「豚は太るか死ぬしかない」といった洒落た題名も斬新だった。
もう一つは東直己「ススキノ探偵シリーズ」、映画は「探偵はBARにいる」。
松田龍平が準主役であるところも、制作陣の「探偵物語」への思いれかな。
PPS 私がバイトしていた下北沢のカフェ(当時はまだカフェバーブームの前)から南へ、
二本目を左、茶沢通りにぶつかったら右折すると、すぐ右側には松田優作が時折訪れていた、
ジャズバー「LADY JANE」があった。たまに夜遅くに寄って、来ないかな~、と粘っていた。
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語りかける書評ブログ「人生は短く、読むべき本は多い」からの転記になります。
殆どが小説で、児童書、マンガ、新書が少々です。
評点やジャンルはつけないこととします。
ブログは「今はなかなか会う機会がとれない、本読みの友人たちへ語る」調子を心がけています。
従い、私の記憶や思い出が入り込み、エッセイ調にもなっています。
主要六紙の書評や好きな作家へのインタビュー、注目している文学賞の受賞や出版各社PR誌の書きっぷりなどから、自分なりの法則を作って、新しい作家を積極的に選んでいます(好きな作家へのインタビュー、から広げる手法は確度がとても高く、お勧めします)。
また、著作で前向きに感じられるところを、取り上げていくように心がけています。
「推し」の度合いは、幾つか本文を読んで頂ければわかるように、仕組んでいる積りです。
PS 1965年生まれ。働いています。
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- 出版社:東京創元社
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- ISBN:9784488488222
- 発売日:2026年02月27日
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