rodolfo1さん
レビュアー:
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山奥にあるエルザ動物クリニックにはさまざまな患畜が訪れる。それぞれの飼い主には自らへの引け目と負い目があったが、それでも動物達は健気に飼い主に尽くし、クリニックの一同は全力で彼らを救う。
村山由佳作「しっぽのカルテ」を読みました。
【第一話 天国の名前】土屋高志は土木作業中、ちいさな悲鳴を聞きつけました。それは死んだ親子の猫達の中で一匹だけ生き延びた子猫の悲鳴でした。仕事に疲れ果てていた高志は無視して帰ろうとしましたが、子猫は最後の一声以後沈黙し、たまらず高志は子猫を探し出し、少しでも子猫を温めようと缶コーヒーを買って一緒に服の中に入れ、外構工事をした事があった動物病院を目指したのでした。
深雪は勤めていた信州のエルザ動物クリニックで事務をしていました。実は深雪は信用金庫で勤めていた頃、上司のパワハラに会い、同僚達から孤立させられて深い傷を負って辞職したのでした。過保護で口うるさい母親から逃げるようにして実家を出てもう一年になりました。どこかのおばさんから休診日にも関わらず、ペットを診てくれと言い立てられ、院長は不在だと言うとおばさんにネットに悪い口コミを書いてやると言っておばさんは電話を切り、看護師の雅美は良く断ってくれたと深雪を褒めました。もう一人いる看護師の絵理香は子供の面倒を見る為にこの日は休んでいました。院長の梓が帰院し、3人で馬鹿話をしていると、高志が子猫を連れて現れました。
子猫が死にかけていると見て取った深雪は梓を呼び、梓はてきぱきと救命措置を始めました。そこで高志は初めて途方にくれました。高志は金も家族も無く、猫を飼う気は全くありませんでしたが、どうしても子猫を見殺しには出来なかったのでした。梓は辛うじて体温が上がって来た、このまま子猫を入院させるとぶっきらぼうに説明し、高志は金が無いから入院はさせられないと言うと、梓はため息をつき、この子を助けてくれて感謝する、金はいらないと言いました。
せめて今日の分は払うと高志が言うと受付の深雪は、金はいらないから時々様子を見に来てくれと頼み、高志は猫の礼だと言って壊れた玄関を修理しました。梓は費用を払うからと言って花壇の造成を頼み、高志は2日に1度は訪れて工事をし、その都度猫を構って帰りました。猫は高志に特別懐き、必死の形相で高志の作業服を昇って来て高志に甘えたのでした。
梓はこんなに猫が懐いているのに何故飼ってやらないのかと高志に尋ね、ついに高志はこの間まで飼っていた猫が留守中に老衰死した顛末を語り、自分には猫を飼う資格が無いのだと言いましたが、梓は、死んだ犬猫に天国で会った神さまが犬猫に名前を尋ねると、犬猫はいつも2つの名前を神様に言うのだと言いました。それは。。。高志はついに猫を迎え入れました。
【第二話 それは奇跡ではなく】刈泉の自宅で犬と暮らしていた久栄は最近衰えが目立つ愛犬の事を案じていました。夫は5年前に癌で亡くなり、犬は股関節脱臼と関節炎を患っていて、常々梓のクリニックに罹っていました。ある日犬は突然動けなくなって便を失禁しました。拭いてやろうとすると久栄は激しい胸痛に襲われて久栄も動けなくなりました。何とか動けるようになった久栄はエルザ動物クリニックに電話して犬を持ち込み、顛末を聞いた梓は何故救急車を呼ばないのかと久栄を叱りました。家族に助けてもらえないのかと梓は尋ねましたが、東京で奮闘している娘に頼る事は出来なかった為に、久栄は自分の病気の事すら何も伝えていなかったのでした。
梓は犬は患側とは逆側の股関節を脱臼していると言い、手術すら危うい年齢なので、脱臼を整復してもこのまま寝たきりになるだろうと言い、思わず久栄は安楽死について梓に相談しました。。。一方絵理香は深雪に、それだけ仕事が出来るのに何故そんなに自己評価が低いのかと尋ね、深雪は昔からだとだけ答えました。絵理香は動物看護士になれば良いと言い、深雪は。。。さらに絵理香はペットの安楽死について深雪と語りました。この点では梓といつも意見が衝突していたのでした。
しかし久栄の犬は見る見る弱って行き、日夜悲鳴を上げるようになって久栄は睡眠をとれませんでした。思わず久栄は娘に電話しましたが、娘は一方的に自分の日常と愚痴を語り、久栄はついに娘には何も言えなかったのでした。思わず久栄は苦しむ犬を怒鳴りつけ、大人しくなった犬を見て久栄は思わずもう楽にしてやりたいと思ったのでした。久栄は思い切って梓に安楽死を頼み、梓は一週間後に行うと告げました。しかし犬は。。。きっと犬は久栄を気遣ったのだと久栄は思ったのでした。。。一方交通事故で行き倒れて死ぬ寸前だった野良犬は壊死した脚2本を切断しても残りの2本脚でこの日初めて立ち上がり、スタッフ一同は感動したのでした。。。
【第三話 幸せの青い鳥】里沙は飼っていたオキナインコとのおしゃべりを毎日楽しんでいました。しかしインコの覚えた言葉に、低い声で何言ッテンダヨバ~カという言葉が加わりました。それは夫の直輝の口癖でした。地元で独立起業して仕事は順風満帆、しかも光り輝く男前だった直輝が何故自分と結婚したか里沙には謎でした。しかし直輝はDVモラハラ男で、里沙は激しい彼の束縛に悩んでいました。インコの覚えた言葉には更にイタイ、ヤメテとヤメテ、ゴメンナサイが加わり。。。
ある日里沙と直輝がインコを連れてエルザ動物クリニックを訪れました。インコは部屋に置いてあったチョコレートを食べてしまったのでした。梓は細心の注意を払ってインコのそ嚢からチョコレートを吸い出して洗浄しました。終わって梓は大変な剣幕で、誰がインコの前でチョコレートを食べたのかと聞きました。直輝は自分だ、インコにチョコが毒だとは知らなかったととぼけ、里沙は何度も説明したと詰りましたが、直輝は空とぼけ、てのひらで里沙の後頭部をトントン叩いて落ち着けと言うと、里沙は表情を消して沈黙しました。その夜直輝はいつものように里沙の世話を焼き、懐柔しようとしましたが、初めて里沙は直輝に従わなかったのでした。。。
梓はインコを入院させて様子を見ました。インコは安心して喋り始め、最後にヤメテ、ゴメンナサイ、ヤメテッタラ、オネガイと叫び、梓達は里沙に起こっている事を知ったのでした。翌日インコを迎えに来た里沙と直輝に梓は。。。深雪は高志に里沙夫婦の話をし、自分も同じ目に遭ったのだと初めて打ち明け、高志は深雪には何一つ悪い所は無いのだと言ったのでした。。。
【第四話 ウサギたち】草太はうんざりしながら小学校で飼われていたウサギの世話をしていました。ウサギは少しも可愛くなく、草太は自分と同じく生きていても無駄な生き物だと思い、暴力衝動を辛うじて抑えつけていました。草太がいじめっ子であるらしい事は同級生皆が知っていました。するとそこへ年寄と若い男が現れ、ウサギ小屋の横に生えていた桜の巨木を見上げ、年寄はもうこの桜は死んでいるから切り倒すしかないだろうと言いました。そして年寄は草太に、この春この桜に変わった事はなかったかと尋ね、草太は自分が気づいていた桜の異変を伝えました。すると年寄はなかなか観察力が鋭いと草太を褒めたのでした。
実は若い男は高志でした。高志はエルザ動物クリニックを訪れて、ウサギを引き取る人はいないかと尋ねました。実は小学校の校長からウサギ飼育を辞めたいと相談されたのでした。根っからのウサギ好きだった絵里香は勝手な事を言うなと激昂しました。
一方草太は屋根裏部屋に閉じ込められて熱中症になりかかっていました。母親の所に男が来ると、いつもそこに入れられていたのでした。ふと草太はあのウサギ達の事を思い出し、あの桜が切り倒されればウサギ小屋は直射日光にさらされて次の日にはウサギは皆死んでしまうと気づいたのでした。しかし草太も限界でした。コタツの脚で床を叩き、男が気づいて草太を助けてくれたのでした。助かった草太は学校でウサギ小屋の事を訴え、誰かの寄付のお陰でウサギ達は助かったのでした。絵里香は学校で生徒や保護者の前でウサギの飼い方を説明し。。。しかし草太は。。。
【第五話 見る者】少女の父親はモンゴルで獣医をしていました。少女一人を連れて父親は遊牧民に交じってゲルで暮らしていました。少女は強い馬を飼っており、その馬に乗って草原を縦横無尽に駆けるのが楽しみでした。現地の風習に逆らってバトゥと名づけたその馬を少女は可愛がり、地元民は馬はペットではないと少女を嗜めましたが、少女は聞き入れませんでした。
しかしある時、狼が家畜を狙って襲い掛かり、父親達は銃を抱えて狼を追い払いました。父親は少女にゲルから出るなと命じましたが、バトゥを案じた少女はナイフを持って馬の元へ向かい、狼に襲われかかりました。バトゥは少女を守って狼と戦い、狼を殺しましたが、バトゥは後ろ足を失いました。少女はバトゥを助けてくれと皆に頼みましたが、足を失った馬を助ける術はありませんでした。父親はバトゥを殺し。。。梓はその時その夢から目覚めたのでした。。。
その頃深雪は動物看護士になるべく資格試験の準備をしていました。週末梓は長年のファンであった歌手吉高勇次のコンサートチケットが当たって東京に行く予定を立て、同じく彼の大ファンであった高志は羨ましがりました。折柄深雪に母親が脳梗塞で倒れたという知らせがもたらされ、慌てて深雪は高志の車で松本総合病院に駆けつけました。道中深雪は母親の過干渉を語り、それでも倒れたと聞いて心配する自分がわからないと言いました。高志は深雪に、ちゃんと間に合ううちに母親から離れて正解だったと言い、まだ仲直りするチャンスはあるのだと言いました。それを聞いて深雪は泣き。。。
ICUで会った母親は弱っていました。そこに昔から深雪に嫌味ばかり言う伯父が現れ、一人娘が母親の近くにいないのは親不孝だ、さっさと動物病院など辞めて嫁に行けとまくしたて、母親がとりなそうとしましたが伯父は聞き入れず、思わず深雪がキレようとした時、何故か梓が現れました。薄化粧をしてスーツを着ている美人の梓を見た深雪は驚愕しました。梓は卒なく伯父に挨拶し、深雪は動物病院に欠かせないスタッフだと母親と伯父に言いました。伯父はたじたじとして引き下がり、梓は自分も大人の対応が出来るだろうと深雪に自慢しました。しかし深雪はわかっていました。梓はライブに行くのを止めて来てくれたのだと。
そして梓は自分はモンゴルで育った、数えきれないほど生き物が死ぬのを見たと深雪に打ち明け、馬は無理でももっと小さい生き物が脚を失っても生きていけるようにしてやりたかったのだと語ったのでした。。。
村山先生は深雪の如くに母親からの過干渉に悩まされ、それに反発する形でさまざまな奇行に走った事を「放蕩記」で告白されています。また先生は里沙のようにモラハラ被害を別の小説でも告白しておられ、本作に登場する登場人物達には先生の経験が色濃く反映されています。また先生は長く猫と暮らして癒しを貰っており、本作が上梓されるのはある意味必然であったと思われました。小説には動物との楽しい生活と共に、動物と暮らす限界も描かれます。救えない命もある、間に合わない後悔もある、赦されない過去もある。それでも人は次の命を抱き上げます。諦めから再度挑戦するのが人と動物の関わり合いなのかも知れません。
この小説では動物はいつも飼い主の鏡であります。子猫 → 高志の罪悪感、老犬 → 久栄の孤独、インコ → 里沙のSOS、ウサギ → 草太の抑圧、馬 → 梓の原罪。これは動物の治療のカルテではなく、飼い主達の治療の記録でもあったのだと思いました。
【第一話 天国の名前】土屋高志は土木作業中、ちいさな悲鳴を聞きつけました。それは死んだ親子の猫達の中で一匹だけ生き延びた子猫の悲鳴でした。仕事に疲れ果てていた高志は無視して帰ろうとしましたが、子猫は最後の一声以後沈黙し、たまらず高志は子猫を探し出し、少しでも子猫を温めようと缶コーヒーを買って一緒に服の中に入れ、外構工事をした事があった動物病院を目指したのでした。
深雪は勤めていた信州のエルザ動物クリニックで事務をしていました。実は深雪は信用金庫で勤めていた頃、上司のパワハラに会い、同僚達から孤立させられて深い傷を負って辞職したのでした。過保護で口うるさい母親から逃げるようにして実家を出てもう一年になりました。どこかのおばさんから休診日にも関わらず、ペットを診てくれと言い立てられ、院長は不在だと言うとおばさんにネットに悪い口コミを書いてやると言っておばさんは電話を切り、看護師の雅美は良く断ってくれたと深雪を褒めました。もう一人いる看護師の絵理香は子供の面倒を見る為にこの日は休んでいました。院長の梓が帰院し、3人で馬鹿話をしていると、高志が子猫を連れて現れました。
子猫が死にかけていると見て取った深雪は梓を呼び、梓はてきぱきと救命措置を始めました。そこで高志は初めて途方にくれました。高志は金も家族も無く、猫を飼う気は全くありませんでしたが、どうしても子猫を見殺しには出来なかったのでした。梓は辛うじて体温が上がって来た、このまま子猫を入院させるとぶっきらぼうに説明し、高志は金が無いから入院はさせられないと言うと、梓はため息をつき、この子を助けてくれて感謝する、金はいらないと言いました。
せめて今日の分は払うと高志が言うと受付の深雪は、金はいらないから時々様子を見に来てくれと頼み、高志は猫の礼だと言って壊れた玄関を修理しました。梓は費用を払うからと言って花壇の造成を頼み、高志は2日に1度は訪れて工事をし、その都度猫を構って帰りました。猫は高志に特別懐き、必死の形相で高志の作業服を昇って来て高志に甘えたのでした。
梓はこんなに猫が懐いているのに何故飼ってやらないのかと高志に尋ね、ついに高志はこの間まで飼っていた猫が留守中に老衰死した顛末を語り、自分には猫を飼う資格が無いのだと言いましたが、梓は、死んだ犬猫に天国で会った神さまが犬猫に名前を尋ねると、犬猫はいつも2つの名前を神様に言うのだと言いました。それは。。。高志はついに猫を迎え入れました。
【第二話 それは奇跡ではなく】刈泉の自宅で犬と暮らしていた久栄は最近衰えが目立つ愛犬の事を案じていました。夫は5年前に癌で亡くなり、犬は股関節脱臼と関節炎を患っていて、常々梓のクリニックに罹っていました。ある日犬は突然動けなくなって便を失禁しました。拭いてやろうとすると久栄は激しい胸痛に襲われて久栄も動けなくなりました。何とか動けるようになった久栄はエルザ動物クリニックに電話して犬を持ち込み、顛末を聞いた梓は何故救急車を呼ばないのかと久栄を叱りました。家族に助けてもらえないのかと梓は尋ねましたが、東京で奮闘している娘に頼る事は出来なかった為に、久栄は自分の病気の事すら何も伝えていなかったのでした。
梓は犬は患側とは逆側の股関節を脱臼していると言い、手術すら危うい年齢なので、脱臼を整復してもこのまま寝たきりになるだろうと言い、思わず久栄は安楽死について梓に相談しました。。。一方絵理香は深雪に、それだけ仕事が出来るのに何故そんなに自己評価が低いのかと尋ね、深雪は昔からだとだけ答えました。絵理香は動物看護士になれば良いと言い、深雪は。。。さらに絵理香はペットの安楽死について深雪と語りました。この点では梓といつも意見が衝突していたのでした。
しかし久栄の犬は見る見る弱って行き、日夜悲鳴を上げるようになって久栄は睡眠をとれませんでした。思わず久栄は娘に電話しましたが、娘は一方的に自分の日常と愚痴を語り、久栄はついに娘には何も言えなかったのでした。思わず久栄は苦しむ犬を怒鳴りつけ、大人しくなった犬を見て久栄は思わずもう楽にしてやりたいと思ったのでした。久栄は思い切って梓に安楽死を頼み、梓は一週間後に行うと告げました。しかし犬は。。。きっと犬は久栄を気遣ったのだと久栄は思ったのでした。。。一方交通事故で行き倒れて死ぬ寸前だった野良犬は壊死した脚2本を切断しても残りの2本脚でこの日初めて立ち上がり、スタッフ一同は感動したのでした。。。
【第三話 幸せの青い鳥】里沙は飼っていたオキナインコとのおしゃべりを毎日楽しんでいました。しかしインコの覚えた言葉に、低い声で何言ッテンダヨバ~カという言葉が加わりました。それは夫の直輝の口癖でした。地元で独立起業して仕事は順風満帆、しかも光り輝く男前だった直輝が何故自分と結婚したか里沙には謎でした。しかし直輝はDVモラハラ男で、里沙は激しい彼の束縛に悩んでいました。インコの覚えた言葉には更にイタイ、ヤメテとヤメテ、ゴメンナサイが加わり。。。
ある日里沙と直輝がインコを連れてエルザ動物クリニックを訪れました。インコは部屋に置いてあったチョコレートを食べてしまったのでした。梓は細心の注意を払ってインコのそ嚢からチョコレートを吸い出して洗浄しました。終わって梓は大変な剣幕で、誰がインコの前でチョコレートを食べたのかと聞きました。直輝は自分だ、インコにチョコが毒だとは知らなかったととぼけ、里沙は何度も説明したと詰りましたが、直輝は空とぼけ、てのひらで里沙の後頭部をトントン叩いて落ち着けと言うと、里沙は表情を消して沈黙しました。その夜直輝はいつものように里沙の世話を焼き、懐柔しようとしましたが、初めて里沙は直輝に従わなかったのでした。。。
梓はインコを入院させて様子を見ました。インコは安心して喋り始め、最後にヤメテ、ゴメンナサイ、ヤメテッタラ、オネガイと叫び、梓達は里沙に起こっている事を知ったのでした。翌日インコを迎えに来た里沙と直輝に梓は。。。深雪は高志に里沙夫婦の話をし、自分も同じ目に遭ったのだと初めて打ち明け、高志は深雪には何一つ悪い所は無いのだと言ったのでした。。。
【第四話 ウサギたち】草太はうんざりしながら小学校で飼われていたウサギの世話をしていました。ウサギは少しも可愛くなく、草太は自分と同じく生きていても無駄な生き物だと思い、暴力衝動を辛うじて抑えつけていました。草太がいじめっ子であるらしい事は同級生皆が知っていました。するとそこへ年寄と若い男が現れ、ウサギ小屋の横に生えていた桜の巨木を見上げ、年寄はもうこの桜は死んでいるから切り倒すしかないだろうと言いました。そして年寄は草太に、この春この桜に変わった事はなかったかと尋ね、草太は自分が気づいていた桜の異変を伝えました。すると年寄はなかなか観察力が鋭いと草太を褒めたのでした。
実は若い男は高志でした。高志はエルザ動物クリニックを訪れて、ウサギを引き取る人はいないかと尋ねました。実は小学校の校長からウサギ飼育を辞めたいと相談されたのでした。根っからのウサギ好きだった絵里香は勝手な事を言うなと激昂しました。
一方草太は屋根裏部屋に閉じ込められて熱中症になりかかっていました。母親の所に男が来ると、いつもそこに入れられていたのでした。ふと草太はあのウサギ達の事を思い出し、あの桜が切り倒されればウサギ小屋は直射日光にさらされて次の日にはウサギは皆死んでしまうと気づいたのでした。しかし草太も限界でした。コタツの脚で床を叩き、男が気づいて草太を助けてくれたのでした。助かった草太は学校でウサギ小屋の事を訴え、誰かの寄付のお陰でウサギ達は助かったのでした。絵里香は学校で生徒や保護者の前でウサギの飼い方を説明し。。。しかし草太は。。。
【第五話 見る者】少女の父親はモンゴルで獣医をしていました。少女一人を連れて父親は遊牧民に交じってゲルで暮らしていました。少女は強い馬を飼っており、その馬に乗って草原を縦横無尽に駆けるのが楽しみでした。現地の風習に逆らってバトゥと名づけたその馬を少女は可愛がり、地元民は馬はペットではないと少女を嗜めましたが、少女は聞き入れませんでした。
しかしある時、狼が家畜を狙って襲い掛かり、父親達は銃を抱えて狼を追い払いました。父親は少女にゲルから出るなと命じましたが、バトゥを案じた少女はナイフを持って馬の元へ向かい、狼に襲われかかりました。バトゥは少女を守って狼と戦い、狼を殺しましたが、バトゥは後ろ足を失いました。少女はバトゥを助けてくれと皆に頼みましたが、足を失った馬を助ける術はありませんでした。父親はバトゥを殺し。。。梓はその時その夢から目覚めたのでした。。。
その頃深雪は動物看護士になるべく資格試験の準備をしていました。週末梓は長年のファンであった歌手吉高勇次のコンサートチケットが当たって東京に行く予定を立て、同じく彼の大ファンであった高志は羨ましがりました。折柄深雪に母親が脳梗塞で倒れたという知らせがもたらされ、慌てて深雪は高志の車で松本総合病院に駆けつけました。道中深雪は母親の過干渉を語り、それでも倒れたと聞いて心配する自分がわからないと言いました。高志は深雪に、ちゃんと間に合ううちに母親から離れて正解だったと言い、まだ仲直りするチャンスはあるのだと言いました。それを聞いて深雪は泣き。。。
ICUで会った母親は弱っていました。そこに昔から深雪に嫌味ばかり言う伯父が現れ、一人娘が母親の近くにいないのは親不孝だ、さっさと動物病院など辞めて嫁に行けとまくしたて、母親がとりなそうとしましたが伯父は聞き入れず、思わず深雪がキレようとした時、何故か梓が現れました。薄化粧をしてスーツを着ている美人の梓を見た深雪は驚愕しました。梓は卒なく伯父に挨拶し、深雪は動物病院に欠かせないスタッフだと母親と伯父に言いました。伯父はたじたじとして引き下がり、梓は自分も大人の対応が出来るだろうと深雪に自慢しました。しかし深雪はわかっていました。梓はライブに行くのを止めて来てくれたのだと。
そして梓は自分はモンゴルで育った、数えきれないほど生き物が死ぬのを見たと深雪に打ち明け、馬は無理でももっと小さい生き物が脚を失っても生きていけるようにしてやりたかったのだと語ったのでした。。。
村山先生は深雪の如くに母親からの過干渉に悩まされ、それに反発する形でさまざまな奇行に走った事を「放蕩記」で告白されています。また先生は里沙のようにモラハラ被害を別の小説でも告白しておられ、本作に登場する登場人物達には先生の経験が色濃く反映されています。また先生は長く猫と暮らして癒しを貰っており、本作が上梓されるのはある意味必然であったと思われました。小説には動物との楽しい生活と共に、動物と暮らす限界も描かれます。救えない命もある、間に合わない後悔もある、赦されない過去もある。それでも人は次の命を抱き上げます。諦めから再度挑戦するのが人と動物の関わり合いなのかも知れません。
この小説では動物はいつも飼い主の鏡であります。子猫 → 高志の罪悪感、老犬 → 久栄の孤独、インコ → 里沙のSOS、ウサギ → 草太の抑圧、馬 → 梓の原罪。これは動物の治療のカルテではなく、飼い主達の治療の記録でもあったのだと思いました。
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- ISBN:B0G38NTVK6
- 発売日:2025年11月26日
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