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塩味ビッテン
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湊の構築する罠に捕らえられた読者は、誰が悪くて何が悪いのかさっぱりわからず困惑させられます。自殺した少女に関して語る多くの証言から真実を導き出すのはほとんど困難な巧緻なミステリー。イヤミス炸裂です。
 多くのイヤミスを描いて世間を席巻した湊ですが、やはりデビュー作である「告白」はエンターテーメントとして衝撃的でした。そして地の文や会話文を割愛して、一人語りだけで綴られていくこの「告白」のスタイルを踏襲したのが本書です。すべて一人称ですから発言者の思い込みと主幹だけで物語が構築されるため、別の発言者との間に、思い違いや齟齬が生まれこの連続が謎を深めて、読者を混乱に陥れるというミステリにとって都合のいい手法がとられているのです。本書で語られるのは、大量のドーナツに囲まれて自殺した田舎町の少女・有羽に関すること。彼女の同級生や、中学・高校の担任などからも話を聞き出していくのですが、どうやら有羽の母親が娘を虐待していた。という風に話が進んでいくのです。

 ところで本小説のキーワードは「デブ」です。「デブ」=「美しくない」ものは、それだけで不幸であるという決めつけが何度も登場し、外見に対する固執が語らせるのです。しかも先の語り手たちの話を聞いているのは、元ミス・ワールドビューティ日本代表で、テレビでも有名な美容外科医・橘久乃。そして自殺した有羽とその母親の八重子は二人とも太っていたという設定なのです。
最後には有羽が亡くなった原因も明らかにされますが、それに至る人間関係のどろどろさもさすがはイヤミスの女王の名に恥じない心暗いものです。

 外見にこだわる風潮に警鐘を鳴らす物語ともとらえられますが、イヤミス感が強いこの最高のエンターテーメントに流されて警鐘なんか吹っ飛ばされます。
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塩味ビッテン
塩味ビッテン さん本が好き!1級(書評数:2310 件)

「本を褒めるときは大きな声で、貶すときはもっと大きな声で!!」を金科玉条とした塩味レビューがモットーでございます。

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