hackerさん
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「生き物の一生とはとても短いものだね。それなのに、どうしてわたしの愛の物語は、わたしの一生よりも長いんだろう?」(本書収録『長い話』より)
仏語版Wikipediaによると、フランスの作家アンドレ・ドーテル(1900-1991)のことを、同じく作家のフランソワ・モーリアック(1885-1970)は「彼の40作の小説は、唯一の作品の多くの顔を、異なるタイトルで描いた異なるバージョンに過ぎない」と言い、「我々の小説的世界の中で最も奇妙な創造者」と評したそうです。私にとっても今回初めて読む作家だったのですが、11の本書収録作のすべてが「邂逅」をテーマにしたものだと言ってもいいぐらいで、モーリアックの言うこともなるほどと思った次第です。例によって、特に印象的な話を紹介します。
●『夜明けの汽車』
ガールフレンドと旅をしていた「わたし」は、乗っていたオートバイが完全に故障してしまい、列車で移動することになりました。ところが、当日最後の普通列車は既に近くの駅を出た後で、二人は「プラットホームで携帯食糧を食べ、それからベンチに横になって」「朝5時頃ここを通る一番の普通列車」に乗ることにします。親切な駅員が、その列車が止まるプラットホームがいいだろうということで、そこのベンチに案内してくれます。ところが、そのベンチの近くのおんぼろベンチに、別の若者が体を横にしているのに気づきます。駅員は説明します。
「あなたがたの乗る普通列車は(中略)いま腰かけているベンチのうしろ側に到着します。前のほうをよくご覧なさい。レールがすっかり錆びついているでしょう。合理化政策がとられて以来、このレールには汽車が走らなくなってしまったんですよ」
「まさに廃線なんですね」と「わたし」は言います。
「ところがですよ、まさかと思うでしょうが(中略)あの若者がここにきているのは、あの線路に貴社が通るのを待っているんです。もちろん、そんなことはありえませんから、じっさいには幻の汽車を待っていることになるわけです」
「そんなふうにまでなるなんて、あのひと、ずいぶん苦しい思いをしたんでしょうね」と「わたし」のガールフレンドは言います。
「いいえ、頭はぜんぜんおかしくはないのですが、ただ、かれはまったくついていなかったのです」
さて、なぜこの若者は「幻の汽車」を待つことになったのでしょうか。
この小説は、「わたし」のこの若者との「邂逅」、そしてこの若者が翌朝経験することになる「邂逅」のお話です。念のためですが、ファンタジーではありません。
●『金の鳥』
ある郵便配達人の話です。配達用にライトバンをあてがわれた彼は嬉しくてたまりませんでした。ちょっとぐらい遠回りをしてでも、それを利用していました。ところが、ある日、歩いて配達していた頃には、自然が本当に身近だったことを思い出します。そして、ある村に配達に行く時に、山道を直線距離で歩いた方が近いことに気づき、久しぶりに森の中を歩いていました。すると、すぐ近くに、見たこともないない光輝く鳥を見つけます。彼は、瞬時に、その鳥を追いかけることしか頭の中になくなってしまいました。手紙を入れた郵便袋を抱えながらも、素早く移動するその鳥の後を、必死に走る羽目になったのです。
●『長い話』
ある村に、けっして人に危害を加えたことはなかったにもかかわらず、「狼の一群よりもこの犬一頭のほうが恐ろしい」と言われる犬がいました。飼っていたのは、夫婦と一人息子だけの家族でした。そして「あまりに獰猛なため、誰も彼らの家から百歩以内には近づこうとしなかった」のです。この犬は「日暮れどきになると、季節にはかかわりなく、かならず家の入口をふさぐ格好で」横になり、目を光らせていたのでした。ところが、ある晩、そこに「これまた豪胆な狼」がやって来ました。二匹は、当然のごとく、戦闘に入ります。しかし、長い闘いの後でも、どちらも相手に致命傷を与えられませんでした。疲れはてた二匹は、ほぼ同時に、休息モードに入ります。しかし、休息が終わっても、もう闘うことはありませんでいた。この二匹は親友になったのです。そして、犬が村人によって殺された後、狼は驚くべき行動をとるようになりました。
これも、狼と犬の「邂逅」の話です。
この中からベストを選ぶなら『夜明けの汽車』ですが、いちばん好きなのは『長い話』です。モーリアックが指摘しているように、「邂逅」というワン・テーマばかり書いていたような作家なので、続けて読むと、マンネリ感がないわけではないのですが、それはそれで『男はつらいよ』のように(?)魅力に感じる方もいるのではないかと思います。
●『夜明けの汽車』
ガールフレンドと旅をしていた「わたし」は、乗っていたオートバイが完全に故障してしまい、列車で移動することになりました。ところが、当日最後の普通列車は既に近くの駅を出た後で、二人は「プラットホームで携帯食糧を食べ、それからベンチに横になって」「朝5時頃ここを通る一番の普通列車」に乗ることにします。親切な駅員が、その列車が止まるプラットホームがいいだろうということで、そこのベンチに案内してくれます。ところが、そのベンチの近くのおんぼろベンチに、別の若者が体を横にしているのに気づきます。駅員は説明します。
「あなたがたの乗る普通列車は(中略)いま腰かけているベンチのうしろ側に到着します。前のほうをよくご覧なさい。レールがすっかり錆びついているでしょう。合理化政策がとられて以来、このレールには汽車が走らなくなってしまったんですよ」
「まさに廃線なんですね」と「わたし」は言います。
「ところがですよ、まさかと思うでしょうが(中略)あの若者がここにきているのは、あの線路に貴社が通るのを待っているんです。もちろん、そんなことはありえませんから、じっさいには幻の汽車を待っていることになるわけです」
「そんなふうにまでなるなんて、あのひと、ずいぶん苦しい思いをしたんでしょうね」と「わたし」のガールフレンドは言います。
「いいえ、頭はぜんぜんおかしくはないのですが、ただ、かれはまったくついていなかったのです」
さて、なぜこの若者は「幻の汽車」を待つことになったのでしょうか。
この小説は、「わたし」のこの若者との「邂逅」、そしてこの若者が翌朝経験することになる「邂逅」のお話です。念のためですが、ファンタジーではありません。
●『金の鳥』
ある郵便配達人の話です。配達用にライトバンをあてがわれた彼は嬉しくてたまりませんでした。ちょっとぐらい遠回りをしてでも、それを利用していました。ところが、ある日、歩いて配達していた頃には、自然が本当に身近だったことを思い出します。そして、ある村に配達に行く時に、山道を直線距離で歩いた方が近いことに気づき、久しぶりに森の中を歩いていました。すると、すぐ近くに、見たこともないない光輝く鳥を見つけます。彼は、瞬時に、その鳥を追いかけることしか頭の中になくなってしまいました。手紙を入れた郵便袋を抱えながらも、素早く移動するその鳥の後を、必死に走る羽目になったのです。
●『長い話』
ある村に、けっして人に危害を加えたことはなかったにもかかわらず、「狼の一群よりもこの犬一頭のほうが恐ろしい」と言われる犬がいました。飼っていたのは、夫婦と一人息子だけの家族でした。そして「あまりに獰猛なため、誰も彼らの家から百歩以内には近づこうとしなかった」のです。この犬は「日暮れどきになると、季節にはかかわりなく、かならず家の入口をふさぐ格好で」横になり、目を光らせていたのでした。ところが、ある晩、そこに「これまた豪胆な狼」がやって来ました。二匹は、当然のごとく、戦闘に入ります。しかし、長い闘いの後でも、どちらも相手に致命傷を与えられませんでした。疲れはてた二匹は、ほぼ同時に、休息モードに入ります。しかし、休息が終わっても、もう闘うことはありませんでいた。この二匹は親友になったのです。そして、犬が村人によって殺された後、狼は驚くべき行動をとるようになりました。
これも、狼と犬の「邂逅」の話です。
この中からベストを選ぶなら『夜明けの汽車』ですが、いちばん好きなのは『長い話』です。モーリアックが指摘しているように、「邂逅」というワン・テーマばかり書いていたような作家なので、続けて読むと、マンネリ感がないわけではないのですが、それはそれで『男はつらいよ』のように(?)魅力に感じる方もいるのではないかと思います。
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「本職」は、本というより映画です。
本を読んでいても、映画好きの視点から、内容を見ていることが多いようです。
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- 出版社:舷燈社
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- ISBN:9784877821418
- 発売日:2017年05月20日
- 価格:1800円
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