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ソネアキラ
レビュアー:
「利他」がテーマの『幸せな王子』から笑える幽霊譚『カンタヴィル家の幽霊』まで

※ネタバレ注意! 以下の文には結末や犯人など重要な内容が含まれている場合があります。

『オスカー・ワイルド ショートセレクション-幸せな王子-』 オスカー・ワイルド作   金原 瑞人訳   ヨシタケ シンスケ絵を読む。

このシリーズ、YAものだからか、さくっと読めるのが、うれしい。このシリーズを読んで気に入った作家が見つかったら、他の作品に読み進めばいいもんね。

『幸せな王子』
子どもの時に読んで以来。いまなら「利他」がテーマの作品だといえる。金箔が胴体に貼られ、眼はルビーなど華麗なる像となった王子。肉体は滅んでも魂は生きていた。貧しい人々が多々いることに頭を痛めた王子は自分の像の一部を彼らに与えることにした。運ぶのは気のいいツバメ。王子は次々と一部をツバメに託す。ほんとうなら暖かい地方へ渡らなければならないのにツバメは寒くなる季節までツバメ宅配を続け凍死してしまう。切り売りならぬ切り与えにより、かつての面影は失せ、すっかりみすぼらしくなった王子像。再読してツバメの健気さに胸打たれた。『アンパンマン』も利他の話。ひもじい人に自分の顔であるあんぱんを与える。ただし、ジャムおじさんが新しい顔をつくってくれる。首無しアンパンマンはひたすら不気味だが。

*「私たちは「与えること」が利他だと思い込んでいます。だから「何かいいをことしよう」として、時に相手を傷つけてしまうのです。これが「利他」の持つ「支配」や「統御」という問題ですね。利他が起動するのは「与えるとき」ではなく、「受け取るとき」です。これは重要なポイントです」(『思いがけず利他』中島岳志著より)


『わがままな巨人』
巨人がずっと留守にしていたので巨人宅の庭は子どもたちの絶好の遊び場になっていた。7年ぶりに帰った巨人は、それが気に食わない。庭を高い塀で囲んで子どもたちを出禁にした。その報いか、庭には冬しかやって来なかった。子どもたちが忍び込むと春が訪れる。

『ナイチンゲールとバラの花』
若い学生は愛する女性から赤いバラの花を持ってくればダンスしてもいいわと言われた。しかし、赤いバラを見つけられず途方に暮れる。それを見ていたナイチンゲールは赤いバラを探しに行く。赤いバラがもらえる代わりに自慢の歌を歌うと。ナイチンゲールの命と引き換えに手に入れた赤いバラを持って女性のもとへ、ところが。女性の気まぐれに翻弄された彼。


『カンタヴィル家の幽霊』
カンタヴィル家は幽霊屋敷として有名だった。代々、幽霊に悩まされていた。新しい借主はなんとアメリカ公私一家。当時のアメリカ人は英国人から見れば、新興、野蛮、成り上がりものとみなされていたようだ。幽霊はいわば300年もの間、磨いた恐怖芸で怖がらせようとするが、なんと勇ましい双子から返り討ちにあう。お手上げとなった幽霊のグチが最高。笑えるゴーストストーリー。ハンナ・バーベラ*のアニメのようだし、古典落語みたいだ。で、落ちがきいている。

*アニメーション制作会社。『トムとジェリー』『チキチキマシン猛レース』や『原始家族フリントストーン』、『スクービー&スクラッピー ドゥー』、『クマゴロー』などが代表作。

『アーサー・サヴィル卿の犯罪-義務とは-』
細木数子の人生をテーマにした配信映画が話題だが、昔からひとは占いに左右されてきた。ロシアの皇帝をマインドコントロールした怪僧ラスプーチンとか。アーサー卿は手相観に「あなたは殺人をする」と占われる。結婚を控えていた卿はそれを真に受け、なぜか殺しても世間にあまり影響のない人を物色する。ところが、確かに亡くなったが、それは卿の仕掛けた毒ではなく寿命だった。以降、卿はなかなか殺人を遂げることができない。そのドタバタぶりがおかしいことこの上なし。

『デ・ラ・メア ショートセレクション 運命の時計』ウォルター・デ・ラ・メア作 金原瑞人訳 ヨシタケ シンスケ絵
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ソネアキラ
ソネアキラ さん本が好き!1級(書評数:2330 件)

女子柔道選手ではありません。開店休業状態のフリーランスコピーライター。暴飲、暴食、暴読の非暴力主義者。東京ヤクルトスワローズファン。こちらでもささやかに囁いています。

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詩や小説らしきものはこちら。

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この書評へのコメント

  1. ef2026-05-27 10:51

    オスカー・ワイルドはさすがの着眼点!
    同意であります。

  2. ソネアキラ2026-05-27 11:16

    また読みたい作品が増えました

  3. No Image

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