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爽風上々
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マルクスの資本論は共産主義を作り出しただけでなく、人類の未来にも関わっているようです。
地質年代で現在はすでに新たな時代「人新世」に入っているという説があります。
人間の活動が地球全体に大きな影響を与えていると見られるという立場からこれまでの地質時代とは変わってきたという見方です。
それは現代の温暖化、気象変動というところに特徴的に現れます。

本書題名のもう一つのキーワード「資本論」は言うまでもなくマルクスが書いて共産主義の原典ともなったものです。
ソ連の崩壊をみてマルクス主義は完全に敗北したという見方が普通でしょうが、そうとは思わないのが本書著者の斎藤さんです。

斎藤さんは哲学者ですが、マルクス主義というものを深く研究するうちに一般にソ連の体制に反映したマルクスの思想、すなわち「資本論」という書物に書かれている範囲とは異なる方向に晩年のマルクスの思索が進んでいたことを見出しました。

マルクスは非常に多くのメモを常に取り続け、そこから思索を進め著書を書いていったのですが、そのメモには著書には反映されていないものが多数含まれます。
特に「晩期マルクス」とも言うべき、資本論を送り出した後のマルクスの思索はいわゆるマルクス主義とはかなり異なるものとなっていったのでした。
そこではソ連の体制に反映していたような経済成長をもとにしたものではなく、逆に環境を守りながら成長からは脱するという、現代の脱炭素の方向性と合致するようなものだと考えられるということです。

そういった観点から、本書では現代の気候変動対策といわれている、グリーンニューディールやSDGsなどが実際には資本主義に則ったもので、決して実効的な対策ではないことを示します。
そして資本主義を守る限り、効果的な気候変動対策などできないとしています。
つまり資本主義自体が気候変動の原因と不可分であるということを示します。

これを救うのは、晩期マルクスの方向性と同じ、脱成長コミュニズムというべき体制だということです。
そこでは資本の拡大だけを追い求める資本家、経営者は不要です。
市民のコモン、共同体が活動することで脱成長を果たすことが気候変動を防ぐ唯一の方策だということです。
こういった脱成長コミュニズムは現在の資本主義のような利益だけを追求するものでなく、豊かな市民生活を取り戻せる可能性があるということです。

こういった方向性の活動はすでに各地で見られ、ワーカーズコープと呼ばれる協同組合ができています。
それが悪辣な経営者が不在でも十分に活躍できるということですが。

さて、これが現代の世界を救うものとなるのかどうか。疑問点はかなりあるかとは思いますが、考えるべきものなのでしょう。
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爽風上々
爽風上々 さん本が好き!1級(書評数:2760 件)

小説など心理描写は苦手という、年寄りで、科学や歴史、政治経済などの本に特化したような読書傾向です。
熊本県の片田舎でブラブラしています。
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