柳下毅一郎さんの映画本は、これまでも何冊か読んできていますが、いつも思うのは、これだけの映画を飽きもせず(いや、飽きているのかもしれませんが)、観続けているのはすごい、ということに尽きます。
本書では44本の邦画の映画評があるのですが、そのほとんどが、タイトルすら知らない映画。知っているのはせいぜい「マスカレード・ホテル」と「男はつらいよ お帰り 寅さん」ぐらい。「マスカレード・ホテル」にしても、先日テレビでやっているのを観て、へ〜こんな映画だったんだ、ぐらいの感想をもった程度です。
そしてまぁ、ここで紹介されている映画、タイトルにもあまり興味は湧かず、評を読んでも全く観たいとも思えない。これがすごい。どちらかと言えば、よく柳下さん最後まで観たなぁ、えらいなぁ、という感想。
巻頭に書かれているように、どちらかというと映画を観る、というよりも、映画を看取っている人の手記を読んでいるかのような感覚にとらわれます。
本書(および一連の柳下さんの仕事)は、「駄作」「珍作」「問題作」に対し、歯に衣着せぬ批判をすることで、見方によればこき下ろしているようにも見えますが、全体を通して、やはり映画愛にあふれていることは間違いありません。個々の作品にかかわっている人からすれば、腹もたつことがあるかもしれませんが、このまま世の中の人が映画に興味関心を失っていけば、映画館がなくなり、上映できる機会がなくなってしまいます。
この映画こき下ろしの先には「みんな、もっとちゃんといい映画を作って、多くの人に映画の魅力を伝えようよ!」という柳下さんの願いがあるように思えたりもするのです。
それにしても、よくもまぁ、これだけの映画を観られているものです。
内容とは別に気になった点が1つ。表紙の貼り合わせの具合によるのでしょうが、ページをめくるたびに表紙がキュッキュと鳴ります。
本で紹介されている映画の内容の悲しさが増幅されるような効果があり、よりいっそう気持ちが沈みます。
全面接着するか、接着しないでカバーでくるむだけの方が、ページをめくりやすかったように思いました。
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