その女アレックス

私は「おぞましい」のがかなり苦手で。ゆえに“ケッチャム”など（読んだことないですが）、書評が上がってくるだけで警戒モードです。

『その女アレックス』、若い女性が誘拐されて変な鳥かごのような物にいれられた挙句ひどい目にあわされる話になったので、ヤバイなと。その感じは裏切られず息苦しい展開が加速していく。

それにしても、この誘拐事件を追う刑事のキャラが際だっている。主人公はパリ警視庁のカミーユ・ヴェルーヴェン警部。身長が百四十数センチと小学生くらいしかない。ガキみたいな刑事が、凄惨な現場に颯爽と現れる。彼は見た目は子どもだが、経験豊富で頭は切れ部下の信頼も厚い。

そして彼が率いるヴェルーヴェン班がなんとも魅力的。とても不幸な事件の影響から数年ものあいだ解散状態にあったが、今回の事件を機に再び集結した。このチームのキャラ構成の鉄板さ、私には「〇〇レンジャー」といった戦隊が思い浮かぶ（ただし、ピンクがいない）。パリの雰囲気もあるのであまり良い例えではないですが。

非常におぞましい事件も、このチームとなら勇気を持って追っていける気がする。

冒頭に書きましたが、私はこの手の話にはかなりの警戒心をもって臨みます。そして事前情報から、相当に手の込んだ仕込みがされていることが分かっていたので、なおさら身構えて。

ただ、この話をもっと楽しむにはリラックスが必要でしたね。ジェットコースターは体の力を抜いて身を委ねてしまったほうが、快感が増します。

とはいえこの週末はまったく手放せず、終盤はランニングマシンの上で走りながら読み切りました（デジタル版だったので）。張りつめる緊迫感で呼吸と心拍数がかつてない程のやばいところに行きました。もう少しで泡吹いて犠牲者となるところでした。