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Wings to fly
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人類とアンドロイドと先住異生物の800年にわたる物語、ここに開幕。
☆上下巻合わせた書評です。

地球人類の大型移民宇宙船・シェパード号が到着した恒星の周りには、四つの惑星が存在した。海と酸素大気のあるたったひとつの惑星に、新しい植民地を建設しようという計画は、最初から失敗した。シェパード号は惑星の丘に墜落し、地中深くめりこんだ。多くの人間が死に、貴重なハードウェアとソフトウェアが失われ、信頼できる電子記録は消滅した。

生き残った人々が、破損を免れたシェパード号の発電炉を起動させ、これを唯一のエネルギー源として活動を始めてから300年。十巻完結予定の大河SF小説「天冥の標」、第一巻で語られるのは、メニー・メニー・シープと名付けられた惑星の移民の子孫たちと、彼らが連れてきたロボットとアンドロイド、原住知的生物が遭遇した、西暦2803年の出来事である。

正直に言うと、大河SFとしての重厚さはアシモフの「銀河帝国興亡史」に、登場人物の魅力と”読者に先を読まずにはいられなくさせる力”は、田中芳樹の「銀河英雄伝説」に一歩及ばない。出てくる人たちが、あっさり死にすぎるのも好きではない。しかしスピーディーな展開、謎が謎を呼ぶ緊迫感には惹きつけられるし、SFでしかお目にかかれない人物設定も面白い。

宇宙空間での活動のため、電気代謝に体質改造し酸素呼吸を必要としない<海の一統>。性愛奉仕のために作られ、己のアイデンティティを求めて芸術的作品を生み出そうとするアンドロイド。原生生命体<石工>は人間に使役され、痛みの感情を群れで共有している。素朴な村人のようで、意外な力を持っているらしい謎めいた羊飼いたち。この惑星の羊がなぜ、生まれつき体の中に機械が埋まっているのかも、まだ明かされていない。

シェパード号を再び宇宙へ飛び立たせ、植民惑星を捨て去ろうと画策する独裁総督ユレイン三世。女性議員エランカが、<海の一統>の若き統領や医師セアキ・カドムらと力を合わせて革命を起こす話なのかと思ったら。総督の画策の裏には全く別の事が隠されており、幕切れに惑星の人類たちは予想外の恐ろしい事態に遭遇し、どんでん返しの直後に物語は終わる。

第二巻では800年時間を遡って事の発端が語られるそうだ。ここに話が戻るまで、いったい何巻読めばいいというの?2803年に生きてる人たち、どうなるの?私の心には今、「とんでもないモノに手をつけてしまった。」という気持ちが広がっている。


勝手にコラボ企画2:「ハヤカワ文庫の100冊 2015秋」参加の書評です。






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Wings to fly
Wings to fly さん本が好き!免許皆伝(書評数:862 件)

「本が好き!」に参加してから、色々な本を紹介していただき読書の幅が広がりました。

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この書評へのコメント

  1. Wings to fly2015-11-13 18:15

    勝手にコラボ企画2:「ハヤカワ文庫の100冊 2015秋」も、これで94冊目。秋も深まり、残り6作品となりました。未投稿の作品はこちらです。

    ・海外SFハンドブック
    ・MOUSE(牧野修)
    ・富士学校まめたん研究分室(芝村裕吏)
    ・My Humanity(長谷敏司)
    ・極秘偵察(ドルトン・フュアリー)
    ・トレインスポッティング(アーヴィン・ウェルシュ)

    12月20日まで開催しています。どれか読んで下さる方、大歓迎!
    お待ちしています(^^)
        ↓

    http://www.honzuki.jp/bookclub/theme/no229/index.html#com2th-10461

  2. 小太郎2015-11-13 19:58

    昔読んだ本の書評は書かないと決めていたんですが(書くと大変な事に 汗)
    上記のMOUSEとMy Humanityは読んでいるので、どうしてもの時は連絡くださいねww

  3. Wings to fly2015-11-13 20:14

    きゃー!小太郎さんありがとう
    ・°°・(>_<)・°°・完璧な涙(笑)
    どうしても書いて‼︎ 是非是非、「MOUSE」をお願いしたいですっ!My Humanityはたけぞうさんが、海外SFハンドブックはBOOKSHOP LOVERさん(中の人・本が好き!通信でお馴染みの和氣さん)が取り組んで下さるそうですので^ ^
    小太郎さんが企画に参加してくださったら嬉しいです♡♡
    待ってまーす!

  4. Wings to fly2015-11-13 22:36

    タカラームさんが『極秘偵察』を読んでくださったので、あと5冊になりました!

  5. mo to riru2015-11-14 19:20

    「天冥の標」はシリーズ最新作Ⅷのジャイアントアークpart1・2で、Ⅰの続きを読めますよ。
    もちろん順番に読まないと登場人物たちの背景が飲み込めませんが。
    最初は理解していなかったのですが、本シリーズはすごい作品です。
    数年かけて読んできて、小川一水さんの意図するものがようやく少し見えてきた、という感じです。
    ようこそ、「天冥の標」の世界へ。

  6. Wings to fly2015-12-13 20:04

    mo to riruさん
    「天冥の標」新参者に温かい歓迎の言葉をありがとうございます^ ^
    くぅ〜〜‼︎ この続きへの道程は果てしない(笑)
    しかしmo to riruさんに「すごい作品」とお墨付きをいただいたので、読み進める決心がつきました。少しずつゆっくりと、2803年までの道を歩んで行こうと思います。見えてくる世界がどう変化するか、楽しみです。

  7. mo to riru2015-11-15 09:28

    わーい仲間が増えた!
    長いシリーズをリアルタイムで追っていると、新刊が発売されるまでに以前の話を忘れてしまい読み返しのループにはまってしまうのが悩みです。
    私にとってこのシリーズは軽く読み流すというには重たいので、今は、ゆっくり周回遅れで景色を楽しみながらゴールでリアルタイム組に追いつく方がいいのかなぁと思っております。
    楽しみなシリーズがあるというのは幸せですね。

  8. No Image

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