六人の超音波科学者
前作から引き続きシリーズ後半にきて加速度的に面白い。珍しくクローズドサークルで繰り広げられる殺人事件。真相は森作品らしく、ドロドロとした復讐劇ではなくあくまでも理論的な選択の一つとしての殺人だった。
本が好き! 1級
書評数:250 件
得票数:398 票
好きな小説のジャンルは問いませんが、自らの傾向を見てみると比較的ミステリーが好きなようです。ただどんな小説にもミステリー要素というものが存在している為、一概にひとくくりには出来ないのですが、「犯人を当てる」もしくは「謎を解明する」という部分を物語のキーポイントにしているような小説を読む事が好きなようです。答えを読者に投げかけるような小説も嫌いではありませんが、そういう突き放した小説には読むべきタイミングがあり、そのタイミングを間違えると、どんな名作も駄作になると思っています。人の出会いと同じく本との出会いもタイミングが合うと幸せです。
一応、評価というものを付けています。評価方法としては衝撃度・独創性・洗練・感性・余韻を意識してますが、はっきりいって当てになりません。自分の為のメモ書きのようなものです。独創性がなかろうと、面白いと感じたものが面白い!で良いと思ってます。また、一度目に読んだ本が二度目には色あせて見えたり、その逆があったりという事も良くあります。10歳の時に読んだ本が60歳になっても同じように面白いとは思いません。本の面白さとは『本の内側』である内容・表現と『本の外側』である読み手の心境・環境が合致した時に生まれるものだと思っています。
ただ、個人的ランキングの上位(★8~10)に入る作品は、読んでいる自分自身の感情(楽しい、嬉しい、悲しい、恐ろしいetc)が突き動かされるような作品が多いようです。スポーツものに関して内側から燃えるような感情が湧きあがる事が多いのですが、数が少ないので日々探し中です。また、青春ものは疾走感がある話も好きですし、逆に思春期特有のほろ苦さがある話も好きです。
また、作者に対して「コイツはやられたぁ」と思うような作品も比較的好きです。叙述トリックも大歓迎です。善意なる騙しには思わず笑みがこぼれるようです。倒叙ミステリーも好きで犯人が論理的で頭の回転が早ければ早いほど面白く感じます。
前作から引き続きシリーズ後半にきて加速度的に面白い。珍しくクローズドサークルで繰り広げられる殺人事件。真相は森作品らしく、ドロドロとした復讐劇ではなくあくまでも理論的な選択の一つとしての殺人だった。
前作との繋がりが深く連続して読むとより一層楽しめる。ここにきてやっと紅子の魅力がわかってきた気がする。最後の手紙で保呂草の魅力も損なわれなかった気もするので登場人物を好きになれる一冊だった気がする。
保呂草の展開が楽しみでサクサク読めた。トリック&犯人が想像と一致したので嬉しい。ただ、車の窃盗の罪は問われないのか?「どんな出来事でも、ある観測点から見れば奇跡である。」なるほど、と何度も思った。
物語の本当の結末は最後の一行だった。紅子・保呂草にも感情移入が出来なくてもどかしい。特に紅子は一般家庭で育った真賀田博士を見ているようで読んでいてドキドキ。そして主人公達の関連性の危うさにもハラハラ。
タイトルが秀逸。話はポップな印象。読み終わってから振り返ると、林が出てこないので、微妙にドロドロした女の争いがないので読みやすく感じた。今後もドロドロがあるのかなぁ。そこだけなんだか心が疲れてしまう。
それぞれの役割分担がハッキリしてきた印象。トリックは読んでいくと納得してしまう所がスゴイ。保呂草と紅子の会話は絶妙なバランスだと思う。紅子は他の三人となにで繋がっているんだろうか、興味が尽きない。
紅子に犀川先生のような魅力をまだ感じることが出来なかったが、今後どうなるのか楽しみ。全編通して相変わらずの森節を読んでいるだけで幸せ。人間のエゴの集まりが今の社会という考えは地味に納得できてしまった。
長文レビューにて感想。
H24/03/28 幼児誘拐事件が発生。警視庁との合同捜査の中、犯人に引き回され目の前で犯…
犀川先生が格好良い、諏訪野も良い味を出している。ただ解釈の難しい作品もあるので、ある種の詩のように、不思議さと言葉の美しさを感じるように努める必要があった。あとがきの富樫氏の解説は一読の価値あり。
事件はシンプルなのに真相へのアプローチと、探偵役を康正(読者)と加賀に分けることで、事件に深みを持たせている。真実が塗り替えられ複雑になるはずなのに、非常にわかりやすく読めるのは作者の実力だと思う。
ショートショートは素材の面白さが無ければ成り立たないが、たった2ページの話の中でもニヤリとしてしまう物語があったりと、素材を存分に味わう事が出来た。S40年代の作品なのに今読んでも色あせない。
言葉で伝えにくい感情はユニークな表現で伝え、言葉にできない感情は言葉にしないまま伝えてくれているような文章。大きな起伏のある物語ではなく、日常の中でゆれる心と冷静な心が淡々と状況を伝えてくれる。
長文レビューにて感想。
H24/03/28 非常に楽しめた。 『マリオネット症候群』 物語の導入部分や魂の…
叙述トリックに気が付いてしまったのが残念だった。しかし核心まで至らなかったし、もう一つの犯人は想像すらしておらず素直に驚愕!医師の存在も邪魔にならないアクセントに思え、物語の進行、結末と楽しめた。
奇抜な発想と倫理破綻した人間関係が面白い。彼らの無邪気さが残酷すぎて心がつらい。ただ最終話に関しては話の落とし所として妙に中途半端な印象がある。三部作との噂をきいているので、続編たちに期待したい。
登場人物に感情移入しにくい。「陽炎のように」真紅郎の心の傷に少しふれつつ、推理をしていく話。ただ、シリアスな真紅郎の過去に対して、シンクロしない・・・等の駄洒落的要素は果たして必要なのだろうか?
読み始めは「う~ん」と思ったがなかなかどうして読ませられる。風刺のきいた作家という評判があるが、あまりそういった印象は受けなかった(この作品だけか?)。ただ、話の中身は強烈だった。
序盤の佳帆の行動理由や言葉が妙に突飛だと感じたが、真奈の事件をふまえて考えると納得できた。構成も抜群で、良い意味ですっかり騙されてしまっていた。手紙のくだりは真奈の性格と手紙内容を思うと涙が流れた。
台詞が浮いて聞こえたり、小説の登場人物の性格等に一貫性を感じないなどの人間描写不足を感じる。世露は口説く気もないのに、「俺がお前の居場所になってやるよ」なんて言っちゃだめ。石田純一じゃなきゃダメ。
人格形成の骨組みとなるエピソードが少なく読んでいて置いてけぼり。そもそも柚希が星乃叶をそんなに愛していたという事に驚いた。また、身近な大切な人に何年も重大な嘘をつかれたら、人はあんなに簡単に許せない。