沈黙を破る者





「総統と国家と国民のために倒れる」(作中で引用される第二次大戦中のドイツ兵の死亡通知) 否応なしに戦争に巻き込まれていったドイツの6人の若者達と、一枚の写真が掘り起こしてしまう50年前の真実
「どんな戦争でもそう。悲しむ時間がないというのは、人間存在のひとつの次元を失うことなのよ」(本書登場…

本が好き! 1級
書評数:2352 件
得票数:45055 票
「本職」は、本というより映画です。
本を読んでいても、映画好きの視点から、内容を見ていることが多いようです。





「総統と国家と国民のために倒れる」(作中で引用される第二次大戦中のドイツ兵の死亡通知) 否応なしに戦争に巻き込まれていったドイツの6人の若者達と、一枚の写真が掘り起こしてしまう50年前の真実
「どんな戦争でもそう。悲しむ時間がないというのは、人間存在のひとつの次元を失うことなのよ」(本書登場…




生涯ボヘミアンとして生きた作者が語る「憑かれた人々」の物語集。イギリスの名門出身らしく、上品な「エロ(少しだけですが)、グロ、ナンセンス」です。
ジョン・コリアは1901年、落ちぶれたロンドンの名門に生まれ、イギリス、フランス、アメリカの各地を転…




「ホロコースト文学の大半が、体験時には分からなかったはずの事実まで、分かっていたように扱っているのに違和感を感じていた」2002年度ノーベル賞作家による「静かな」自伝的作品
「(この作品は)小説の作法にのっとりながら、収容所体験を後から振り返るのではなく、まさに経験していた…



最初に書いた小説の題が『ある飢えた学生』というぐらい困窮していた上、片思いの痛手から三度の自殺を試みたという学生時代をおくった作家が描く、テロリスト5人を含む7人の囚人の死刑執行直前の姿
1871年に帝政ロシアに生まれた作者は、訳者あとがきによると、少年時代に父親を亡くし「後に残されたの…




ブルガリアというと、まず連想するのはヨーグルト?それともワイン?私はワインですが、文学も捨てたものではありません。
パーヴェル・ヴェージェノフは1914年、ブルガリアの首都ソフィア生まれで、この世代の東欧・旧ソ連の多…





スペイン内戦を直接語るのではなくて、それに巻き込まれた人々の、傍目にはささいなことと思われる出来事への反応を描いて、内戦の時代とそれを生き抜いた人々を感じさせる短編集
「作家というのは書いた作品と時間との産物なのであり、つまり作品こそが時の子宮に作者像という子どもを孕…





「ウクライナと日本は地理的に非常に離れているけれど、二つの国民性には一つの共通の特徴があると思う。感情的な、センチメンタルな部分。他人の前には出さなくても、内面には非常に暖かい心がこもっている」
オリガ・ホメンコは、ウクライナの首都キエフに生まれ、10代前半でチェルノブイリの災害を体験しました。…





私が、ここ10年の間に初めて読んだ書物の中では、間違いなく最良のミステリーの一つです。
「この本は福島の原発事故をきっかけに生まれました(中略)壊滅的な規模の自然災害。でも、自然災害に対し…





「ぼくはこんなふうに生きるために生まれてきたんじゃない。そこまではわかっている。が、じゃあ代わりにどう生きればいいのかというと、さっぱり見当もつかない」(本書より)
「長期的に見た場合、システム内でのごくわずかな変化が、どこか別の場所で、思いもよらない大きな影響を及…





人間はいろいろな災害を何度も乗りこえ生きてきたことを、思い出させてくれる絵本です。
作者の興安(ヒンガン)は1973年にモンゴルに生まれました。モンゴルの大学院では水墨画を学び、卒業後…





「なるほど、私たちは、現実的でなければ生き残れないという時代に生きている、しかし、いつの時代であっても、人間が本質的に夢と理想を必要としていることは確かなことである」(作者による『はじめに』より)
カマ・カマンダは、1952年生まれのコンゴの作家です。15歳で処女短篇集を出版しましたが、その政治活…





「古来、樹木は、神秘的で聖なる感情を人にいだかせ続けてきた。そして、森は祈りの最初の場所であった(中略)それから幾星霜を経た今、森林破壊という現象は、地球のあちこちで再燃している」(『アカマツ』より)
「私たちは樹木についていかに多くのことを、いまだ知らずにいることか。そして進歩の名のもとに、いかにそ…





1828年アイルランドに生まれ、莫大な遺産を放蕩で使い果たした後、24歳でNYに渡り小説を発表するようになりますが、南北戦争に北軍として参戦し、わずか34歳で謎の多い生涯を終えた作家の短篇集です。
「『今から思うと』とアグネスは答えた。『わたし、馬鹿なことに何千ドルも無駄使いをしたわね。あの十分の…


「80年代のサラエヴォは、若い日々を過ごすのは最高に美しい場所だったーなぜ知っているかといえば、私もそのころ若かったからだ」本書で最も印象的な文章ですが、逆に最大の欠点かもしれません。
本書の作者アレクサンダル・ヘモンは、1964年に旧ユーゴ、ボスニア=ヘルツェゴヴィナの首都サラエヴォ…




H.G.ウェルズ、コナン・ドイル、ジョゼフ・コンラッド、ヘンリー・ジェイムズ、名だたる作家をおさえて、エリザベス・ボウエンの作品がタイトルになった点に、このアンソロジーへの編者の思いがあるようです。
9篇のイギリスの怪奇小説が収められたアンソロジーです。収録された作品の内容とは別に興味深いのは、なぜ…


この晩餐の後味の悪さは天下一品です。そういう意味では評価しても良いのかもしれませんが...
訳者あとがきによると、作者のヘルマン・コッホは、オランダ生まれで、俳優兼小説家として活躍しており、2…



書きたいものが書けなくなった作家の、それでも何か書かずにはいられない物書きの性
ローベルト・ヴァルザー(1878-1956)は、スイスのドイツ語圏ベルン州出身の作家です。本書の訳者…





本書は、音楽プロデューサーであり、評論家であり、優れた翻訳家でもある永瀧達治が、3年がかりで完成させた、ボリス・ヴィアンの詩と画家ミシェル・グランジェのコラボレーションです。
ボリス・ヴィアンについては言うまでもありませんが、絵のミッシェル・グランジェについて補足すると、19…




「ほかの者と同様に、殺す必要があったから殺したのである。それを誰も理解しようとしない(中略)私は自分のしなければならぬことをしているだけである。それ以外の何でもない」シムノンが描く連続絞殺犯の肖像画
シムノンは実生活では漁色家として知られ、娼婦も含めて、生涯一万人の女性と関係を持ったとも言われていま…




「この惑星には墓場しかないのかね?」(登場人物の一人の述懐)レムの「未知との遭遇三部作」の第一作。現代の地球のおぞましい寓話です。
惑星エデンへの着陸に失敗した宇宙船、地表に埋もれた形で、かろうじて破壊をまぬがれた宇宙船には、6人の…