近代日本一五〇年――科学技術総力戦体制の破綻




「そしてそのような『産軍学複合体』は、二〇世紀における『科学の体制化』のさらに進んだ形態として、二一世紀の『リバイアサン』として、私たちの前に登場している。」(序文、ix)
ある世代もしくはある予備校(特に理系)に通ったことのある人にとって、思い入れのある著者名であろう。…

本が好き! 1級
書評数:691 件
得票数:8205 票
学生時代は書評誌に関わってました。今世紀に入り、当初はBK1(現在honto)、その後、TRCブックポータルでレビューを掲載してました。同サイト閉鎖から、こちらに投稿するようになりました。
ニックネームは書評用のものでずっと使ってます。
サイトの高・多機能ぶりに対応できておらず、書き・読み程度ですが、私の文章がきっかけとなって、本そのものを手にとってもらえれば、うれしいという気持ちは変わりません。 特定分野に偏らないよう、できるだけ多様な書を少しずつでも紹介していければと考えています。
プロフィール画像は大昔にバイト先で書いてもらったものです。




「そしてそのような『産軍学複合体』は、二〇世紀における『科学の体制化』のさらに進んだ形態として、二一世紀の『リバイアサン』として、私たちの前に登場している。」(序文、ix)
ある世代もしくはある予備校(特に理系)に通ったことのある人にとって、思い入れのある著者名であろう。…





「向島寺島町にある遊里の見聞記をつくって、わたくしはこれを墨東綺譚と命名した。」(「作後贅言」より、143頁)
この2月に、1960年封切りの本作の映画(山本富士子主演)を観た。原作をかなり翻案している印象があ…




「『数字に何がわかるのか』という気持ちを、私たちは常に持っている必要があります。」(はじめに、5頁)
たいていの本や大学などの講義名も「統計学入門」であるのだが、統計学の修得を目指さない統計入門はない…





「十二年と七週と四日の間を生き抜き、最期まで勇敢で、聡明で、意識ははっきりとしていた。死因は、極度の老衰であった。」(150頁)
世界的によく知られている動物記録文学です。原書は1953年刊行、日本でも何度か訳出されてきたそうで…




「自分の分析を明確に文章にするような批評ができるようになると、作品を他の人と楽しくシェアできるようになります。」(プロローグ、11頁)
あるきっかけで著者の名をおぼえ、いろいろと著作を出していることを知った。書評執筆の参考になるのでは…




主人公にとって、この夏休み最初の8日間で最も強烈なひと言は、「あら、気づいたの」(323頁)でしょう。
2021年11月になって樋口有介氏の訃報が伝えられてから、未読の作品を少しずつ読んでいます。その後…




「『日本例外論』をくつがえす」(はじめに、10頁)
2003年刊行とずいぶんと経ってはいるが、「日本近代をどう理解したらよいのか」という本書も共有する…





「……うまく言えねえが、……おら、 その本の自由を、その本の強さを信じたいなって」(113頁)
しばらくのあいだ、「気になる1冊」でした。どう見ても「涙を誘う感動もの」で、安直には手を出しかねて…





「結局、われわれを労働者階級の生活特質に本当に近づけてくれるのは、いくつかの小説しかない。」(19頁)
文庫版にして650頁、読む者を拒むような製本限界的な厚さ。それでも本書を手にしたのは、文庫化を機に…





「それで? これからどうするの? アミル」/「馬を見るんですよ」/・・・/「本当に馬を見るだけ?」/「・・・・・・? 馬を眺めるのは楽しいでしょう?」(89~90頁)
表紙はアミルさんとカルルクの仲睦まじいツーショットです。本シリーズの中核を成す2人ですが、本巻の内…




学術書が想定すべきは「二回り外、三回り外の読者」、盛り込まれるべきは「二回り外、三回り外への表現」
『学術書を書く』、 『学術書を読む』 、いずれも大上段にふりかぶった書名である。一方、出版社が京都…




(樋川)「ずっとここで君を見下ろしていたなあ」/(澤野睦美)「ずっとみあげていました」(108頁)
この作品を知ったのは 『長嶋有漫画化計画』 という企画本でした。長嶋有のほぼすべての作品を別々の漫…




「最後に言っておきたいことは、個々のツールを憶えこむのが技法ではない、ということだ。」(176頁)
著者は元国会図書館司書にして、現在は近代出版研究所を設立・主催、『在野研究ビギナーズ』内でもインタ…





「美乃ちゃん ヘンなの。」(スナップ写真を撮られたときのロカのセリフ。『花の雨が降る』、22頁)
作者自身による紹介は「これは、ポルトガルの国民歌謡『ファド』の歌手をめざす どうでもよい女の子がど…





「僕がたまたま新聞紙上で、その町が火事になって町並はあらかた焼けたという記事を読まなかったならば、僕は今更こんな古びた記憶を探りさえもしなかっただろう。」(125頁)
2024年2月に、映画「廃市」を映画館で見る機会を得ました。ある春休みに読んだ大林宣彦監督のエッセ…




「それにしても、『愛』と『自由』と『死』のような抽象概念が、(中略)すべて一種の『幻想』かもしれないということが見えてきて、強烈な体験でした」(会社員、246頁)
『理性の限界』 『知性の限界』 から続く、現代社会と科学の課題を哲学を軸にアプローチした「限界…





『憧れの国へようこそ。あなたの憧れが未来への原動力です』(四谷文化センター入口の掲示より、『日曜は憧れの国』17頁)
女子中学生4人を主人公とする「校外活動青春ミステリー」とのことで、 『日曜は憧れの国』 が正編、『…





「世界中のミツバチについても同じことを言いたい。生き延びてほしい。」(エピローグ、329頁)
2000年代半ば米国でより話題になりはじめた「ハチの大量死」を追ったノンフィクションである。200…





「窓の向こうには、どこまでも青い海と島影が見える。俺にとっては、パソコン画面に映し出された異世界の風景よりも現実感のないものだ。」(文庫版、31頁)
主人公で語り手は30歳手前の自称「ネトゲ廃人の自宅警備員、要するに無職ニート」。ゲームの中での名前…





「『マルサの女』では、主人公の女性国税査察官が被疑者の家の前のゴミ箱に捨てられたレシートを集めて、脱税を暴く。そのレシートに相当するのが木簡といえよう。」(「一 木簡は語る」、4頁)
高校までの日本史の教科書で、木簡を扱っていた記憶はほとんどない。そういうものが「ある」程度の記述で…