ぼくたちは何だかすべて忘れてしまうね




岡崎京子唯一の物語集。物語の輪郭は淡く、美しく、残酷。単一の、愛とか、憎しみでなく、単純な、絶望とか、希望でもない。痛々しいまでに真っすぐな自我に苦しさを感じながら、もう何度も読み返している物語。

本が好き! 1級
書評数:82 件
得票数:1524 票
文芸中心に読んでいきます。




岡崎京子唯一の物語集。物語の輪郭は淡く、美しく、残酷。単一の、愛とか、憎しみでなく、単純な、絶望とか、希望でもない。痛々しいまでに真っすぐな自我に苦しさを感じながら、もう何度も読み返している物語。



作家、万城目学と門井慶喜による近代建築ルポ対談。両氏が選んだ各地の近代建築を思い入れと薀蓄を交えて紹介。初出が雑誌連載の所為か、建物紹介がやや駆け足ぎみで物足りなさもあるが、建築愛が感じられて楽しい。




わたしの好きな小林秀雄
随筆「人形」のこと 小林秀雄の随筆「人形」は、著者が列車内で体験した出来事をつづった短い随想…




旅立つ子どもたちに「あこがれ」を
本書は教育者であり、「子どもの権利条約の精神的な父」と讃えられたユダヤ系ポーランド人ヤヌシュ・コル…



「ぼくには与えることがまだいっぱいある」1冊の古書が語り出したのは自らの来し方だった。持ち主たち、隣り合わせた本たちとの思い出。そして、読まれることの喜び。本棚に眠る本をもう一度とり出したくなる一冊。



(読了前)沢田マンションすごい→(読了後)沢田夫妻!すごい!! 究極のセルフビルド建築、沢田マンション建設にかかる驚きのドキュメンタリー
沢田マンションとは高知県高知市に実在する、オーナーの自作により建設された賃貸集合住宅である。 1…




屋久島から上京した少年の父親探しの物語。ストーリーは入り乱れ、複雑さを増しながらも、スピード感あふれる展開で一気に読ませる。ラストは正に不意打ちといえる収束をとり、その意外さはだれかと共有したくなる。




ぼくは覚えている・・・のことを。 1つのフレーズを繰り返して書かれた詩、もしくはメモワール。断片の中から著者の自我が立ち上がり、共感と発見がある。感受性豊かな視点を独創的な表現方法で表し、成功した1冊。



「私」を貫くこととしてある「ユートピア」について
第148回芥川賞候補作「美味しいシャッワーヘッド」と書き下ろし3篇を含む、7篇からなる短編集。連作…



1506年、ミケランジェロはトルコ皇帝より橋の設計の依頼を受け、イスタンブルに赴く。子供たちには、戦や、王、象、愛について話してあげて。そうして語られる、イスタンブルのまだ架けられていない橋の物語。



これから建築の世界を目指す人向けの一般書。 一線の専門家14名が様々な切り口で建築を紹介する。 建築学の広さを示すと共に、内藤廣「あきらめないでほしい、やっているうちになんとかなる」など、激励の言葉も。





なにもかも、西瓜糖の言葉で話される、あらかじめ喪なわれた世界
リチャード・ブローティガンは1950年代にアメリカで起こったビートニク文学の一端を担ったとされる…




サンドイッチ店トロワと、それをとりまく人々のゆるやかな日常を描いた物語。 結局のところ、これは恋愛小説である。 しかし、恋について語る声はあまりに小さく、それが何ともかわいらしいのである。巻末におまけ付。



初期短編「パン屋襲撃」「パン屋再襲撃」の改稿に、ドイツ人画家のカラーイラストをふんだんに添えたアートブック。 大幅な改稿ではないので、作品を網羅したい村上春樹ファンや、装丁に惹かれた方に。




川端康成文学賞受賞作「犬とハモ二カ」を表題作とした短編集
6篇の独立した物語からなる短編集。 あるひととき空港に居合わせた人々の群像劇 「犬とハモニカ…



一通の手紙をきっかけに、記憶をたどる老人の物語。記憶はいつしか美化され、ねじ曲げられる。それでいいのかもしれない。真実を暴いた所で、もはや過去は過去でしかないのだから。優美な文章と賞される文体も秀逸。



建築家、原広司による集落についての100のアフォリズム。建築分野の本ではあるが、文章は難解かつ詩的で、そのフレーズはもはや哲学書の風格。様々に個性的な集落の写真も美しく、見応えがある。




仕事で句読点の打ち方に悩んでいたときに勧められた本。 1冊読み通すのがしんどければ、第三章(修飾の順序)と第四章(句読点のうちかた)だけでも読む価値あり。




吉野裕之の歌は、淡い印象ながらも長く記憶に残る。藤原龍一郎は他愛ない連想と批判したが、後年、その連想の軌跡を静謐な思考の流れと評価している。他愛なくも静謐な連想、確かにそんな歌。




新訳に際し、訳者は必要以上にわかりやすさに配慮していないとしている。結果、わたしは前よりマルティンが好きになったように思う。しかしながら、この本のすばらしい「まえがき」は、やはり岩波が最上である。