昨夜のカレー、明日のパン
よしもとばななさんの小説(新聞に連載中)と設定がよく似ているのですが、それぞれに”らしく”展開しています。登場人物がみんな好感が持てるのもいい。タイトルにまつわる話がでてこないなぁと思っていると…。
本が好き! 1級
書評数:249 件
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読書は心のオアシスです。
よしもとばななさんの小説(新聞に連載中)と設定がよく似ているのですが、それぞれに”らしく”展開しています。登場人物がみんな好感が持てるのもいい。タイトルにまつわる話がでてこないなぁと思っていると…。
「ないもの、あります」の言葉どおり、クラフトエヴィング商會でしか手に入らないであろうモノを求める人たちの注文書とそれに応える納品書が一つのストーリーを描き出します。
「キャッチャー・イン・ザ・ライ」か「人間失格」か。西さん、すごい小説を書きましたね。「地球の歩き方ニューヨーク編」を頼りに孤独と幻覚に翻弄されながら自意識過剰地獄、父親への葛藤から抜け出せたのか。
江戸で和菓子屋を営む晴太郎と幸次郎の兄弟。切れ者で営業担当の弟と職人気質だけどちょっと頼りない兄という対照的な二人。「甘いもので心を満たす」。江戸時代の人々もそんな幸せを感じていたのですね。
鉄道にまつわる短編集。それぞれに、通勤の車内から見える老夫婦を見守っていた人たちにも感じられた”つながり”。人はひとりで生きているわけではない。
あの「家守奇譚」の綿貫氏が旅に出る。人望どころかあらゆる世界で慕われる愛犬ゴローを探しに、ついでにイワナの夫婦の宿も目指して…。導かれるように鈴鹿の山中を歩く中、出逢う人や人でないものたちが魅力的。
3.11以降始まった言葉遊びに、参加した人たちが”かわるがわる”登場する。どこで入れ替わるのか明確にされないのがネット風なのかな?あの事件の”加藤君”の孤独も語られる。興味深い。
猫好きと犬好きとは分かれるような気がしますが、どっちも好きってありなんですね。猫のクロエと犬のジュディを介して育まれた恋のお話。
ちょっとさえない書店員とガテン系女子のハッピーなクリスマスストーリー。
「ぞなもし」という松山弁の子規には偉大さは感じないけど、実際、この人が日本の文壇に与えた影響は大きいことがわかる。病気がその人生を蝕んだようだけれど、短いからこそ駆け抜けられたのかもしれない。
時代小説を多く書いている作者ですが、このシリーズはめずらしく現代が舞台です。でも神楽坂にすむ元芸者のおばあさんとその孫が主人公で、近所の方たちとの関係などまるで江戸時代の長屋のようです。
川上さんらしい短編集。不思議な世界が当然のように現れる。
自然に対する「畏敬の念」ということはよく言われますが、神去村の人たちのなあなあな態度がまさにその純粋な形なのだと思う。ヨキや清一さんが乗り越えてきた体験もそれゆえの事なのかも。
過去に苦い記憶を持つもの同士の行天と多田。「怖いものは”記憶”」という行天の過去が明かされる。はるちゃんに接するうちに二人が恢復していくのが嬉しい。
惣菜屋の三人の女性たちの年齢をうっかり忘れてしまう。俗にいう”アラカン”世代なのに…。主婦の延長線のようで料理に対してはプロ意識をちゃんと持っているというのがカッコいい!
「働かざる者…」と言われますが、働かないで暮らしていても、人様に迷惑かけていなければ誰にも文句は言われないと思っていたら、作中に市役所からつっつかれるエピソードがあってびっくりした。
文楽を題材にした『仏果を得ず』などもそうですが、その世界の事をよく取材して書かれた小説です。その道一筋に生きてきた人たちのかっこよさは、本物だと思う。
本屋といえば、本を買う目的以外に、ひまつぶしや待ち合わせなどさまざまな人間ドラマがありそうな場所です。書店員の立場からの視点やそこで起こるミステリーなどそれぞれに面白い短編集でした。
弱い人間こそが救われる。拷問をしたもの。流刑から逃げたもの。それぞれに苦しみ、その苦しみから逃れようとする。神はそんな人々を決して見捨てない。キクの純粋な愛の姿がせつな過ぎる。
”よしもとばなな的”な小説から一歩もはみ出していない。(いい意味で?)「イギリスは田舎がいい」と聞きますが、本当に行ってみたくなる。クリームティもおいしい朝食も食べてみたい。