だから、居場所が欲しかった。バンコク、コールセンターで働く日本人 (集英社学芸単行本)





いつの時代も「万人の幸福」は望めない。世間という名の過干渉より孤独死を選ぶ。選択肢が多様化しただけ、親の世代の忍耐だけを強いた時代よりは良くなったと思いたい。死んでしまえばみな同じ、時間は貴重。

本が好き! 1級
書評数:784 件
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活字中毒です。年代に応じて、本屋や図書館で目に付いた本や書評で気になるものを読みます。読んで気に入れば、その作者の本を飽きるまで読みます。ベストセラーより奇妙な味の本が好きです。





いつの時代も「万人の幸福」は望めない。世間という名の過干渉より孤独死を選ぶ。選択肢が多様化しただけ、親の世代の忍耐だけを強いた時代よりは良くなったと思いたい。死んでしまえばみな同じ、時間は貴重。





若かりし頃「歴史上の偉人はほとんど男」故に男は偉いみたいな戯言を聞きながら、バカな男と飲んだ酒を思い出した。パワハラとか時代は少しは改善していると信じたい日本、イスラム世界の悲惨さに悲しみしかない。




何も無かったけれど「明るい未来」努力すれば豊かな明日が来る。そんな時代に生きた世代から見たら、物であふれる現在はあの時夢見た世界の実現と思える。欲望が環境により変化するのも当然、飢えよりは飽食上等。




「わたしたちは祖母の正夢である」D.H.ロレンスを読んで強烈に印象に残りました。女親が子育てという形の洗脳で次の世代に大きな力を行使している。サイコと同じ匂いも感じる、男を憎悪する母は息子を破壊する。
フロストを彷彿させる清濁併せ吞む昔気質の警部像は、大人の読者には大いなる共感と一種の虚しさも感じさせ…



この頃妙に「黄泉がえり」みたいな物語が多い気がします。生きてく事はそんなに単純でもないし、自分も他人も傷つけあい後悔のない人生なんてありえない。自分だけは特別でもないし善悪なんて移ろいやすいもの。




一般的に自国を中心に世界地図は作成される。その影響でヨーロッパと北南米の遠近感を勘違いしていた。良くも悪くもアメリカの裏庭中南米の歴史に対する無知さが身に染みて、何故今ゲバラなのか現状は改善したのか?




「青年は荒野を目指す」みたいな無邪気な冒険心は世代的に共感できる。だからこそ兄弟もクラスの人数も少ない現在の意思の疎通の困難さが理解できない。日常がサバイバルなら外に求めるのは高齢者だけかもしれない。





選択肢の数の増加と幸福感はある程度まで連動していたのに、気がついたら自己責任の恐怖で選べない人間を生み出した。若い頃大病で生死の境が何とも偶然でしかない事に「運命論者」となる。物や機会が溢れても不幸。




「らしく」親子、男女等々の規範みたいな生き方を当然のように教育されてきた。何時からだろう「会社は擬似家族」から自己責任社会とか非正規なんて変わりすぎた現実。新しい価値観が欲しい、新しい神が欲しい。




「無縁社会」や「下流」とかイヤな言葉が心に刺さる時代「無葬社会」直葬とか最近は普通に感じます。人生50年が長寿になり少子化、そして多死社会の何十年後には人口半減の日本。見てみたい気もするが無理で残念。





あらゆる分野に「○○評論家」を名乗る人物が存在する事が不可思議でした。鳥類学者は今まで想像もしないマイナーで「偏愛者」みたいに感じてしまうのは偏見でしょうか?鳥類や昆虫愛が最近熱い、でも面白い。




「Xファイル」が好きでしたが、最近UFOとか宇宙人ネタが何故魅力を失ったのか? 身近に「理解不能な異邦人」が存在している現実、いつからこんな事に誰か教えて欲しい。宇宙人に乗っ取られた説を信じそうになる。




時代の変化が加速化して、この百年は人間の価値観・死生観等にあまりに刺激的過ぎた。第二次大戦後72年戦争を生で知る多くの世代が退場した。○○家も国も一度崩壊して再構築しなければいけないのかもしれない。




物は無いけれど「青年は荒野を目指す」みたいな熱気のある時代に生きてきた。あふれる程の物や知識の氾濫の中に生きる現代の若者の荒野は、どこにあるのか。いつの時代も「見えない答え」を求めるのが若さなのか?




個人的には本を読む事で生きてこられたと思う。視点を変えたら全然別の景色が見えること、真実とかそんなに簡単明瞭じゃないこと。芥川の「人生はマッチ箱、ちっぽけだけれど危険」人間なんて人生なんて一夜の夢。




「ねえ、わたしの話を聞いて....」幼い頃何か新しい体験や珍しい物や人に出会った時、父や母や兄弟姉妹・友達に話したくてたまらなかった。うまく話せなかったり、忙しい相手に「後で」なんて妙に悲しかった。
大人に成ると、子どもの頃の新鮮な驚きみたいなものを忘れてしまう。 語りから騙りを除いたらあまりに味…




現場の自衛隊・警察・消防等の優秀さと信頼感は世界でも誇れるものだと思う。大統領制のトップダウンの国と異なり、ボトムアップの国日本は上層部に不安を感じる。普通の国とか自衛力とかの議論が必要な時期が来た。





英国・米国と露・中国及び独主導のEUの現在と未来が明確に分析されている。久々に納得の国家論であり面白い。「日本死ね」なんて騒いでも保育園は倍増しない、移民の賛否など国家論を提唱できる指導者が欲しい。




「本音と建前」行き過ぎた建前も困るけれど本音が本当に最善とは思えない。性悪説じゃないが人間てそれほど上等じゃなくて、強制されなければ自己愛だけが肥大化する。理想を無視すれば弱肉強食の世界、それで良い?




幽蘭も興味深いけれど、添木兄妹や東一の尻切れの退場が何とも消化不良に思えた。古書・新聞・写真・名刺などから好奇心のみでの探索の醍醐味に「推理小説」の肝を感じた。奇人変人の種は永遠に不滅と思える。