芽むしり仔撃ち





疫病の恐怖に蝕まれた村に、大人たちから見捨てられた少年少女たちが閉じ込められる。非道な仕打ちに歯を食いしばり、自らの信じる者、愛する者と手と手を取り合って生きていく彼らの姿に力強いものを感じる。
戦中、集団疎開の受け入れ先を求めて村々を訪ね歩く感化院の少年たち――さんざたらい回しにされた挙句よう…

本が好き! 1級
書評数:154 件
得票数:858 票
小説を読んだり書いたり。
日本やロシアの純文学を中心として、童話やミステリ小説にも手を出しています。そしてその何倍もの漫画を読んでいます。
本が好きなのです。





疫病の恐怖に蝕まれた村に、大人たちから見捨てられた少年少女たちが閉じ込められる。非道な仕打ちに歯を食いしばり、自らの信じる者、愛する者と手と手を取り合って生きていく彼らの姿に力強いものを感じる。
戦中、集団疎開の受け入れ先を求めて村々を訪ね歩く感化院の少年たち――さんざたらい回しにされた挙句よう…




密室と人の思考――そのふたつのブラックボックスをめぐるミステリを描いた森博嗣デビュー作、そして〈S&Mシリーズ〉の第一弾。クライマックス以降、容赦なく二転三転と振り回してくれる。
十五年ものあいだ外部との物理的な接触を断ち、研究に打ち込む多重人格者の天才プログラマ・真賀田四季博士…




古書に隠された過去、読書感想文に関わる嘘と本当、遺品に託された想い、超希少本が明かす不幸な事実――それらを描いた古書ミステリシリーズの第二弾。静かな物語と淡い人間関係が琴線を揺らす。
古書店「ビブリア古書堂」の店主である篠川栞子は、一冊の本からそこに隠された人々の秘密や想いを読み解い…




古書が語る二つの物語を読み解き、そこに隠された秘密を明らかにする。その秘密は時に悲しく、残酷ですらある。しかし一冊の本に込められた人々の想いは、どこまでも真っすぐで切実だ。
線路沿いにひっそり佇む一軒の古書店「ビブリア古書堂」――本の鑑定をしてもらおうとそこを訪れた「俺」は…




古書に魅入られ、古書に愛され、過去に縛られた二人の青年、その淡い関係が端正な筆致で描きだされている。ため息ものだ。
古書店『無窮堂』の当主である真志喜のもとを、同業者にして幼なじみの瀬名垣が訪ねる。 業界の嫌われ者…



本来あるべき姿を求めて、そして豊かな新世界を求めて、ムーミントロールとムーミンママが険しい旅路をひた進む。〈ムーミンシリーズ〉始まりの物語。
パパとはぐれてしまったムーミントロールとムーミンママは、冬ごもりのできるあたたかな場所を探して深く暗…




「人を殺したい」と思ったことのある〈臨床犯罪学者〉火村英生が、探偵役として、クリスマスの別荘で起きた密室殺人事件に挑む。〈火村シリーズ〉第一作目にあたる作品。
密室ミステリ小説の巨匠が催すクリスマスパーティーに招かれ、軽井沢にある別荘にやって来た作家、有栖川有…




胸はいっぱいになるが腹はグーと鳴る。すぐにでも台所に立ちたくなるのだが、物語から目が離せないで困る。なんとも罪つくりな一冊だ。
江戸の蕎麦屋で小料理を任される澪は、もともと上方の名のある料理屋でその舌を見込まれ奉公人をしていたが…



ムーミントロールたちの見つけた不思議なシルクハットがトラブルを生み出し、ひとつのトラブルがまた新たなトラブルを呼び込む。しかしにぎやかでこそ春は楽しい。
長い冬の眠りから覚め、山の頂上目指して遊びに出かけたムーミントロールたち一行は、その先で黒くてきれい…




巨大彗星の接近により、地球、そしてムーミン谷の住人たちは否応なく絶望のどん底に突き落とされることとなる。しかしそんな中にあっても、ムーミントロールたち一行は自分自身の気持ちに忠実だ。
地球目がけて彗星が落下してくるという話の真偽を確かめるため、ムーミントロールとスニフは天文台目指して…




死に近いところにありながら、あるいはそこにあるからこそ、パチパチと火の粉を散らしながら燃えるように生きる一人の女の子の姿を描いている。あこがれるほどに美しく荒々しい生き方だ。
つぐみは生まれつき体が弱い。命もさほど長くはないだろうと宣告されていて、それゆえ幼いころから周囲の人…



〝この世で一番面白い小説〟とはどのようなものなのか――そのミステリを解き明かすことはまだまだできそうにないけれど、そこに至るための光を一条、目にすることができたような気がする。
売れない兼業ラノベ作家である「僕」に宛てられた一通のファンレター――そこに記されていたメールアドレス…




王室を舞台に巻き起こる復讐劇。シェークスピアはこの物語を通し、宿命と運命、愛と苦悩、信頼と欺瞞、そして狂気と悲しみ――つまりはこの世の姿を描き出している。
デンマーク王子ハムレットは、亡き父である先王の亡霊からその死の真相を知らされる。父は、現王である実の…




煩悩に対する魂や志について物語った泉鏡花の代表作「高野聖」ほか、妖麗で濃密な四編のお話を収録している。
のぼりの急な草の生い茂った道と幅の広いなだらかな道――そのどちらが目的の地に至る道かと、分岐路に立っ…




「鮮やか」という言葉がふと浮かぶ。シンプルにして巧妙なトリックの施されたこのミステリは、『新本格』時代の幕開け役にふさわしいものであったに違いないし、今後も驚きや興奮を与え続けていくのだろうと思う。
殺害された画家のアトリエからある猟奇的な計画を記した手記が発見され、画家の死後一カ月して、それが何者…




バリエーションに富んだミステリ短編集。ドラマティックで、コミカルで、サスペンスフルな物語を堪能することができる。
今はもう誰も住まなくなった二軒の無人の家――それらは地下にある長い廊下(あるいは地下道)によって結ば…




ロシア文学の大成者・プーシキンの代表作たる「スペードの女王」および、五作の短編から成る「ベールキン物語」が収録されている。話のつくりがうまく、古びることのないおもしろみを味わうことができる。
ロシアの第二都市・ペテルブルクは、西洋的な〈人工都市〉としての性質が強い反面、〈現実と幻想が入り混じ…




〈キッチン〉という場所、そして人とのふれあいを通して、死の深い悲しみや生のささやかな喜びといったものの形を浮かび上がらせている。胸にすっと染み入ってくる物語だ。
祖母が死んだ。両親と祖父とを幼い頃に亡くしていた〈私〉にとって、祖母は唯一残っていた肉親だった。 …




秀逸なトリック、切ないドラマにため息が漏れ出る。ミステリが好きな人にとっても、ミステリに馴染みのない人にとっても、読みごたえのある物語だ。
湖に近い別荘で、一人の女性が殺害される。 彼女の夫とその双子の弟に疑いがかけられるものの、二人には…





この物語、悲しいというよりは空しい。しかしその空しさを知ることこそが、他人の悲しみを知るということにもまたつながっていくのではないかというような気がする。
非沼家をめぐる悲劇はなおも続く。 それは事件の背景を知る第五の探偵をしても止めることはできず、それ…