新古事記

第二次世界大戦の最中アメリカ・ニューメキシコ州の人里離れた高地に、科学者が集められ、原子爆弾の研究開発が行われた。足かけ三年、極秘の任務で、同行した妻たちにも研究内容を知らされることはなかった。
何かおかしい、きっと何かある、よくない何かが…… うすうす感じながらも、中流夫人の日常に明け暮れた…

本が好き! 1級
書評数:563 件
得票数:14096 票
読書は、登山のようなものだと思っています。読み終わるまでが上り、考えて感想や書評を書き終えるまでが下り。頂上からどんな景色が見られるか、ワクワクしながら読書という登山を楽しんでいます。

第二次世界大戦の最中アメリカ・ニューメキシコ州の人里離れた高地に、科学者が集められ、原子爆弾の研究開発が行われた。足かけ三年、極秘の任務で、同行した妻たちにも研究内容を知らされることはなかった。
何かおかしい、きっと何かある、よくない何かが…… うすうす感じながらも、中流夫人の日常に明け暮れた…

一粒の芥種、育ちて樹となれ
芹川進という少年の日記形式で書かれた小説です。 少年が書いた日記ですから、文章も少年ぽく作られてい…

東京の省線のある駅で、”私”は、来る日も来る日も、誰か(何か)を待っている。
大戦争が始まったころ、東京の省線のある駅で、待合室のベンチに腰かけて、 ”私”は、来る日も来る日も…

ほらほら、猫が見てるよ。
「猫は見ていた」ではなく、「猫が見ていた」。 「は」と「が」のちがいはなんだろう。 「猫『は』見…

蜜と鷹、兄弟の故郷である谷間の村には、万延元年の一揆の物語が神話のように語り継がれていた。
大江健三郎は、昭和十年(1935年)1月31日、愛媛県喜多郡大瀬村に生まれた。 大瀬村は、山林に囲…

ごんは、さびしがりやの野生のきつねだった。
彼岸花が咲くころになると、思い出す。新見南吉の「ごんぎつね」。 この短い童話のどこの場面に彼岸花が…

「普通の人間の女のように妊娠して中絶するのが私の夢です」(釈花)
作者は、重度障害をもつ40代の女性。 主人公も作者と同じ障害をもつ同年代の女性である。 主人…

赤ん坊は、孤立無援でも、生きようとたたかっていた。
大江健三郎の長男、光さんが脳に重い障害を負って生まれてきたことは、よく知られている。光さんが生まれた…

文鳥は、籠の底で、ころんと冷たくなっていた。
鈴木三重吉にすすめられて、漱石先生は文鳥を飼うことになった。 漱石先生が預けた金で、三重吉は、…

親ガチャという言葉の意味の深刻さを、わたしたちは、もっと考えるべきではないだろうか。
花は、東村山の文化住宅で母親と暮らしていた。 母親はホステスで、金銭にだらしない人だった。 父親…

江戸から東京へ。変貌する都市の姿、時代の荒波にもまれながら懸命に生きる人々。樋口一葉、夏目漱石、泉鏡花など、13人の作家の小説や随筆が収められています。
女は家に縛られ、男に隷属して生きるものとされていた時代。女の運命を描いた、夭折した三人の女性作家の作…

物語のどこかにひっそりと動物がいて、主人公の心を揺り動かしたり、人生をみつめていたりする。
端正な文章でつづられた八つの短編が収められています。 タイトルを並べれば、 「帯同馬」「ビーバ…

人生を書いたので小説を書いたのでないから仕方ない(夏目漱石)
八畳の間に男が二人と女が一人。 男の一人は髭があり、一人は髭がない。 髭がある男は、詩を書く…

地球に生まれながら、地球星人として洗脳されそこなった奈月は、ポハピピンポボピア星人として生きて行こうと考える……
奈月は、自分は魔法少女だと信じている。 小学一年生のときに、ハリネズミのぬいぐるみを手に入れ、ピュ…

漱石先生の趣味は、「明窓浄机」。
1914年に朝日新聞に発表された文章です。漱石先生が亡くなる二年ほど前ですね。 こんなことを新…

赤毛の美少年ジョゼフは、狂信的なプロテスタントで度が過ぎた潔癖症。肉体的性的な接触を忌避していたが……
作者のジュリアン・グリーン(1900ー1998)は、両親がアメリカ人でアメリカ国籍だが、フランスに生…

ちがう、おかん。芸術は、詐欺じゃない。
この本のことは、新聞の記事で知った。本の紹介というより、松田修という現代美術アーチストの紹介記事だっ…

「お代わりをください」。そのひとことで、幼いオリバーは反逆者とみなされた。
オリバーといえば、世界一有名なみなしごだから、「オリバー・ツイスト」は読んだことはなくても、その物語…

1930年代のシカゴ。20歳のビッガーは、白人の女性を殺してしまう。死体を燃やし、バレて、逃げて……差別という虐待を受けて生きる黒人の運命を描いた、黒人作家による黒人文学。
1930年代、大恐慌期のシカゴ。 アフリカ系アメリカ人のビッガー・トマスは、20歳の青年。黒人居住…

動物は植物がなければ生きられない。
自然研究家であり禅僧でもあるジャーナリストの科学エッセイ集。 「第一部」の20編の文章は、生命…