吉村昭の平家物語

正義もなく、英雄もいない。敗れて滅びてゆくものたちの、涙はらはらの物語。
一冊で「平家物語」が読める。しかも、吉村昭の訳で。 平易な文章で書かれている。 祇園精舎の…

本が好き! 1級
書評数:562 件
得票数:14096 票
読書は、登山のようなものだと思っています。読み終わるまでが上り、考えて感想や書評を書き終えるまでが下り。頂上からどんな景色が見られるか、ワクワクしながら読書という登山を楽しんでいます。

正義もなく、英雄もいない。敗れて滅びてゆくものたちの、涙はらはらの物語。
一冊で「平家物語」が読める。しかも、吉村昭の訳で。 平易な文章で書かれている。 祇園精舎の…

読めども読めども、そこにあるのは荒涼とした荒野。
昭和32年に発表された小説(作者33歳)。 主人公は久木久三、19歳の若者。 久三は、満…

戦後二十年。主人公の浜田は45歳、某私立大学職員。彼には徴兵忌避の過去があった。
1967年の作品。 浜田は、東京の町医者の息子として生まれた。 二十歳のときに召集令状が来た…

障害のある二人の子に死なれ、その人がたどりついたのは、信仰と労働と奉仕の人生——
メキシコのグワダラハラから来た手紙を、作家Kが読むところから始まる。 それは、若い映画製作者からの…

作者二十代から六十代まで、人生のそれぞれの時期に書かれた短編集。
前九話のうち印象に残った三話を紹介します。 「石の話」 (1984年) Fは、ある…

もう別れちゃったけれど、彼氏と結婚して女の子が生まれたら、サキという名まえをつけようと思っていた。
表題作の「サキの忘れ物」を含め、九つの短編が収められている。 「サキの忘れ物」は、2021年の…

その壺は、深い空の色をしていて、うっとりするほど美しい。
新聞に大きく広告が出ていたので、迷わずkindle版をダウンロードした。 昭和50年ごろの小説。 …

男はなぜ故郷を捨てたのだろう。まるで磁力で引き付けられるように、なんのあてもないのに東京へ「帰った」のは、なぜ?
主人公の男は、上野公園で野宿生活をしていた。 生まれ育ったのは、福島県相馬郡八沢村。昭和八年の生れ…

「ギヴァー」四部作の二作目。舞台は、むきだしの差別社会。主人公は、裁縫や刺繍に天性の才能がある少女キラ。
「ギヴァー」四部作の二作目。前作 「ギヴァー 記憶を注ぐ者」 との関連性はないようにみえる。最後の最…

近未来を描いた児童文学というが、世界がハイテクになっているわけではなく、究極の管理社会の物語。
原題はThe Giver(1993)。 主人公のジョナスは、12歳の少年。 両親と妹のリリー…

「ドーン」とは、有人火星探査機の名前。dawn(夜明け)の意味もあるのかもしれないが……
2009年に刊行された近未来小説。 物語の背景設定は、2030年ごろの世界。 タイトルの”ドーン…

貴族の世から武士の世へ
嵐がくるわ――2024年の大河ドラマ「光る君へ」は、主人公の不穏なつぶやきで幕を閉じた。主人公は、騎…

2016年から2017年にかけて読売新聞に連載された近未来小説。8年後のいま読むと、なんだか近づいてきているねと思うのだ……
2016年5月から2017年2月にかけて読売新聞夕刊に連載された小説。 2016年といえば、つ…

交互に語られる三人三様の青春物語。
「近未来小説」を検索していたら、この作品がヒットしてきた。 読んでみたら、近未来というよりもイマド…

子どものころは美少年、青年になれば美青年。だまっていても女性が寄ってくる。だれに対しても、ふわっとやさしい……
”なりひら”というのは、伊勢物語の業平です。そう、在原業平。 在原業平は、天長二年(825)、…

第168回(2022年下半期)芥川賞受賞作。「あなた」の二人称で語られます。
「あなた」の二人称で語られます。 「あなた」と呼びかける”わたし”が、姿をあらわすことはりません。…

養護施設で暮らす少年の一人称で語られる物語。
主人公は小学五年の少年、集。 物語は、集の一人称で語られます。関西ことばの独り語り。目の前で起きて…

長崎奉行所通辞と、ポルトガル人の母から生まれた娘の恋。
1971年発表の長編歴史小説。 舞台は長崎。時代は、江戸時代初期の寛永年間。 主人公の上…

第165回(2021年上半期)芥川賞受賞作。ある小さな島に、ひとりの少女が流れ着く。彼岸花の咲き乱れる海辺に。少女は記憶をなくしていた。
少女を助けてくれたのは、島の少女・游娜だった。 游娜は、記憶をなくした少女に宇実と名づける。宇実は…

黒い髪、少し寄り目の黒い瞳――テレーザは、たちまち恋に落ちた。
14歳の夏、わたし(テレーザ)は、15歳の少年ベルンに出会った。 テレーザは、8月を祖母の家で過ご…