幽霊




 
  

一人の男の犯行により12名が殺された。存在を隠してこそ存在できる人間の慟哭は音無き悲鳴となり、読後タイトルは哀しみの残響となり心に深いシミを遺す。苦しくも抱きしめたくなる人の原点を問う傑作。
一人の男の犯行により温泉で12名が殺された。被害者は現職国会議員を含んでいた為政治的な背景が理由にあ…

					本が好き! 1級
					書評数:604 件
					得票数:10215 票
					
ジャンル問わず、読みたい本を
雑多に読んでいます。
共通の、また新しい世界を
一緒に楽しめたら幸せです。
よろしくお願いします。




 
  

一人の男の犯行により12名が殺された。存在を隠してこそ存在できる人間の慟哭は音無き悲鳴となり、読後タイトルは哀しみの残響となり心に深いシミを遺す。苦しくも抱きしめたくなる人の原点を問う傑作。
一人の男の犯行により温泉で12名が殺された。被害者は現職国会議員を含んでいた為政治的な背景が理由にあ…
 
  


 
  

新興宗教の教団内部でネグレクト児として育った少年と、半永久の命という呪われた孤独の運命を背負う少年が出会い「未来」が生まれる。苦しみの果てでそれぞれが導き出す想いが結ぶ光は、震える程切なく眩しかった。
8歳の航とお腹にもうすぐ生まれる命を抱えて、母は父に捨てられた。途方に暮れ、行く当てもなく呆然と子供…




 
  

メキシコ北東部、麻薬二大勢力の戦争を発端に臓器売買の背後にある世界を容赦なく描く。悍ましい世界の理を描きながらも、ラストまで一気に惹き込み牽引していく佐藤さんの文学への熱量と誠実さにも心打たれた。
メキシコ北東部で始まった麻薬二大勢力の戦争。20年来続く「ロス・カサソラス」と新興勢力「ドゴ・カルテ…




 
  

あらゆる場所で交差する人の善意と悪意。闇を生む者、闇を祓う者。善だけの人間は存在しないからこそ、この物語は誰しもの小さな不満に警鐘を鳴らす。闇の甘さに絡めとられる前のめりホラーミステリ。
学校で、会社で、ママ友の…あらゆる場所で交差する人の善意と悪意。どこまでが善でどこからが悪なのか、善…
 
  


 
  

階段の下で夫が死んでいた。殺してもいない旦那の死体発見現場から逃亡するのはなぜなのか。疑って、疑って、転がされて、迷走する。「無実」とは何か。人間は無実のまま生涯を終えるには欲望が勝りすぎる。
ある日、階段の下で夫が死んでいた。人工呼吸を試みるも完全に死んでいる事が分かり「お別れにはいいタイミ…




 
  

戦争が残す哀しみと罪が重くのしかかる。罪を裁く事、受け入れる事、その先を生きる事、間違った時代の選択に身を委ねるしかなかった悲劇を加害者側からの地獄の側面で描く傑作
主人公ミヒャエルが15歳の時突然の体調不良に襲われ、偶然通りがかったハンナに介抱されたことで始まる人…
 
  



 
  

人気女性作家6人によるアンソロジー。牧歌的なあばあちゃんは誰一人存在せず、甘くない現実を生きる姿に自らの祖母の姿を重ね、不安だらけの未来ではあれどしっかり生きようと背中に温かい強さを灯してもらった。
ユン・ソンヒ、ペク・スリン、カン・ファギル、ソン・ボミ、チェ・ウンミ、ソン・ウォンピョン、人気女性作…




 
  

視力を失いゆく男性と、言葉を失った女性が古典ギリシャ語を通し、言語を越えた場所で出会う「生きる」という事の絶望に射す光を描いた物語。温かな静寂は生まれ直すような柔らかさに満ちていた。
「我々の間に剣があったね」。 ボルヘスを象るように少しずつ視力を失いゆく世界に生きる男性と、飽…




 
  

文字は一切なく、無言でありながら無音ではないしずかな夏休みの光景。夏の夜から伸びる幸せの後ろ姿を記憶の宝箱から見つけ出してくれる、大人の心の夏休みを閉じ込めた稀有な傑作。
文字は一切なく、無言でありながら無音ではないしずかな夏休みの光景。淡く柔らかなセピア調で何気ない子供…




 
  

幾度の婚姻歴はあるが奥方たちは一人としてその後の行方が分からない青髭公の館。人を試すことは愚かであり、人の真実は時として不幸を招く。愛の難しさが短い物語の中に濃密に内包され、読む程に心惹かれてやまない
世界絵本原画展グランプリ受賞作。とてもお金持ちであるが不幸なことに青いヒゲを蓄えているが故に、娘たち…




 
  

警察になり月面に住む夢を叶え、月に配属される主人公。人類の憧れだった月での生活は過疎化が進み、至福の静寂の心細さにただ星たちが揺らぎなく光る。人生の折々に読み返したい自己と対話できる快作
月にコロニーを建設し、移住計画が実現した世界。主人公は警察になり月面に住むという子供の頃の夢を叶え、…




 
  

お聖さんが古典の周辺を日常に取り込み、楽しくおしゃべりするようにその入り口へと導いてくれる幸せな古典の手引書。流麗で情緒豊かな言の葉の響きとリズムが深い感慨を呼び、心情を表す美しい表現に感動を覚える
お聖さんが古典の周辺を日常次元の中に取り込み、楽しくおしゃべりするようにその入り口へと導いてくれる幸…




 
  

作家陣は勿論、収められた話のチョイスや並びの全てから編者の愛情が伝わる最高のアンソロジー。引き籠りと言ってもそれぞれに理由も表現もあり、広がりゆく閉じられた色とりどりの小宇宙事情が愉しい。
ひきこもりを肯定するのでも否定するのでもなく、ひきこもることで起きる変化や気付きを描いた文学を集めた…



 
  

歴史の痕が色濃く残り、時間の縫い目が目立たないドイツにある学術都市ゲッティンゲン。沢山のモチーフが折り重なりながらも破綻することなくやがてひとつの消失点へと集約されていく光景が切なく美しい。
ドイツにある学術都市ゲッティンゲン。歴史の痕が色濃く残り、時間の縫い目が目立たない街に、震災で行方不…



 
  

シェイクスピアの悲劇のように舞台は色鮮やかに浮かび上がり、大鳥毛付きの大兜で圧死した王子の赤い鮮血が恐ろしくも物悲しい終焉までを導くレッドカーペットのようにも見えてくる。古色蒼然としたゴシック文学。
遠い昔に宣下されたお告げにより、静かにも禍々しく幕を開けるオトラント城での古色蒼然としたゴシック文学…



 
  

もみあげ白髪の銀行頭取スタイルで目指すは心のガンダーラ!
♪そこに行けば どんな夢もかなうというよ♪ 一大決心で決めたカナダ留学がコロナで延期となった光…




 
  

心と身体がちぐはぐで、孤独に惚け眠りのこない夜。その儚さも、もどかしさも、ひっくるめてこの物語が愛おしい。
寺山没後20年に刊行された宇野亜喜良さんからのレクイエムが込められた美しい本書。いかに互いに惹かれ合…




 
  

愛ゆえに淋しく、飛ばない鳥が ひとり。幸せは儚く、哀しみはやがて美しい。寺山の言葉は時に劇薬であり、いつのときも優しい。
黒蝶のような口髭を生やした探偵の元を訪れた夫人が探しているのは、30年もの間気象台の観測所を無欠勤だ…



 
  

この本もまたカフェの一部であり、魔法は幸せに循環する
カンザス州フラワーズ町のメインストリートにあるヴァンゴッホカフェ。昔劇場だった建物の片隅にあったので…




 
  

大切なメッセージを言葉少なに最大限伝える、発明とも言える仕掛けが素晴らしかった。
動物たちを包み込み、葉を茂らせ、すくすくと健やかに生きていた森。ポップアップされ眼前に広がる木々の世…