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安部公房が最もシュールレアリストっぽくしていた頃の作品集。かつて私は、長編小説にシュールレアリスムは難しいと考えていました。その理由は言語芸術は「意味」からの離陸が困難だからです。そんなバイアスで……
安部公房が最もシュールレアリストっぽくしていた頃の作品集です。 かつて私は、文学作品(特に長編…

本が好き! 1級
書評数:245 件
得票数:4011 票
純文学読み始めはや数十年。病膏肓に入る状態。でも純文学以外が嫌いなわけではありません。
5年ぶりに書評をアップしました。純文学への偏愛は変わりませんが、少し柔軟にアップしていきたいと思います。よろしくお願いします。




安部公房が最もシュールレアリストっぽくしていた頃の作品集。かつて私は、長編小説にシュールレアリスムは難しいと考えていました。その理由は言語芸術は「意味」からの離陸が困難だからです。そんなバイアスで……
安部公房が最もシュールレアリストっぽくしていた頃の作品集です。 かつて私は、文学作品(特に長編…




筆者が「穏やかな丁寧な内容」ばかり書いている方でないことに気付いたのは、志賀直哉について書いている本を読んだ時でした。それは、志賀嫌いで有名な太宰とか安吾とか織田作とかと同様の実に辛辣な批評でした。
かつて私は、中村光夫のことを、穏やかな丁寧な内容を持つ文芸評論家だと思っていました。 確か私が…



プラネタリウムがテーマの小説はどれくらいあるかとネットで調べてみて分かったことは、やはり何作かあるが本書はその中でも早い時期に書かれたものである、つまり、本作はかなり独創性が高いということでした。
SF小説を久し振りに読みました。 今では私はほとんどSF小説は読まないとはいえ、それでも、若い…




本書で笑った大江のエピソード。高校時代大江が『オデュッセイア』を読んでいると「ガーター」という語が出て、英和辞典で調べると「靴下どめ」と書いてあるのですが、大江青年はよく分かりません。そこで……。
本書は、基本的に、文壇ゴシップの積み重ねであります。 この筆者はいろんなテーマの本を書いていら…




さて話を谷崎に戻して、もう少しゴシップめいた挿話ですが、『秘本谷崎潤一郎』なんていう本があるそうです。本のタイトルだけで既にわくわくしますが、中身も期待に反せずいろいろ書いてあるようで、例えば……
少し前に同じ筆者の、大江健三郎と江藤淳を比較しながら論じた本を読んだのですが、それに比べると本書は…




谷崎の小説を読んで、天才的な文章表現を読む快さを一応脇に置くと、後に残るものは、身も蓋もないいい方をすると、「早い話が、日本の男子の恋愛は何処迄もあの卑しい『スケベイ』と云ふ言葉に尽きる。」
以前より何度か本ブログで書きましたが、私は、大学は文学部というところに大昔通っていました。そこで、…




「美は細部に宿る」と言ったのは三島由紀夫だったと思いますが、初めて読んだ時、私は全くその通りだと納得したような気がします。しかしよく考えてみると、具体的にこのフレーズは何を言っているのでしょうか。
例えば「美は細部に宿る」と言ったのは、三島由紀夫ではなかったかと思うのですが、このフレーズを初めて…




日本文学史の教科書に名前のない村井弦斎という作家は、明治期のベストセラー作家であります。報知新聞に連載された、酒の害を解く「教訓小説」である、と。一般大衆の生活意識向上を啓蒙する大衆小説ですね。
日本文学史の教科書(高校で使うレベルの文学史教科書)にはたぶん名前のない村井弦斎という作家は、明治…




……と、まー、そんなことも考えつつ、しかしこのお話は文句なしに徹底的に面白い物でありました。岩波文庫で460ページほどもありとっても長いお話です。長すぎて真ん中で見事に二つに分かれてしまったお話です。
少し前に同作者の『怪談・牡丹燈籠』を読みまして、とっても面白かったもので、同じく「怪談物」の本作を…




自国が他国に占領されたために学ばざるを得ない外国語、そして生命の危機のために亡命した外国で今度は生きていくために学ばざるを得ない外国語。この2つの「ざるを得ない」外国語の習得というものを考えた時……
『悪童日記』という、筆者の世界的ベストセラー小説を図書館で借りて読んで、ついでに本書も読んでみまし…




主人公は10歳くらいの双子の男の子で、彼らは、戦争中のある国で、少し戦火から離れた地方に両親と別れて母方の「おばあちゃん」の家に住んでいます。ところがこのおばあちゃんが、なかなか曲者なんですが……。
読書のお友達に「おもしろいよ」と薦められて読みました。 世界的ベストセラーだそうです。 そ…



その異様に長い手紙の束は「四つ折りに畳まれてあった」とありますが、とても四つ折りに畳める分量ではない。以前よりいろんな研究者が指摘しているところですが、そのとんでもない解釈が、この小説に出てきます。
ネットをだらだらとみていたら面白いと推薦してあったので、図書館で借りてみました。 「創元推理文…




それなりに歴史に名前の残っている人の作品というものは、やはりかなり優れたものであります。だから、内村氏のこの本についても、一種「安心」し「期待」しながら読んでいましたが、それに違わぬいい話でした。
読書について、かつて私は興味のままに、片端から何でも読んでいましたが、ある時ふと何故かこんな風に考…




収録作『日の出前』から始まって『親友交歓』『ヴィヨンの妻』『家庭の幸福』『桜桃』など、主だった作品がみんな、最後の一節を標的にしてきりきりと弓を絞っていくような短編小説ばかりです。
本短編集を読んでいて、なるほどそうだったかなー、と思っていたことがありました。 それは、作品の…




若さの中で若さを書く困難、という言い回しが浮かんできます。もちろんそんな試みの成果が文学史の中に残っていること自体こそが、その作家が極めて優れていることの証左ではありましょうが、やはり私はふと……
以前より私は、太宰治は我がフェイヴァレット作家のひとりだと書いてきました。今でも基本的にそう思って…




少し前からごそごそと書いてきました太宰治についての読書報告ですが、やはり読んでいてかなりうんざりしてきました。そこで、もうやめよう、今後私は太宰の作品は「テキスト論」的読書をしようと思いました。
少し前からごそごそと書いてきました太宰治についての読書報告ですが、やはり読んでいてかなりうんざりし…




……そんな、筆者のせいではない苦さを覚えた読書でした。山崎富栄の生涯については、どっしりと重い内容のものでした。太宰ファンには、必読の本書であります。
……えー、何といいますか、割と苦い話を読んでしまいました。 苦い話と思った理由は三つあります。…



先日友達と町の本屋さんの話をしていたら、リアルタイムの出版業界ならびに町の本屋さんの経営状況は、この本にあるような「牧歌的」な時代は前世紀末にもう完全についえたということでした。 言われてみれば…
どうも、本が売れないらしいですね。 いえ、それは本ばかりではなく、なんか世の中のいろんなものが…



5年ほど前に書籍購入派から図書館派に宗旨代えしました。図書館派になって、この度のこんな本を読むとつくづく、図書館派じゃなかったら絶対に読まなかった本だろーなーと思います。
私はかつて、読む本は基本的に購入派でありました。 つまり、図書館で借りない、ということですね。…




なるほど高野悦子は時代の潮流に過剰適応を強いられたのか、ではそうならずに済んだ他の同時代人は何をどう表現したのかと繋いでいった結果浮かんだのが村上春樹、そして冒頭の短編集だったという経緯であります。
今回はちょっと、最初になぜこの本を選んだかを書いてみます。 そもそもは評論家の関川夏央が、私の…