この書は、2005年に亡くなったドラッカーの遺作となった書です。
彼は生前、現代社会最高の哲人、マネジメントの父と呼ばれ、マネジメント学の多くのほとんど一人で考えを導き出した巨人である。
著者(ドラッカー+マチェロ教授)の2人が、「本書の使い方」で本書を「仕事で成果をあげる上での必携の書」といっているように、何かマネジメントで困った時、迷った時などこの書を開きパラパラと関連頁を繰れば、平易明瞭で簡潔ないいアドバイスが必ず見つかる本、言うならばノウハウ本である。
と言っても低俗なノウハウ本ではない。帯紙に「仕事の本質を洞察し、成果をあげるための姿勢と行動を示す不朽の箴言集」と書いてあるように、ここまで鋭く優れたアドバイスが連なれば、まさに箴言集である。
繰り返すが本書は、ドラッカーと彼の友人でドラッカーの考えをほぼ完全に理解し大学でも講義をしているマチェロ教授の共著である。
ドラッカーの過去の著作『現代の経営』『経営者の条件』『断絶の時代』『マネジメント』『マネジメント・フロンティア』『明日を支配するもの』『プロフェッショナルの条件』などのドラッカーの数々の著作から引用で成り立っている。
以前この「本が好き!」で採り上げた『ポスト資本主義社会』からも引用されている。
『ポスト資本…』の紹介記事でも述べたが、ドラッカーの文章は非常に平易明瞭である。「現代社会最高の哲人」と紹介すると、難解な思想が出て来そうで、読む前から腰が引けてしまうかもしれないが全然そんなことは無い。分かり易いだけに経営学、マネジメントの為の座右の書、ノウハウ本としては最適ではなかろうか。
本書冒頭の「はじめに」で、ドラッカーは本書のキーワードは、「行動と成果」と述べ、続けてこうも述べている。
「組織に働く者のうち、知識に優れた者は少なくない。だが、彼らが報酬を得るのは知識によってではない。なされるべきことをなすことによってである。そのなされるべきことが何であり、それをいかにしてなすかが本書のテーマである」と。
また「本書の使い方」では、本書は、仕事で成果をあげる5つの習慣を身につけるための訓練の書であると述べている。
5つの習慣とは
(1) 時間をマネジメントする。
(2) 貢献に焦点を合わせる。
(3) 強みを生かす。
(4) 重要なことに集中する。
(5) 効果的な意思決定を行う
ことだという。
この5つの習慣の箇条書きの後に、本書全体の要約とも言うべき文章が載っている。
本書はドラッカーのマネジメントの考えを彼の諸著作から抜粋し、座右の書、ノウハウ本として使いやすいようにした本であるから、つまりそれをさらに要約したような文章だ。少し長いが下に転記する。
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時間をマネジメントすることと重要なことに集中することは、成果をあげるための二本の柱である。時間以外の資源は何とかなる。だが時間は最も稀少な資源である。
したがって時間をマネジメントすることは、なされるべきことをなすための基礎である。成果をあげるためには、まず、自分の時間がどこに消えているかを知らなければならない。自分自身と他の人の時間を無断にしているものを取り除かなければならない。
時間を無駄にしているものを取り除いたならば、新たに生じた時間を使って重要なことに集中しなければならない。成果をあげるための他のスキルはすべて、この時間をマネジメントするというスキルと重要なことに集中するというスキルが前提になる。
なされるべきことをなすためには、貢献に焦点を合わせなければならない。ここでは、自らに期待される貢献 は何か、そのためにはいかなる助言が必要かを考えねばならない。しかる後に、自らの強み、部下の強み、上司の強みを総動員しなければならない。
部下の評価と人事は、彼らにできること、すなわち彼らの強みを中心に行う必要がある。弱みの中で重視することは1つしかない。真摯さの欠如、特にリーダーにおける真摯さの欠如は、悪しき見本となり諸悪の根源となる。
成果をあげるためのもう1つのスキルが意思決定である。成果をあげる者は、効果的な意思決定を通じて成果をあげる。意思決定にはプロセス、すなわち手順がある。成果をあげる意思決定の多くは意見の対立の中からもたらされる。勿論意思決定の結果は、仕事として実行に移さなければならない。
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訳者あとがきにも書かれているが、本書は、本来一気に読破すべきものではなかろう。座右においてじっくり 何度も何度も繰り返して読み、仕事で成果をあげる5つの習慣を身に付けるまで読むべき書だと思う。
私の座右の書に付け加えようと思っている1冊です。
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